欠陥な俺に
こんなにも 痛いのに
こんなにも 苦しいのに
駄目なんてこと、わかってて、君は手を伸ばすんだ。
春は美しいと君は言う。優しそうにイタズラっぽく君は笑う。
夏は嫌いだと君は言う。きっと私があげたマフラーが暑いのでしょう。いじっぱりな君はマフラーを逆にきつく締め付けた。
秋は静かだと君は言う。優しい色に包まれて、君は舞っていた。
冬も嫌いと君は言う。
泣いて泣いて、君は言う。
時の止まった鎖の中で、永遠が続く校舎の中で、寒さに震えることはなく、だけど独りぼっちに震えてた。
君の回りには光が見えた。
私の回りにはなにもない。
《泣くことすら満足に出来ない欠陥品》
その通り。笑うことさえ道化のように、君の行く道にふらりふらり。
そんな日々もおしまいで。
12時の合図、君は早く帰らなきゃ。だけどもガラスの靴は忘れないで。あったら君を探してしまう。
だから私は時計の音に背中を押され、無情にも突き飛ばすの。
お前に宿した想いさえ、欠陥な俺に返還を。恋、なんて呼ぶには幼くて、名乗ることさえ出来ないな。
俺が居た証、全部全部、俺のものに出来ればいいのに。
そうすれば、灰色の空の下、お前は泣いたりしないだろう?
12時の合図、お別れだ。
俺は残り、お前は進む。最後のお別れ。欠落していた感情も、全部お前にたくさん教わったから。
ずっと居たいだなんて、今だから思う只のワガママ。
だけど終わりは訪れて、鐘が高鳴るその前に。
別れを告げる凜の音に。
たった一言 好きだ って。
(つたえ、られたら。)
とある2人の話。
視点は1人だけ。
残る少年と、進む少女。