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説話109 元悪役令嬢は毛玉で遊ぶ

 今はイザベラと暗黒の森林に来てる。


 イザベラは森に入ったときに眉間を寄せてちょっと嫌な顔をしたけど、なにも言わないでついて来てくれたよ。


 トラウマのほうはどうやら心配したほどじゃなかったんだ、よかった。


 トラウマと言っても心の傷のほうだよ? キマイラじゃないからね。



『おお、スルト殿。待っておったのに中々来ないからどうしたものかと思っておったぞ』


 はい、今日はアダムスに会いに来たんだ。


 教科書を受け取って複製しないといけないし、そろそろ子供たちを紹介してやりたいので、アダムスが来れる日を聞いてみたかったんだ。



「あら、これは懐かしいですわ。

 毛玉で遊ぶなんて子供以来のことですのよ。オホホホ」


『お?』


「へ?」


 イザベラがアダムスに近付くと、ひょいと彼を拾い上げた。


 ボクとアダムスはなぜイザベラがこのような行動に出たことに疑問を感じる前に、イザベラはすでに投げる動作に入った。



「えいっ!」



 ――ドッカンッ!



『グボっ』


 イザベラの()()で投げつけられたアダムスは、太い木の幹へ強かに叩きつけられて、口から液体がこぼれ出した。


 ものすごい音がしたけどイザベラ、なんで? その前に木が真っ二つに折れているよね? アダムスは生きてるのかな?



「あら、この毛玉は跳ね返らないのね、おかしいですわ。

 じゃあ、もう一回……」


「待て待て待てイザベラ!

 あれは妖精のノームでアダムスという森の賢者。毛玉という玩具じゃないからねっ!」



 ここにきてボクにも理解できた。


 イザベラはアダムスのことを毛玉という玩具に勘違いしているようで それで森の賢者を投げたのさ。


 それより、アダムスの魔力がどんどん弱くなっていく。子供たちに教える前にボクは大事な教師候補を無くしそうだ。



「大丈夫かアダムス! 今すぐ回復してやるからね!」


「あらあら、ごめんあそばせ。オホホホ」


 ――ええいっ! 極大回復の魔法、最強バージョンだ!




『お前はこっちに来んなっ! 怖いわ!』


「オホホホ。今時の毛玉はすごいですのね、

 話す機能まで付いてますわよ。オホホホ」


 だからあ、アダムスは妖精のノームで暗黒の森に住む賢者、毛玉という玩具じゃないよ。


 なんだかいきなり疲れが出てきたけどこれどうしようか。


 はああ、サッサとアダムスとの会話を終わらそうかな。



「どう? ちゃんと書きあげたかな?」


『うむ。とっくに書いたわい』


 アダムスはボクが作ってあげた異空間のポーチから四冊の本を取り出した。


 異空間のカバンだとアダムスには大きいからね。歴史、社会、地理と神学の本を受け取ったボクは、そのまま自分の異空間の中に収納した。




「子供たちにアダムスのことを紹介したんだ。

 それに神堂も建てておきたいから、いつにボクたちの所へ来れるかな?

 お酒とつまみは用意しておくからね」


『おお、それは楽しみじゃわい。十日後に行くぞ。

 ――って、お前はこっちに来るなっ!』


「あら、つれない毛玉ですことよ。オホホホ」


「じゃアダムス、十日後にね……

 イザベラ、行くよ」


『はようこの怖いのどこかへ連れてけ!』


「毛玉さん、また遊びましょうね」


『誰がお前と死の遊びをするか!

 こっちに来んなっ!』


 激しく嫌がってるアダムスに、イザベラは楽しそうな顔で近付こうとする。


 ボクはペットの手を引っ張って、今日に行きたいもう一つの目的地へ向かうことにしたんだ。



お疲れさまでした。

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