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説話134 政治家候補は決意する

 勇者候補たちに魔法とかの授業で知識を教えながら思ったことがあったんだ。


 魔王軍は魔王様が一番えらい。ボクたち魔将三人衆は魔王様の考えに沿って、魔王領が良くなるために色々と政策ってやつを考え、立案し、それを魔王領の隅々まで行き届くように、魔王軍という組織を使って施政してきたんだ。


 でもそれは魔王様が居てのお話、魔王様がそう望んだからボクたちがそうしてきただけ。



 アールバッツに勇者としての素質が十分であることはボクも知ってる。


 だが、ほかの種族への差別が深く根付いた現況では勇者として魔王を倒しただけで政治ってやつはやっていけない。全ての種族が等しく生きる世界にするため、魔王様なんて関係ないんだ。


 誰かが先陣に立って、その平等という号令をかけていき、その後をアールバッツたちが受け継ぐという形であれば、成功する確率が高くなるとボクは考える。


 その先陣というのがそう、イザベラなんだ。



 イザベラの政治家としての素質は今のところ不明なんだけど、でも彼女には貴族で育ったという背景があって、現状の政治体制をよく知ってる。


 また、国からつまらない罪で追放されて、親兄弟を処罰されたことで彼女を悲劇のヒロインってやつに仕上げることもできるんだ。



 暮らしというのは急激な変化を求めてはいけない。


 例えば民たちに解放してあげたのでこれからはご自由にどうぞっていきなり言われても、たぶん彼らはどうしたらいいかわからないはず。


 実際、最初のうちに魔王領で傘下の加わった魔族は戸惑いのはてに、反乱を起こすという暴挙に出た魔族もたくさんいたんだ。



 そのために緩やかな変化が大事、その根幹の一つが教育なんだ。だからボクはみんなのために勇者パーティ教育学園を作ってみせた。


 知ることによってなにかを成す、成してからその意味を知る。


 実績を積み重ねることで、人々が本当に必要とする(まつりごと)が徐々に熟成されていくのじゃないかとボクは考えるんだ。



 勇者という輝かしい経歴を持つ子供たちを従え、アダムスを中心にこれから再興されるであろうの宗教からも支持され、種族が等しく生きるスローガンを打ち立てるイザベラの許に貧困と飢餓に喘ぐ民が集結し、彼らにイザベラが明日を生きる夢を与える。



 これがボクの考えるイザベラの使命さ。



 本当に全ての種族が等しく生きるになるまでは長くて険しい道のりが待ってると思う。


 イザベラやアールバッツたちの世代では開花しないかもしれない。だけど、森を作り出すのに木の種から植え付けていかないとなにも始まらないんだ。


 イザベラやアールバッツたちはまさにその種に当たるさ。



 大丈夫、ボクは悠長な時を生きる。


 たとえイザベラやアールバッツたちが居なくなっても、ボクだけはずっと見守ってあげる。


 みんなが植え付けたその種がどこまで広がる森林になれるかということを。


 だからね、魔王様を倒そう。


 そうでないと人々はいつまでも美しい魔王領へ行くことはできないのだから。




「スルトちゃん、ワタクシはそのセイジカになれますかしら?」


 イザベラが真っ直ぐにボクのほうへ視線を向けてきた。


 やや強めの風が吹く中、彼女の髪は風になびかせて、ボクは初めて彼女が美しい女性だと気付いた。


 ――心が美しく、人を惹きつけるんだ。



「それはボクもわからないんだ。でも勇者と同じさ、なろうとしないとなれもしないんだ」


 イザベラがボクに優しそうに微笑んでくれてる。



「そう。じゃあ、ワタクシはなりますとも。

 ここにイザベラ・フォン・エンジンストップは誓いますわ。

 ワタクシは生涯をかけて、そのセイジカ兼勇者になりましょう。オホホホ」


「いやいや、名前がイザベラ以外は全部変わってるし、とにかく勇者から離れてよ」


「スルトちゃんはいつも細かいですわね、それではいつまでも子供のなりのままですわよ。

 オホホホ」


「なりは関係ないと思うけどね」


 はああ……


 まあ、イザベラは相変わらずイザベラってことだよ。



お疲れさまでした。

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