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説話139 元魔将軍は行商人と雑談する

 前までは薬草の収穫と苗植えを同時に行っていたけど、生産量を調整するようにマーガレットから言われているので、今日の午後はなにも植えていない畑で雑草抜きをする。



 こうなると雑草も可愛いと思えるのよね。


 ――さて、抜きますか。



 あー、ヌキヌキヌキヌキヌキ――


 それ、ヌキヌキヌキヌキヌキ――



 うん、抜き終わりました。


 やっぱり単純作業は気持ちがいいね。畑も綺麗になったことだし、会社へ行って釜磨きでもして来ようかな。



 ――うん? アールバッツがフォックス族の子供5人を連れてきたけど、どうしたのかな。



「スルト兄さん、今ちょっといいですか?」


「いいよ、なにかな?」


 アールバッツはフォックス族の子供たちに声をかける。



「ほら、こういうことはちゃんと自分から言いなさい」


 フォックス族の子供たちは少しだけ迷った表情をみせたが、ボクのほうに向いてから勇気を振り絞ったように元気な声で決意を口にする。



「え、園長、ぼ、僕たちも勇者になりたいです。

 勇者になって、獣人がイジメられない世の中にしたいです」


 真剣な顔で自分の夢を語ってくれた子供たちにボクは褒めてあげたいと思ったんだ。


 道筋を示すことも、鍛えてあげることもボクはしてあげられるけど、前へ進む勇気だけは自分から出さないとボクはなにも出来ないからね。



「いいよ、今日からきみたちも勇者候補さ。

 メリル先生にどんな候補がいいのかを見てもらいなさい」


「はいっ!」


 フォックス族の子供たちはみんなで抱き合ってとても嬉しそうにはしゃいでる。


 アールバッツと一緒に軽やかな足取りで寮のほうへ帰っていく子供たち、ボクは彼らを見送りながら考えたのさ。フォックス族の子供たちは勇教園を通っているうちに周りに触発されて、自主性と自己意識が出て来たのだろうね。



 これで勇者候補は115人になったね。


 まだ時間があるから不足する勇者候補の人数は天に任せて、ボクは今に自分ができることを精いっぱいする。


 ――そう、楽しい釜磨きさ。


 そう言えばエリックが帰って来たとユナが寮に遊びに来たとき挨拶してたね。釜を磨きあげたらエリックと会って話をしようかな。




「近々カラオス王国とワルシアス帝国はまた大きな戦が起こりそうですよ。まったくほかにすることがないのですかね。

 幸い、ここがあいつらの領地じゃないですし、暗黒の森林が近いこともあって、影響されることはないですけどね」


「そう」


「私どもが販売しているスルト様が作りましたポーションも、近頃は貴族どもに目を付けられそうになったので、知り合いの闇商人に流してもらいました。

 間一髪で危機から逃れたことができたから助かりましたよ。

 貴族どもはものを買っても金を払わないときがあるから全くとんでもないやつらです」


「ふーん」


 ボクは時々こうして、エリックがこっちにいるときは、昼の空いた時間に彼とお茶を飲みながら人間の国々のことを教えてもらってるんだ。


 マーガレットにも街へ行ってもらい、聞き込みとかで情報を入手してもらってるが、相変わらずカラオス王国とワルシアス帝国は仲良く戦争ごっごを続けてるみたい。


 本当に国を司る人間って、意味のないことで争うことが好きなんだよね。



「なんでもカラオス王国がこの前に奪われた小さな砦を取り戻したいらしいです。

 そんな下らないことで従軍させられる民のことも考えてみろってもんですよ」


「そだね、それは本当にくだらないね」


「ですからね、しばらくは私どもは行商を控えたいと考えているんです。

 スルト様のお蔭様でこの界隈では私どもがポーション売りで少しは名が知られるようになりましたが、戦争が始まるとポーションは国が強制的に買い占めしちゃうんです。

 しかも利益なんて出せませんから売らない方がマシってもんです」


「そう。それならベアトリスとゆっくりできるね」


「はい、私どももそのつもりで」


 ボクはこうしてエリックとお茶で雑談しているが、ベアトリスも寮のほうへ遊びに行き、メリルたちとお茶会でも楽しんでるのだろう。


 女性って、ちょっとした話題でも盛り上がるからね。



「そろそろ行商人じゃなくて、このような落ち着いた場所で商会を構えたいと思うのですが、申し訳ないとは存じますけど、ここだとお客様がいないですからね」


「まあ、子供がお小遣いで買う程度だからね」


「ははは。やはり私どもは商人ですから、仕入れした物を売ったり、新しい商品を買付けしたりして、商売することにやり甲斐を感じますからね」


「そうだね」


 昼すぎから始まったお茶を飲みながらの何気ないお話は夕食前まで続いたのさ。



お疲れさまでした。

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