説話101 元魔将軍は元侍女を回想する
ボクの元侍女さんにして、元魔王軍幹部であったアーウェ・マーガレットはサキュバスなんだ。
異性を虜にすることにかけては天下一品の魔族。
彼女はボクが魔王様たちと魔王領を征服してた頃に逢魔の洞という、魔王軍に反抗的な魔族たちが寄り集まった深くて迷宮みたいな洞窟で拾ったんだ。
彼女の両親は反抗的な魔族たちによってすでに殺されてしまい、マーガレット自身は囚われて牢獄の中に入れられてしまった。
ボクが発見した時の彼女はすごく怯えていて、ただ震えるばかりで身体の至る所に傷跡があったんだ。
そんな彼女をボクは解放してあげたいと思ったけど、魔王様の言いつけでボクが育てることなった。だから彼女にボクの名をあげたんだよね。
――え? 反抗的な魔族たちはって? そんなのとっくに皆殺しだよ。だって、最後まで刃向かってきたもん。
魔王領の拡張期では通告したにもかかわらず、魔王軍に明確的な敵意を持ち、敵対行為を働いたものはどの生き物であれ、降伏しない限り、死しか選択肢がないんだよ。
初めこそボクのことを怖がってたマーガレットはすぐに懐いてきた。ボクがどこへ行くにもその後を雛のようにちょこちょこと付いてくるから可愛かったのよね。
それがね、成長するとともにサキュバス族の特徴が出てきたんだ。
風の中で靡かせる薄緑の髪。
頭から突き出す小さな角が二つ。
しなやかなスラッとした手と足。
巨大としか言いようがない二つのお乳。
このお乳のことでナシアース・メリルと衝突することも多かったんだ。
二人の言い合いはいつもマーガレットがお乳を突き出すことで決着がついた。メリルも大人気ないよね、マーガレットが子供の時はあんなに可愛がってあげてたのにさあ。
そうそう、ボクが勇者たちから聞いたビキニ水着を作った時は、マーガレットがボクに黄色で虎柄のビキニをねだったけど、それだけは許さなかった。
だって、マーガレットの得意魔法は電撃魔法と飛空魔法だよ? 色々とあうとってやつだからダメ。え? なんでって、ダメなものはダメ、とにかくそれはダメ。
マーガレットは小さな唇にパチッとして目が大きく、こういう顔はアニメ顔って戦士のタケダが教えてくれたんだ。
タケダはほかにもいろいろ教えてくれたよ? モエとかヨウジョとかね。でもね、タケダは聖女のマイになぜか嫌われていたね。キモオタデブ死ねとかよくマイが言ってたよ。
その都度にオーバーアクションってやつをタケダがクハッとか言って、オーアージーという格好して這いつくばるんだ。
そんなこんなで色々とボクと縁が深いマーガレットなんだけど、ボクは全部の魔法、ガルスが武技全般でメリルが格闘技と体術を教え込んだため、魔王軍の中でも群を抜く実力者であることはボクが保証できるね。
彼女が成人したときにボクは魔王様に魔王軍の上級幹部を推薦したのだけど、彼女は魔王様にボクの侍女にしてほしいと願い出た。
バカだねえ、あれだけの力があるのに侍女をしたいってどうなのかな。そりゃ、ボクに仕える侍女はいなかったけど。というかそんなのいらなかったんだ。
魔王様はなぜか快くマーガレットの願いを承諾した。しかも親指を立ててだよ。あの二人はなにか通じ合うものがあるのかな? ボクにはよくわかんないや。
それ以来、マーガレットはボクが魔王城を出るまで侍女を務めてきた。
稀にね、彼女は魔王様の言いつけでお出かけしているけど、ボクにはなにも言わないのさ。
でも、ボクは知ってるよ? マーガレットがお出かけすると、どこかで反抗的な魔族が消えるんだ。
でもまあ、マーガレットが言わないのならボクも聞かない。マーガレットが好きなことやってくれればそれでいいとボクは思ってるから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日はなにもしなくてもいいというお休みの日。
午前中はイザベラとマーガレットが子供たちと遊んでくれて、ボクは薬草畑の雑草抜きしてからセクメトのくんずほぐれつしたい愚痴を聞いてあげてたんだ。
セクメトってば寝てばかり。
真っ昼間からゴロゴロしてばかりで体に良くないって聖女のマイが言ってたよ? どうよくないかはよく知らないけど。
さて、ボクも今日はちょっとお昼寝をしちゃおうかな。
――マーガレットがボクのベッドの上にいる。布団をあけながら裸体でボクのほうに手招きをしている。
「ねえ、なにしてるの?」
「スルト様がお疲れの御様子でマ・オウフ様のお言いつけによりスルト様をお慰めしとうございます。
ささ、ご遠慮なさらずにこちらへ、ささ」
スタスタスタ……スパーンッ
お疲れさまでした。




