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説話133 元魔将軍は元悪役令嬢と話し合う

 泣き止んだイザベラは凛とした表情で焼け落ちた家に目を向ける。


 彼女の眼にはどんな風景が映ってるかは彼女以外にだれも知ることはできないさ。


 ここがどんな場所だったのか、ここにだれが住んでいたのか、今となっては語ってくれる人がいそうにないから。



「ワタクシは貴族令嬢として育ててきたのですわ」


「そう」


「お父様とお母様からは、お国の王子様のお妃になることをずーっと聞かされて育っててきましたの。

 だからなのですね、民のことなんて一度も考えたこともありませんでしたの」


「……」


 イザベラはボクに語ってくれてるようで、自分と話していると思うから、ボクは黙って聞いてあげることにした。



「ここはね、小さな時に一度だけきたことがあるの。

 お父様とお母様が王都に行かれたときに、侍女さんに連れて来られたがありましたわ。侍女さんの夫がここの村長をつとめてましたの。

 お優しい人がいっぱいいらして、村の子供たちもワタクシと仲良く遊んでくれましたのよ。

 伯爵家の以外の人と接したのはここが初めてでしたの」


「……」


「ワタクシはお父様とお母様に王都へ連れて行かれてからは貴族令嬢としての日々を送り、王子様のお妃になることが唯一の人生だと教えられましたの。

 だからね、ほかの貴族令嬢にどんな酷い仕打ちをさし向けたとしても、王子様のお妃になるためなら、それが当たり前だと信じてましたのよ」


「……」


「メリカルス伯爵家がお取り潰しになって、ワタクシ一家は罪人として追手に追われていましたわ。

 お父様とお母様は追手によって殺されて、どうでもいいですけど兄上様も亡くなりましたわ。

 ワタクシが汚らわしい男たちの手にかかりそうになった時、ワタクシはスルトちゃんにワタクシを救助させるという、二度とない誉れを与えましたわ」


「……」


 うーん……なーんかちょっと違うけど、ここでイザベラの話の腰を折るのも悪いから黙っていよう。



「その後はスルトちゃんを養いながら旅を続けて来ましたわね。

 色んな街で貧しさに喘ぐ孤児や老人を目の当たりにして、ワタクシは今までなにをしてきましたと考えさせられましたの。

 第5王子様や兄上様のように貴族たちだけが太って、肥えて、醜いデブになっていきますの。その一方で民たちは食べ物もなく、奪われるだけの日々を過ごしているのですよ?

 こんなことって、ずっと続いていてもよろしいのでしょうか!」


「……」


 イザベラはイザベラなりに色々と考えているんだね。


 疑問に思うことはいいことだよ、イザベラ。変えようとする気持ちはそこから始まるのだからね。それとお、イザベラを養っているのはボクだからね? それは譲らない。



「スルトちゃんがワタクシからの日々の教えをよく理解して、勇者の話をワタクシの代わりに子供たちへ語りました時にワタクシも心の奥底が震えましたわ!

 そうですわ! 世界を変えていきましょう、ワタクシも道を切り開く勇者になりましょう。

 たとえ苦しさに塗れても、スルトちゃんだけはしっかりと養い、どんな困難があろうともワタクシの決意は変わりません」


「うん、もう全然違うね。認識からしておかしいし、話がもう大きく逸れているよ。

 イザベラは勇者にならないからね」


 もう、我慢しなくてもいいよね? 勘違いだらけでここで是正したほうがイザベラのためだもんね。



「え? それじゃ、聖女になれってことですの?」


「それも違うね」


「うーん……賢者ならいかがでしょうかしら、スルトちゃん」


「ねえ、もういい加減に勇者パーティから離れようよ」


「あら、そうですの? でも勇者パーティから離れたらもう戦士しか――」


「それも勇者パーティだからね? 全然離れてないからね?

 イザベラには別の使命があるんだ」


「あら、そうですの? ワタクシにも使命がありますのね、毛玉勝負の選手とか?」


「それだとアダムスが死んじゃうよ? 即死だよ? 違うからね?

 イザベラには政治家ってやつになってほしいんだ」


「せいじか?」


 そう、ボクがイザベラのことを考えて、彼女だけが歩んでいける道の答えは(まつりごと)を担う人だと思ったんだ。



お疲れさまでした。

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