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説話145 元魔将軍は子供と遊ぶ

「そう。よくやったほうじゃないかな」


「ふっ。剣を持つ手が震えたし、事の後は嘔吐したがな」


 ボクはガルスからアールバッツが自分の意志で難民を救い出した経緯を聞いていた。


 迷宮都市ラーゼンバルクで最初に出会った子供のアールバッツが成長したことにボクは喜びを感じてるね。


 技術をボクたち先生はいくらでも教えられる。でも自ら一歩前へ進まないといつまでも勇者たちは候補のままさ。


 それをアールバッツは示してくれたんだ。



 ダンジョンの遠征は中止したけど、そんなのはいつでもできる。


 子供たちはイザベラとマーガレットとともに、前に作っておいた迎賓館という外来する人のための施設へ、難民の怪我の手当てや食事の手伝いに行ってるよ。


 難民たちが落ち着いたら、ボクはイザベラと一緒に難民たちの今後の話をするつもり。




 ボクが考えた方針では難民たちは自力で集落なり、村なり、自分たちで作ってもらう。もちろん必要なものがあれば提供はするが、勇者候補たちみたいに全部を用意してあげることはしない。



 その過程を勇者候補たちに手伝いに行かせて、人々の暮らしぶりを自分で見てもらう。


 まだまだ学問などの知識を教え、戦う能力を鍛えてやらないといけないが、少しずつでいいからボクたちの手から離れ、人と群れることに慣れてもらいたいさ。



 勇者候補たちは自分の目と耳を通して、どんな人を助け、どういうことを導いてやれるということを自分で考えていかないといけないね。


 それはこれからの授業内容にも反映してくるし、本当に必要とされていることを子供たちに学んでほしいんだ。




「いろいろとありがとう、ガルス」


「礼に及ばぬ。先生であれば当たり前だ」


 ガルスはボクに返事してから寮を出て、一人でダンジョンのほうへ行った。


 なんでもルシェファーレに魔剣ルシェファールを研いでもらいたいらしいが、あんな刃こぼれもしていない魔剣のどこをどう研げばいいのだろうね。


 まあ、達人のことはよくわかんないから口出しはしないけどね。




「えんちょー、あそんで?」

「あそぶなの」

「ととさん、遊びましょう」

「ナルと遊ぶの」

「えんちょ、あそんでくれ」


 難民の世話でほとんどの子供が手伝いに行ったけど、年少組は居留守なんだね。


 まあ、この子たちが行っても邪魔とは思わないけど、難民たちのほうが気遣いそうなので、寮の中に残ってもらったんだ。


 そうだね。時間はあるし、久しぶりに構ってあげるか。



「なにして遊ぶの?」


「ケダマン!」


 なにその遊び? ケダマンってなにかな。どうやって遊びのかな?



「ごめんね? ケダマンってどうやって遊ぶの? ボクに教えてくれないかな」


『ほっほ。わしと遊びたいのじゃな?』


 アダムスが現れると子供たちが一斉に彼の許へ集まっていくんだ。



「ケダマンだあ」

「けだまんなの」


 ミールがアダムスを抱えると天井へ軽く投げ飛ばした。


 落ちてくるアダムスをエリアスが下から突き飛ばすと、アダムスはそのまま又宙へ浮く。落下してくるところをクームがアダムスの下で待ち構えている。


 その間にナルはアダムスの毛を捕まえて、浮いては落ちるの動作に笑い声をあげていた。


 なるほど、アダムスを宙に浮かす遊びをケダマンって言うんだね。



「ボスさんギャ、ケダマンいったギャ!」


 レイミーの声に反応したボクは飛んでくるアダムスを軽く子供たちのほうへ突き返す。



『ほっほ。そうじゃそうじゃ、軽くな』


「楽しそうだね、アダムス」


 微笑ましい光景にボクは思わず顔に笑みを浮かべる。


 いつかは大人になるこの子たちも今はこうして楽しんでくれればボクも嬉しいのさ。



「あっ、ケダマンですわ。ワタクシもご一緒しますわよ」


『なぬ!』


 ――しまった! イザベラがいることを忘れたよ。



「えいっ」


 ――ドカンッ


『グハッ!』


 一早く避難した賢いナルがここから飛び去った。


 ボクは天井から力なく落下したアダムスに、極大回復の魔法の最強バージョンをかけに行かなくちゃ。



お疲れさまでした。

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