説話113 元魔将軍は暇を持て余す
寮に帰ると腹の周りがすっきりしたイザベラの周りに主に女の子たちが集まり出し、イザベラからダイエットのことをしきりと聞き出そうとさわいでるね。
楽しそうにしてるから、ボクは彼女たちをそのままにしておいたのさ。
教科書の原本も揃ってきたし、あとは人数分を複製すればいいだけ。
ただなあ、今は授業をどうしようかなと考えているのよね。四組があるから、クラスというやつをどうしてくれようかな。
子供たちの年齢にばらつきはあるし、まだ勇者候補が足りないのよねえ。
そうだ! 先に年齢が高い子に集中的に授業を受けてもらって、あとは年齢が高い子たちに年齢の低い子の授業を見てもらえればいいんじゃないかな。我ながらいい思い付きだね。
足りない勇者候補のことはおいおい考えるとしよう。時間はまだあるし、焦ってもしょうがないよね。
そういうことなら近日中に開校というやつをしてしまおう。アダムスが来るし、そのときに合わせて正式な授業をやっていこう。
「それがいいよね、うん」
「なにがいいのでございますか? スルト様」
横にちょうどマーガレットがいいタイミングで来たんだ。
彼女はこういうスケジュール管理ってやつがとても上手だからやってもらっちゃおう。
「マーガレット、ちょっといいかな?」
「はい、あたくしはいつでも子作りの用意しております。
ささ、今のうちにお部屋のほうへ、ささ」
「違うね、そっちじゃないよ」
「ちっ」
「近々子供たちの正式な授業を始めるからよろしくね」
「畏まりました」
――マーガレット、舌打ちするんじゃありません。
薬草の畑はエリックが帰って来るまで野菜を植えるつもり。
薬草と違って野菜のほうは種で植えていくからそれはそれで楽しい。収穫と雑草抜きはほぼ日課になっているから、野菜が余ってしょうがないのよね。
マーガレットと女の子たちはボクから聞いた漬物というやつを作って、寮の地下の倉庫には漬物がいっぱいさ。ボクも手伝うつもりだったが追い出されてしまったんだ。
――邪魔だって。そういう言い方はないよね、本当。
アダムスが来るのって明後日だし、朝起きたらすることがないのでボクはアールバッツたちを連れて、森へ狩猟しに行こうと考えた。
一応、異空間から弓と矢を出してみたが、普通のでいいかな。森でシカを狩るのに、自動追尾の効果に迅雷魔法付きのアーテミスの弓を使うことは大袈裟だし、獲物が消滅しちゃいそうだよ。
子供たちの腕を鍛えるためにもアーテミスの弓はないね。おもちゃみたいなものだけど、ここはミスリルの弓にしようかな。
「アールバッツ、ちょっといいかな?」
「用意できました、行きましょう」
え? どこ行くの? ボクはまだなにも言ってないけど、なんでこの子たちはすでに腰に解体ナイフとか差しているわけ? おかしいよね。
「マーガレット姉さんからスルト兄さんが狩りに連れて行ってくれるって聞きました」
「……マーガレットはどこにいるかな?」
「先ほど市場へお買い物に行くと言ってましたけど」
「……」
マーガレットはボクの部屋を覗いたんだな? これは狩りから帰ったら部屋を隈なくチェックする必要があるね。
監視カメラってやつをつけているはず。あれはボクが勇者たちから聞いた話をもとに、目が大きい虫を利用して開発した魔力駆動式の監視カメラだよ。
それがバレそうになったから逃げたんだね、マーガレット。
それはいいとしてアールバッツ。
きみもマーガレットの言うことならなんでも信じちゃうのだね、ボク心配だよ。ここから最寄りの街は最低一ヶ月はかかるんだよ?
まあ、マーガレットなら飛空魔法で飛んでいけるだろうけどさ。
お疲れさまでした。




