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説話131 元同僚女は先生役を務める

 メリルが来たことで勇教園の科目担当先生がグッと楽になったよ。


 マーガレット先生が担当する科目の比重は減り、彼女にかかっていた負担が軽くなったね。それに魔王軍の中でマーガレットが一流の万能型ならメリルは間違いなく超一流。



 魔将三人衆の中で技のナシアース・メリルと言わしめるだけであって、彼女にできないことを探すほうが困難なんだよね。


 それでクラスの担任なんだけど、彼女には勇者組のほうを担ってもらた。勇者はね、満遍なく一通りなんでもできるほうがいいと思うから。



 聖女組はマーガレットが担任先生で賢者組はもちろんボクなんだけど、戦士組のほうはメリルに勇者組と兼任で担任先生をしてもらってるのさ。



 そして、ナシアース・メリルが勇者養育計画に参加したことで、ボクはようやくこれでずっと練っていた計画が前へ進められるようになったのさ。


 ――森の遊園地わいわい遠足。


 もとい、暗黒の森林のダンジョン遠征計画がやっと発動できる。


 アールバッツたち年長組が参加するダンジョンの遠征に、メリルが子供たちを引率するんだ。




「いいか、お前たち。

 今日からあたしがお前たちの面倒を見ることになったメリル先生だ」


「はいっ!」


 うんうん。アールバッツ、マルス、コンラッドたち勇者組はいつになく緊張してるね。


 ナシアース・メリルは面倒見がいい上に教えるのも非常に上手だよ。彼女が率いていた魔王近衛師団は、ガルスが長とする魔王直属第一軍に引けを取らない魔王軍で最精鋭の一つさ。



「いいか! 勇者たる心構えはスルトから聞いてるから、それについてはあたしは事細かくうるさく言うつもりはない」


 メリルが鋭い目で子供たちを見まわしてる。


「心とは己が持つものでどういう勇者になるかはまず自分で考えろ!

 わからない時は聞いてくれていいから、その時は説いてやろう。

 だがしかーし! 勇者は道を征く者であり、勇気を示す者でもある。

 いいか、弱い勇者なんてもってのほかだ!」


「はいっ!」


「あたしはお前たちを一人前の強者に鍛え上げてやる。弱音を吐くことは許さん! 泣くときは寮に戻ってからにしろ!

 勇者とは勇気を持って先陣を切って行く者。そのための力はあたしが付けさせてやる。

 視線は前へ、味方に背中を見せ、敵に立ち向かえ。道を切り開いた時に自分が真の勇者だと自分を誇れ」


 子供たちが全員、姿勢を正してメリルの言葉を聞き入ってるよ。



「わかったかあっ!」


「はいっ!」


 緊張感のあるクラスになってきたね。


 まあ、魔王様と真正面から立ち向かうのは勇者と戦士だから、ここはメリルにまかせよう。


 ボクはこれで賢者組とポーション作りに専念できるというものさ。




 アールバッツたち年長組は一日中メリルによって厳しく鍛えられ、すでに精根尽き果てて、いつものように騒いでいない。


 夕食の時はうつらうつらと半分眠りながら食べ物を口に運んでいた。風呂に入り終わったあとは、早々と部屋へ戻って寝てたよ。



「明日は休みにするね」


「あ、そうなの?」


 メリルとボクはマーガレットが入れたお茶を飲みながら雑談してる。



「今日はあの子たちの調子を見てみたけど、基礎体力をもう少し上げてから鍛えるわ」


「まあ、そこはメリルに任せているから、ボクは口を出すつもりはないよ」


「そ」


「ああ」


 メリルは大のお菓子好き。


 いま口へ放りこんだイザベラが作った焼き菓子は、彼女のお気に入りなのよね。


 なんだかんだで、イザベラは貴族令嬢としての作法を一通り学んでるから、スペックってやつは低くないのさ。



「魔王様は元気?」


「相変わらずよ。

 でもね、スルトとマーガレットという玩具がいないからちょっとは寂しいみたい」


「トホホ、ボクは玩具なんだね」


「そうじゃないの?」


「魔王様は寂しがり屋だからね」


「ふふふ」


 ボクは自分の部屋へ戻ろうと椅子から立ち上がった。そんなボクにメリルは嬉しそうに喋って来るんだ。



「スルト、ありがとう」


「なあに?」


「スルトといるとやっぱり退屈はしないね」


「お礼をいうのはこっちさ。先生してくれてありがとうね」


 メリルに手を振ってからボクは考えながら歩く。


 明日は勇者組だけじゃなくて、勇育園の休園日にして、子供たちを遊ばせよう。



 ボクはね、ポーション作りに励むつもりさ。


 すでに六棟の倉庫はいっぱいになったから、近日中に全部の倉庫をポーションと毒消しポーションの木箱で埋めておきたいんだ。


 ――フフフ~ン、楽しいなあ。



お疲れさまでした。

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