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説話118 勇者候補は過去を思い出す

 ぼくはアールバッツ、誇り高いウルフ族の子だ。


 とうさんもかあさんも冒険者だった。人間の所で学問を学べないぼくと妹マルスのを養うために、とうさんとかあさんはぼくと妹を連れて、お金を稼げる迷宮都市ラーゼンバルクというところへ行った。



 とうさんとかあさんはそこで死んだ。



 勧誘されたクラン・デッドオアアライブとダンジョンを潜り、とうさんもかあさんも、仲間だった冒険者も帰って来なかった。


 あとで親切な冒険者のおじさんから聞いた話では、クラン・デッドオアアライブはどうやらとんでもないクランであるらしくて、あいつらを知らない冒険者を騙して、ダンジョンでモンスターを誘うためのエサにしていることを聞かされた。


 ぼくはそのことをマルスにも、とうさんの冒険者仲間だった子供たちのアグネーゼ、エルネストとミールにも言っていない。



 ぼくは頑張る。


 この子たちを養いながら力をつけて、いつかとうさんとかあさんの仇を討つんだ。でも今のぼくには力がない。だから冒険者のポーター役をしながら、ぼくは日銭を稼いで、いっぱいは食べれないけどどうにか飢え死にしないで懸命に生きてきた。



 優しい冒険者もいるけど約束のお金をくれないズルい冒険者もいる。だけどぼくにはなにもできないから、お腹を空かせる日だってある。


 とにかく生きる。


 死んだらとうさんとかあさんの仇討ちができない。だからぼくは迷宮都市で生きているんだ。いつか、あいつらを倒すために。




 その日は雇ってくれる冒険者がいないためにぼくはみんなを連れて、ダンジョンの第一層に入った。ダンジョンの第一層で出てくるのはゴブリンだけ。これならマルスとぼくでもどうにかできそう。


 でも、ぼくらはゴブリンを倒すためにダンジョンに入ったんじゃない。だれか臨時にポーター役を雇ってくれることを期待しているから。



 今日はだめかなと思っているときに、すごく恥ずかしい恰好した強い女がバタバタとゴブリンを倒していくところを見た。


 その後ろにぼくよりちょっと上の綺麗な顔した人間の少年は、ゴブリンを倒したあとに出るものを全然拾わないでそのまま行った。


 少年はポーター役じゃないのかな? 拾ってあげたら一割はくれるかな?


 それを期待してぼくはみんなにそれらを拾うように伝えてから、恥ずかしい恰好した強い女の後ろを歩く少年に交渉した。



 ――それがスルト兄さんとイザベラ姉さんとの出会いだった。




 ぼくらはミールがもらった異空間のカバンから沢山の鉄のナイフや魔石を売って、その日は美味しい食べ物を食べて、久しぶりに宿で寝たんだ。翌日はみんなとダンジョンに行き、また少年に会えることを期待しながらぼくらはダンジョンに降りた。


 そこでクラン・デッドオアアライブのやつらに捕まってしまった。



 ぼくらはあいつらにひどく殴られて、蹴られて、ミールがもらった異空間のカバンも取り上げられて、もうここで死ぬんだなと覚悟をした。マルスも、アグネーゼも、エルネストも、ミールも、みんなのことを助けられなくてぼくは悔し涙を流した。



 でもこれでとうさんとかあさんに会いに行ける。


 もう、こんな苦しい思いもしなくていい。あとはあいつらが瀕死のぼくらをダンジョンに捨ててくることだけを待つ。


 ――それでぼくも楽になれるんだ……


 薄れていく意識の中、急に体が軽くなり、痛さも全部消えた。ぼくはそこで意識が途絶えてしまい、その時は死んだかなと思った。



 あとで冒険者ギルドのエミリアお姉さんから聞かされた話だけど、スルト兄さんがぼくらを助けに来てくれたらしい。


 あの悪の巣窟をスルト兄さんはたったの一人で乗り込んで、迷宮都市ラーゼンバルク史上最悪のクラン・デッドオアアライブを壊滅させた。



お疲れさまでした。

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