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説話15 元魔将軍は人と会う

 山あり、森あり、川あり、テクテク歩く。フフフ~ン。


 うん、一日で飽きちゃったね。


 人間が住むところは魔王領よりはずっと小さいね。かと言って魔王領に比べて感動できる風景は見当たらないんだ。魔王軍で最初の時は魔王様に従って色々と回ったからね。それはそれはとてもいい思い出でありました、とさ。



 征服するとか書いて観光すると読む。



 現魔王領各地の見物がてらに、強い奴らとも戦ってきたな。今は魔王軍序列五位のダークエンシェントドラゴンのヌエベルは強かった。一年をかけてあいつと決闘したもんな。まあ、もちろんボクの勝ちだけどね。そういえば魔王城を出る時にあいつは屋上から目をウルウルさせていたな、可愛いやつめ。



 なんだかボク、気が抜けてきちゃったよ。このあとはどうしようか。することがないね。


 そうだ! 人間のいる場所へ行って、人と交流してこよっと。




「いらっしゃい……あら、珍しいこともあるのね。可愛らしいお客様だわ」


 魔王領に近いカラオス王国にある辺境の村パペッポ。人口はせいぜい千人程度だが、領主であるウッガンズ子爵は穏やかな施政を敷いているため、村は至って平穏である。魔王領に近いこともあってか、ここを訪れる旅人は少ない。



「やあ、こんにちは」


「まあ、礼儀正しい子だわ。はい、こんにちは」


 宿の門をくぐったのはとても可愛らしくてすごく綺麗な顔した少年。宿屋の女将さんはその少年の美しさと姿勢に称賛する声をあげた。



 宿屋兼酒場兼食堂であるナタリーの宿はいつでもお客がまばら。普段は冒険者ギルドパペッポ村出張所の所長を務める旦那さんであるウェリアルの事務仕事を手伝う傍ら、宿屋の横にある畑仕事もしている。


 冒険者ギルドの仕事と言っても、ここを襲ってくるのは野良魔物程度。魔王軍は規律がとても厳しいのは、彼女たちパペッポ村のみんながよく知っていることだ。



 大昔にパペッポ村がまだ住民数十人の小さな村であった頃、一度だけ魔王軍の部隊に襲われたことがあった。村人は大半が死に、領主である当時のウッガンズ男爵は騎士団を率いて、決死の思いで魔王軍の再襲撃を備えたが、現れたのは数百頭のドラゴンを従えた魔王軍の大男だった。



 全滅を覚悟したウッガンズ男爵に、魔王軍の大男はいきなり部下の不始末を土下座で謝り出して、一頭のドラゴンが口に咥えていたものを落とすと、それは村を襲った部隊全員の斬り落とされた首であった。


 お詫びするということで魔王軍の大男はウッガンズ男爵領に滞在し、水路を魔法で引いたり、畑の面積を広げたりして現在のウッガンズ子爵領の礎を作り上げた。ウッガンズ男爵は男の滞在を引き留めてたが、魔王軍の大男は魔王軍の仕事があるといって、詫び料に莫大な金銀財宝を残してからウッガンズ男爵領を立ち去った。



 そんなこともあって、ウッガンズ子爵領では魔王軍に対して友好的で、カラオス王国が掲げる魔王討伐の国是には非協力的である。稀に勇者たちがウッガンズ子爵領を訪れることがあっても、代々のウッガンズ子爵は一度たりとも勇者たちに何らかの援助をしたことがない。


 そのためか、カラオス王国は幾度もウッガンズ子爵をすり替えようとしたが、住民からの反対が猛烈で独立も辞さない態度を示した。魔王領に近いため、そもそもここの領主になりたいという貴族が現れたことがない。カラオス王国は仕方なくウッガンズ子爵の存続を認めるというのが現状だ。



 そんな領土の辺鄙な村へ元魔王軍の大幹部であった魔将軍が遊びにやってきた。



お疲れさまでした。

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