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説話99 元魔将軍は元侍女のことで決意する

 ボクの元侍女さんにして、元魔王軍幹部のマーガレットは超が付くほどの万能型。


 彼女にできないことはないじゃないかなと、魔王軍の幹部たちを初め、最高幹部だったボクも思うほど何でもできちゃうんだ。


 だからね、寮の中はグッと明るくなった。



 子供たちはマーガレットのマメさもあってすぐに懐いてしまった。


 今ではセクメト以上に寮母さんって感じがするんだ。当のセクメトもマーガレットと姉妹のように雑談で花が咲いてるね。サキュバスという種族はどちらかというと闇属性だから、肌が合うのだろうね。



 イザベラはって? それは言うまでもないね。


 マーガレットがいないとなにもできないような廃人になりつつあり、ボクがシツケしようとすると、マーガレットが割って入ってなだめてくるから、ペットがどんどんダメになっていくんだ。


 ――どうしようか。




「マーガレット。きみに言いたいことがあるんだ」


 ボクは決めた。


 ここで甘い顔をすると、これからずっとマーガレットのターンになりそうだよ。



「スルト様、御担当されておられる薬草の畑に雑草が群生しております。

 薬草の品質を維持するためにも、お早目の雑草抜きがおすすめですが」


「それはいけない。ちょっと行ってくるから話はあとでね」


「畏まりました。お待ちしております」


 これは急いで行かなくちゃ。ニヤリとマーガレットが笑った気がするけど、今は雑草抜きに専念するんだ。



 ——ふう、抜いたよ。


 この雑草と言う名の極悪侵略者め、ボクの大事な薬草を守護するために全部退治してやったよ——って、なんか忘れてないかボク。


 あっ、マーガレットに話があったんだ。




「マーガレット、午前中の話なんだけどさ」


 今度は話を逸らさせないよ? ボクもいうときはちゃんという魔族だからねっ!



「それはかまわないのですが、薬草の煮詰め作業は中火になっておりますけれども、弱火に調整されなくても宜しいのでしょうか?」


「ありがとうマーガレット! よくぞ気付いてくれた、ちょっと行ってくるから話はあとでね」


「畏まりました。お待ちしております」


 しまったあ! ボクとしたことが薬草の煮詰め作業を忘れるなんて。確かにマーガレットに作業を頼んだ気がするけど、今はそれどころじゃない。



 ——危なかったよ。


 もうちょっとで煮詰めすぎるところだったんだ。そうすると薬草の香りに焦げ臭さが出てくるんだよね。


 きっとマーガレットは不慣れの作業を心配して、ボクに伝えてきたと思う。


 ――しょうがないなあ、もう。


 いくらマーガレットが有能でも、ポーション作りの達人を自任するボクに追いつくのは1,000年早いよね。今度からちゃんと教えてあげなくちゃ。


 

 それはそうともう少し時間がありそうだね。あいつとの話し合いはかき混ぜの作業をほんのちょっとだけしてから行くか。


 かき混ぜえへへ——



 ——終わったあ、気持ちいいねえ。やっぱりポーション作りは最高だよ——って、なんか忘れてないかボク。


 あっ、マーガレットに話があったんだ。




「マーガレット、午前中の話なんだけどさ」


 よくもまあ、草抜きとかさあ、煮詰めやかき混ぜとかさあ、ボクの好物ばかり押し付けてからに……


 話を無くさせようとする魂胆はわかってるからね。今度こそは言わせてもらうよ! ボクはやるときは必ずやる魔族だからね!



 魔族はウソを言わない! 元魔王軍序列三位の魔将軍して通り名は地獄の水先案内人、このアーウェ・スルトの名をかけさせてもらうっ!



「……スルト様、いま何時でしょうか」


 あれれ? なんだかマーガレット()()が怒ってないか? おかしいね。ボク、なにをしたのかな?



「えっと、もうすぐ12時ですけど……」


「12時ぃ? 12時ですって? よくもまあ、そんなことを簡単に言えますわね!

 夕食の時に子供たちがどれだけ心配してると思っているのですか? ミールちゃんは寝る前にあたくしに聞いてきたのですよ? スルトお兄ちゃんはまだ帰らないのって。

 スルト様は人に心配させて楽しいのですか! イザベラお嬢様も喉にご飯が通らないほど、今日の夕食は二回しかお代わりしてませんよ!」


「違うんだ、マーガレット。雑草がね、カキカキマゼマゼしないといけないんだ」


「聞き苦しい言い訳の前にちゃんと言うべき言葉がありませんか?」


「……ごめんなさい」


 あれれ? マーガレットに文句を言うはずのボクがなんで謝ってるの? おかしくね?



「宜しいですか? 今後は一切残業は禁止いたしますのでそのおつもりで」


「いやっ、それはちょっと——」

「——宜しいですねっ」


「……はい」


「では、お食事なさってからお風呂でも入って、ゆっくりとお休みなさいませ。

 あたくしはこれで失礼いたします」


「お疲れ様……」


 マーガレットは鋭い目付きでボクを睨みつけてから、自分の部屋のほうへ戻って行った。



 ——って、あれれ?


 なんかおかしいけどなにがおかしいのかなあ? なんでマーガレットにきつく言いつけようとしたボクが怒られたんだ? なんかおかしいよね。



 ……まっ、いいか。疲れたし、ご飯は異空間に入れてから風呂に入ろ……


 それとイザベラ。いつもどのくらいお代わりしてるの? 今度暗黒の森林のダンジョンへ連れて行くからね。



お疲れさまでした。

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