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説話98 元侍女は元悪役令嬢をもてなす

「ボクは――」

「ささ、イザベラお嬢様はこちらに。ささ」


「あら、どちらに行かれますの?」


 マーガレットはボクがなにかを言い出す前にイザベラを寮の中へ連れて行った。


 あいつはなにをしたいのかな? まあ、間違ってもイザベラに手をかけることはないと思うけど、気になったのでボクも見に行こうかな。




 マーガレットは寮の中に入るとあっちこっちの部屋を見回して、厨房を発見するとそこにイザベラを連れ込んだ。


 ボクもついて行くとマーガレットは風呂敷を広げて、そこから愛用する調理道具を取り出した。


 基本的にいい子なんだよねマーガレットは。


 今でもボクの言いつけをまもっているんだね。風呂敷でものをことを教えてくれたのは戦士のマツナガ、面白そうなのでボクがマーガレットに使うように言いつけたのさ。



 異空間から食材を取り出すとマーガレットはいそいそと料理を作り始めた。厨房にいい匂いが立ちこもり、イザベラはまだ食べてもいないのに涎を垂れ流している。



 そう言えばマーガレットって、料理がとてもお上手で魔王軍に知れ渡っているんだ。


 ボクは食べなかったから知らないけどね。何度も魔王軍の総料理長から勧誘を受けているが、ボクの世話があるので断り続けたのよねえ。


 まあ、世話と言っても、ボクが嫌がっているにもかかわらず、一緒に風呂入ったり、おねんねしたりするだけなんだけど。



「ささ、イザベラお嬢様どうぞお召し上がってください」


「あらそうですの? それでは……」


 ペットが料理を一口食べてから無言になった。


 物凄い速度で料理の数々を次々と平らげていくね。食べ過ぎだよイザベラ。ちなみに食材はドラゴンの霜降り肉。魔王領では最高級の食材らしいね。




 満腹で動けなくなったイザベラを担いで、マーガレットは風呂場のほうへ行く。


 イザベラの着衣を破るように脱いだマーガレットは瞬時に熱めのお湯を張り、そこへイザベラを放り込んでから花びらを風呂の中に撒きちらす。



「プハーっ! あら、これは……」


「魔王領の奥地にあるお肌にとてもいい温泉の湯でございます。イザベラお嬢様。」


「あら、そうですの? それは珍しいですことね。

 これ……気持ちいい……」


 イザベラ、きみはさらっとスルーしたけど、いまマーガレットはハッキリと魔王領って言ったんだよ? そこは無視してもいいの? ねえ。



 湯上りにガルツィンという植物の種から抽出した油で作ったオイルでマーガレットの流れるような手付きでマッサージを受けるイザベラ。


 ペットの目がとろんとしてどこかへぶっ飛んでしまいそうでとても怖い。




 魔王領でも珍しいアラクネクイーンの糸で仕立てられたとても豪華そうなドレス。


 白金や宝石で豪華に作られたペンダントやらブレスレットやらの装飾品をまとって、イザベラは勢いよくボクに指を突き指してくるんだ。



「今日からマーガレットはワタクシの侍女に復帰するのですわ。スルトちゃんでも異論は認めませんよ!」


 ――ニヤリ


 イザベラの後ろに立っているマーガレットは怪しい笑みを見せつけてくる。



 侍女(マーガレット)はあっさりとイザベラ(ペット)を篭絡したよ。


 イザベラのおおざっぱさというか、心の防御度が低いのは知ってたけどさあ、それじゃベニヤ板なみじゃないか? トホホ



 あ、ベニヤ板のことはガタイがとてもいい、戦士にしか見えない聖女のアツコから教わったんだ。


 家が土建屋という職業らしく、将来は家を継ぐって言ってたよ。社長という魔王様みたいな一番偉い人にちゃんとなれたのかな? 頑張れ、アツコ。



お疲れさまでした。

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