衝動
「おら、金だせよ。三万ぐらい」
「お金なんて持ってないよ...」
「あ?お前あのヤブ医者のボンボンなんだろ?」
「嘘はついちゃいけないって学校で習わなかったか!」
そう言って拳が振り下ろされる。
「ッ!」
拳が左の頬に直撃し、僕はその場に倒れた。
「アハハハハハハハハハハ!」
三人の笑い声が重なって響く。
そう、僕はいじめられていた。
いまも裏山でいじめられ中である。
小学生の僕のお父さんはこの町ではそこそこ大きな病院の開業医をしている。
そもそもいじめとは、他の人間を蹴落とし、見下すことによって、自分はより上位の存在だと、そうして優越感に浸り自尊心を保護しようとする行為だ。
よく、「いじめや争いはみんなが手を取り合えば無くなるんだ!」的なことを聞く。
いい言葉...感動的すぎて涙が出てくる...グスン。
...だがそんなものは有り得ない。決して。
それが実現できるならば歴史の教科書はスマートフォン並に薄くなっていることだろう。
この世界は欲望からなっている。人間は欲望に忠実に生きているのである。それが無くなると言っているのだ。
人間が人間、いや生物である限り欲望が無くなることはない。
わかってる...わかってるけど、もう限界だった。
だから...
だから、殺すことにした。
「チッ、こいつ本当に持ってねぇじゃん」
「もういこうぜ」
「あーあ、今日どうするよ」
と言ってが歩き出した瞬間、あいつらが視界から消えた。
「うわ!」
「なんだこれ!」
「おい!どういうことだよ!」
落とし穴である。簡単そうに思うだろうが3人分入れる穴を掘るのとバレないようにするのは大変だった...
「見た目通り落とし穴ですが?いくら知能指数が低い君達でもわかると思うんだけど...あ、コレ作るのにモロ込み一万六千三百八十二円掛ったんで後で君達の財布から抜いておくね」
「ふざけんな!そんなこと出来ると思ってんのか?絶対に許さねえぞ!」
「え?許してもらう必要ないし。だって君達ここで死ぬんだもん」
そう言って僕が取り出したのは、先に大量のメスの刃がついた鉄パイプだ。
「お、おい...冗談だよな...」
「まさか。冗談でこんなことするわけないじゃん。じゃあね」
槍とか触ったこともなかったのでうまくいくか不安だったが、うまく心臓を狙えたのとメスが期待以上の切れ味を見せた結果、一突きで殺せた。
その瞬間、いままでに感じたことのない高揚感を味わった。
...まるで巻きつけられていた鎖から解放された気分!人を殺すってこんなに気持ちいいんだ...そう思った。
「うわあああああああああああああああ!」
「誰か、誰か助けてえええええええええ!」
そう叫ぶ残り二人を叫び声で他の人に見つかる前に殺す。
「ぐあ!」
「ぎゃあ!」
二人を殺したときも、同じ気分を味わった。
...やみつきになりそう、いやもうなった。
三人の財布からお金を抜いた後、死体を埋め、落ち葉を被せた。
今日はこの後雨の予報だ。証拠はその雨が消してくれる。
家に帰ってすぐ、予想以上の大雨が降りだした。
後日、三人の捜索隊が出されたが、見つかることはなく、まもなく捜索は打ち切られた。
あれから楽しい学校生活を送っている。ごく普通の小学生の生活。ただ一つ違いを上げるならば...
だめだ...もう我慢できない。次は...
次は誰を殺そう?