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閑話6 魔王軍最高幹部は思い悩む

 ワテはネクロマンサーのブッチャクだ。


 今は魔王軍序列一位の最高幹部である。どうだ! ワテを恐れろ! ワテの命令で魔王軍が動くんだぞ。


 向かうところ敵無しの魔王軍の最高幹部なんだぞ! ワッハッハッハ



 なぜワテが魔王軍序列一位の最高幹部になれたかというと、ある日ワテたち魔王軍に不動の魔神と恐れられてる魔王将のアガルシアス様が魔剣ルシェファールを腰にぶら下げて、魔王様の執務室から出てきたところにワテと目が合ってしまった。


 あの人、しゃべらないけどメッチャ怖いんよ。いやマジで、いやいやマジで。



 ガクブルになって動けなくなったワテにアガルシアス様はジロッと冷めた目でワテを睨んできた。


 ――なにこれこわっ! 怖いよタスケテ……


 ワテ、なんもしてへんやん? 魔王領の奥地から果物の運送任務を果たしただけですやん? 睨まんといてな、おしっこちびりそうですやん……



「汝、名を言え」


「……魔王軍序列十五万五千八百六十九位の骸骨使い、ブッチャクでございます……」


「うむ。今より汝が魔王軍序列一位、魔王様によく仕えろ」


「はれれ?」


 ワテにそう告げてからアガルシアス様は颯爽とこの場を去っていた。


 なにいうてんねんあの人は? ワテ、序列一位? なんのこと?



「そうかえ? そなたが今日からの最高幹部かえ? たのむぞえ、ブッチャイク」


 後ろでものすごい魔力を乗せた声がしてきたので、ビクビクしながら振り向くと魔王様でした。はい。


 ワテな、式典とかでメッチャ後ろのほうから、ちょこんと黒い粒のような魔王様しか見たことないんですけど、この人は間近で見るとメチャクチャのハチャメチャ美人だよなあ。美し過ぎてワテなんか言葉が変なんだけどさあ。


 でも魔王様は魔力がだだ漏れでワテいまにも死にそうですけどどうしよう? ワテ、この先このお方に仕えていけるやろか?



「よろしゅう頼みますえ、ブッチャイク」


「へ、へへえー!」


 そう言って魔王様は立ち去りました。


 はあー。生きた心地しなかったよ。ってか、マジで魔圧で死ぬかと思いました。



 ――って・い・う・か、ブッチャイクって言わんといてくれます魔王様。


 そりゃね、自分でもわかっとるよ。皺々で枯々の顔は確かに不細工だよ。目だけはさあ、金ピカに光るけど不気味だよな? 夜中に便所行くときに自分の顔に驚いて腰抜かしたこともあるよそりゃ。


 それでもね、ゴキちゃんや鼠さんを見逃がす優しさを持つワテの心がね、単板ガラスなみに壊れやすいんだよ魔王様。



 はあー、ブッチャイクはないよなブッチャイクは。


 魔王軍序列一位である不細工のブッチャイクって通り名が付いたらどうしようか。しまらな過ぎて泣くよワテ……



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 そう言えばさあ、アガルシアス様ってずっと大広間で座ってた記憶があるんやけど、なんでワテはなんでこんな忙しいやろか?



「ブッチャイク様。トレーニングルームのトイレが壊れたなんだけど」


「待ちなはれ。屋根を直したらすぐ行くから。雨水が漏れるんだよこれが」


「はーい」


 魔王軍序列九万九千九百十九位のセイレーン。


 通り名は狂わせの魔音ミリアちゃんがバルコニーから屋根にいるワテにトイレ修理を言いつけてから屋内に入っていく。


 ――はれれ? おっかしいなあ? 魔王軍序列一位の最高幹部の仕事って、こんなもんやったやろか? はれれ?


 でもこの前に扉の取り付けを直したらさあ、魔王様が褒めてくれたのよなあ……仕事、すっか。




『中々いいぞ……あ、そこ。そこがええわ』


「そうでっか。凝りすぎやあんた。

 運動せなアカンで」


『明日からそうするぅ。さすがはわが魔王軍の最高幹部。

 いい仕事するぅ……そこ、あーそこそこ。そこ気持ちいいのぅ……』



 魔王軍序列五位のダークエンシェントドラゴンのヌエベルさんの腰を揉んでる。


 ドラゴンはねえ、身体が大きいから大変なんだよな。エッショイエッショイ。次は肩やねっと。


 こらあアカンわ、凝りすぎや。



 ――はれれ? なんで魔王軍序列一位の最高幹部であるワテが魔王軍序列五位のヌエベルさんのマッサージしてんの? それっておかしくね? はれれ?


 でもなあ、このドラゴンさん強いだよなあ。鼻息だけでワテが粉々に吹き飛ばされそうだよ。


 気持ちいいって言ってくれたしなあ。続き、すっか……



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ブッチャイク様こんにちはああっ」


「はいご機嫌さんこんにちは」



 街を行く子供から挨拶を受けた。


 もうね、ブッチャイクでもなんでもいいよ。みんながね、笑って生き生きしていればいいのよ。


 今は魔王城の城下町に来てる。


 ここはかの高名な元魔将軍アーウェ・スルト様が直々手掛けられたところなんや。ワテ、あの方好きなんだよなあ。ネクロマンサーは暗黒魔法しか使えないけど、あのお方はこんなワテに獄炎魔法を直々に教えてくれたんやぞ。



 なんであのようないいお方を魔王様を追放なんかしたんやろか? それだけは未だに理解でけんよ。ワテが当時の最高幹部なら絶対にそんなことは許さへんっ!


 いやね、別にアガルシアス様を批判してるわけじゃあらへんよ? あの人怖いですもん。悪口なんか怖あてよう言わへん。




 さあ、ワテは現魔王軍序列一位の最高幹部。通り名は骸骨使いの不細工ブッチャイクもといブッチャクだ!


 ここにいま、我が力を示そうじゃないか!



「出でよ、我がしもべたち! 我に従えて、我とともに征かんぞ!」


 ワテの命で現れたのは数百体のスケルトン。ワテに直属する精鋭の不死軍だ。


 ファーハッハッハッハ!



(ほうき)組のみなさーん、道具はちゃんと持ったあ?」


「ガタガタガタ……」


 うん、箒を掲げてみせるスケルトンたち。しっかり持ってるね。



「ちり取り組のみなさーん、道具はちゃんと持ったあ?」


「ガタガタガタ……」


 うん、ちり取りを掲げてみせるスケルトンたち。しっかり持ってるね。



「じゃあ、みなさーん、今日も街の中を綺麗にするよお」


「ガタガタガタ……」


 これからもワテは魔王様のため、魔王領に住むみんなのため、魔王軍(がいこつ)を従えて、今日も魔王領の平和(せいけつ)を守ってみせる!



お疲れさまでした。

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