ブームの法則
「今は、猫だな。
その前は・・・」
Aを椅子の背もたれに身を預け、
天を見つめた。
「エコ・・・」
Aは腹筋を効かせ、グッと体を起こした。
「そういうことか・・・」
AはPCでググってみる。
「北川景子、
黒柳徹子、
サエコ・・・」
話題になったタレントを検索した。
「この法則でヒット商品ができるかもしれない・・・」
Aは、会社でアイデア商品の企画開発を行なってる。
これまでいくつかのヒット商品を開発していた。
でも、大ヒット商品とは思えず、満足していなかった。
それで、Aは自分の開発手法を変えてみようと思った。
その手法はオーソドックスだった。
苦情を解決する方法で商品を開発してきたのだ。
一番多いのはスペースを取る、と言うクレームだ。
それで、Aは折り畳み式にする手法で対策したのだった。
また、Aは新素材にも敏感だった。
Aは、いち早くキッチン製品にシリコンを取り入れていた。
「ブームが作れるかも・・・」
Aはヒット商品に留まることなく、ブームを作りたかった。
「米粉、
ニセコ・・・
そうか子猫は最強だ」
長い沈黙の後、Aはカッと目を見開いた。
「テコだ。
テコの原理を取り入れた商品を作ろう」
Aは用紙に鉛筆を走らせ、製品イメージを描いた。
それは電気自動車だった。
テコの原理を使って、簡単に縦型に駐車できるのだ。
これにより1台分駐車スペースに4台駐車できるようになる。
「これはブームになる」
自画自賛のAは、大きく呟いていた。
打ち合わせから戻って来たBは、Aに尋ねた。
「ブームって?」
「ブームの法則を見つけた」
AはBにその法則を説明した。
Bは怪訝な顔をした。
「北川景子?
なんでだ?
その法則に当てはまらないだろう?」
Aは、『KEIKO』と縦に描かれた車の隣に書いた。
そして、E、K、Oの下に線を引いた。
Bは大きく頷いた。
「そういうことか」
Aは、ブームになるモノにはある文字が入っていると発見したのだ。
それは、EKOだった。
ネコ、エコ、ケイコ・・・
コネコは2つある。
「だからテコなのか」
BはAが描いた車に感心した。
「でも・・・」
Bは次の言葉を飲み込んだ。
2年後、Aが企画した縦型駐車の電気自動車はメーカーに採用された。
日本だけでなく、海外メーカーにも採用され、
ブームを起こしそうになっていた。
Bは、社長に表彰されているAに拍手を贈った。
やっぱり言わなくて正解だった。
もし、あのことをAに指摘していたら、
自信家のAはあの企画を中止していただろう。
エコはEKOでなく、ECOだと。
Bは心の中で思った。
本当にブームとなるモノは、どんな障害をも乗り越えてくる。
それが本当のブームの法則だ、とBは知っていた。