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第七話 『叫び』

「この間の話の続きだが」


 歩みを進めながらエンキは切り出した。


「応」


 それに応じながら忠正も茂みをかき分け進んでいく。

あれから三日が経った。遠征の日程、その大部分を消化した計算になる。

その間も何度か魔族が襲いかかってきたものの、

大跳水球(グリュンブル)大病蜥蜴(グライマン)程度であれば概ね問題なく捌けるようになっていた。

この不整地を進む歩みもまた、手慣れた様子となっていた。


 エンキは眼前が確保されていくのを確認してから話を続ける。


「魔法はそれだけではないんだ。気をつけなければならないものがある。

それは、攻撃魔法と呼ばれるものだ」


「攻撃魔法?」


「アウグスタ殿が使っていただろう。風の刃。あれが属する種類の魔法でな」


 忠正は思い出す。剣を風が取り巻いたと思ったら、

剣の振り下ろしとともに纏っていた風が大地を割るのだ。

仕合では大振り故に使いづらかろうが、合戦などにおいてはあの範囲、

威力共に申し分はあるまい。


「アウグスタ殿はあれしか使えないようだが、

例えばこの大森林で目撃されている大老魔木(グローガン)は魔法の使い手だ。

いろいろな魔法を使ってくる。用心してくれ」


「用心といってもな……」


 未だ魔法というものがよく理解できない忠正だ。

何に用心したらいいのかもまだ分からない。


「魔法陣……ええと、その、見慣れない紋様がどこかに浮かんだり、

風が集まる、どこかから熱風が吹く、光る、とか、

そういう普通じゃないだろうな、ということが……

んー、起点となるんだ。だから、そういうものが生まれたら魔法が来ると思え」


「成程、かたじけない。気をつけよう」


 エンキが捻り出すように放ったその忠告を心に留め、

その忠正の感謝の言葉にエンキは頬をかいた。



 ● ● ● ●



「数が多すぎる」


 速度を落として二人に肩を並べたアウグスタが言った。


 疲労の色は全く見えないが、眉根を寄せて唸っている。


「前回の遠征では大病蜥蜴(グライマン)が五匹、大老魔木(グローガン)が二匹、跳水球(リンブル)が二匹だぞ?

今回は既に大病蜥蜴(グライマン)は二十匹を超え、跳水球(リンブル)どころか、

その大型種の大跳水球(グリュンブル)が大盤振る舞い!

尋常なものではない。こちらも連れてきた半数近くが負傷している」


 半数近くの負傷。その全てが戦えなくなっているわけではないが、

それでも戦力が大きく低下していることは事実だ。

これからも魔族が増える可能性を考えると、到底足りたものではない。


「次回の遠征からは兵士と……或いは傭兵たちの雇用、

それに帝国からの援軍も視野に入れなくてはならんな」


 まるで戦を行なうかのような話だ、と忠正は思う。

そうもなれば、一週間の遠征などという話では収まるまい。

いや、そもそも、一週間足らずで到達できる距離にこれだけの妖異が屯していることこそが脅威だろうか。


「傭兵団ならば、西のディロン傭兵団がいい。

気性は荒いが実力は確かだし、雇われた土地で狼藉を働くこともないと聞く」


「それはいいな。平時の奴らは野盗と変わりゃせん。

揉め事の種は無いに越したことはない」


 それを聞いた直後、あ、とエンキが声を上げて口元を抑えた。


「あーっ、えっと、その、北のカローナ銀翼団もやめたほうがいい、ですね」


「思い出したかのように堅苦しい喋り方にせんでいいわい! まどろっこしい」


「分かった」


 大真面目にエンキが頷く。この国にとって騎士とは武士のようなものだろう。

だが、それでもまるで気にしないようなアウグスタの態度は珍しく感じるものだった。

だが、マリーエの態度などを思い返して、


 しかしそれはここの気風だろうか。


 と忠正は思い至った。


 順調に歩みを進めていると、アウグスタは眉根を寄せて、


「気温と湿度が変わってきたな」


 と、耳先をかすかに震わせながら言った。

忠正にも感じ取れないような微細な変化であったが、


「エルフの耳先は、自然を敏感に感じ取るために繊細になっているんだ」


 とエンキが補足した。なるほど、長く尖った耳先はそのためのあったのか、と忠正は得心した。

特徴的な見た目というのは、やはりなにがしかの意味があるらしい。


 しばらく歩いていると、今まで踏みしめていた湿土が、かさついた、乾いた土へと変わっていく。


「あと二時間(一刻)も歩けば、恐らく大老魔木(グローガン)の領域になるな。

巨大な枯れ木に擬態している魔族だ」


「ぐろうがん……ああ、エンキの言っていた魔法を使うという魔族か」


「おう。多くの魔法を駆使する油断ならぬ奴よ。

複数で出てきたならば、真っ先に仕留めねば戦列が瓦解するかもしれん」


 確かにあの風魔法のような遠間からの打撃を与えられては厄介だ、と忠正は同意する。

徐々にその領域へと変わりつつある風景に、アウグスタは一計を案じた。


「危険はあるが、止むを得ないか」


 近場の騎士を呼び寄せて、周囲へ散らばる副団長へと伝令を飛ばす。

半刻(一時間)ほどの時間をかけて、隊列は前方を中心に半円で展開していた。

思い切って後方への警戒を薄め、前面の防御を厚くした形である。


 足を進めていくたびに、辺りに陽が射し込み始めた。

木々に茂った葉が、その密度を減らしているのである。

しかし、久方ぶりの日光であるにも関わらず空は曇天であった。

どころか、木々からは雫が滴っている。雨だ。


「近いうちに本降りになるなあ、こりゃ」


 雨は感覚を鈍らせる。それがどうにも忠正は嫌いであった。


「そういえば、最後の仕事も雨の日だったな」


 忠正の呟きは、鬱蒼とした木々の中に溶けていった。



 ● ● ● ●



 まばらに枯れ木が増えつつある。

歩いた時間からすれば、恐らく既にここはかの魔族の縄張りであろう。

枯れ木が多い場所に大老魔木(グローガン)の領域があるのか、それともこの魔族が枯れ木を増やすのか。

それは忠正には分からぬ話であったが、ともかく警戒しなければならない。


 雨粒は多く、強くなりつつある。既に雨は忠正の頬を叩き、髪を濡らしていた。


 野営の時間までもうしばらくはある。それまでは警戒を緩めるべきではない。

身体に一層の緊張を与えて辺りを警戒した忠正の耳に、声が届いた。


「敵襲ーッ!」


 騎士たちの声だ。遠間から大量の大病蜥蜴(グライマン)が迫ってくるのを、忠正は視界の端で捉えた。


 激しい激突音が響いた。大病蜥蜴(グライマン)の、火のついたような突進を前列が受け止めているのだ。

後方から槍隊がその対手を叩きその穂先を突き込むが、その硬い外皮に阻まれ有効打には至らない。


 いつもならばその数に任せ前列が盾で受けとめて後列がその止めを刺すのが常道で、

その流れは一切乱れることがない。だがしかし、今回ばかりはそうも居なかった。


「数が多すぎる! 守りを厚くしろ、このままでは前列が破れるぞ!」


 副団長のうちの一人が焦ったように声を上げた。

大病蜥蜴(グライマン)が一箇所に集中するように突撃をかけてきたのだ。

全体で見ればまだまだ人数で有利であるが、馬車を守るために大きく広がっている今の陣形では、

戦力が集中してしまうと抑えきれない。アウグスタが前面に戦力を集中していなければ、

一瞬で食い破られていたことだろう。


鉈のような爪が風切り音を立てながら盾へ深々と突き刺さる。

長らく戦い続けてきた盾が、とうとうその限界を超えたのだ。

ひ、と前列を守る騎士の喉元から声が漏れた。


 こうしている間にも、刻一刻と前列が押しやられている。

それを見たエンキがアウグスタに向かって叫んだ。


「足の速いあたしが行く!」


「頼む!」


 エンキが魔法の力によって飛び上がった。

こういった時の速度は彼女が最も疾い。

瞬く間にその距離を詰めて前列の大病蜥蜴(グライマン)に踊りかかった。


 今、残された二人がやるべきことは周囲の警戒を乱さぬことだ。

魔族の群れから回り込むように前へと進み、周囲を鋭く見回している。


「嫌な予感がする」


 耳を微かに震わせてアウグスタが言う。ただの勘だ。

しかし、戦場に長く身を置くものの勘とは、得てして信頼のおけるものであった。


「アウグスタ。あそこの木だが」


 彼らのはるか前方に見える、数本の枯れ木に忠正が視線を向けた。


「先程から少し、位置が変わっているような気がする」


 彼の勘を信頼し、注意深く観察した結果気づいたことだ。

些細な変化故、アウグスタの言葉がなければ気付かなかった気さえする。


 忠正の言葉を聞いてアウグスタが駆け出した。

肩に担いだ剣に、風が渦巻きはじめ、いつでもあの風の刃を射掛けることができるように待機させる。

アウグスタが遠間から仕掛けることができるならば、やはり忠正は前に出た。

しかしいつもほどの前傾姿勢ではない。

突出するよりも、相手の魔法に的確に対処することを選んだのだ。


 二人が駆け寄ったことで辺りの空気が変わった。

木々がざわめき、軋む音とともに目をつけた枯れ木が動き始めたのだ。


 しかし。


「三匹だと!?」


 動いた木の数は三。一匹だけでも厄介な大老魔木(グローガン)が三匹だ。

それを守るような大病蜥蜴(グライマン)が軒並みエンキのもとへと向かっているのが幸いか。しかし。


「あれが本隊に魔法を浴びせると厄介だ。こちらに惹きつけるぞ、死ぬなよカノ!」


 忠正の返答を待たずにアウグスタは雄叫びを上げた。


 風よ。


 その言葉と共に刃が振り下ろされる。未だ三十三間(60メートル)は距離があろうが、

それを無にするような斬撃だ。まるで引き裂かれるように地面が割れ、

大老魔木(グローガン)を風の刃が襲った。


「浅い!」


 アウグスタが舌打ちする。こちらの魔法に気づかれ、回避行動を取られていた。

それ故に有効打を与えることはできず、幾重にも生えた枝のうち数本を切り裂いたに留まった。


 風が鳴動する。女の泣き声のような、或いは夜に荒ぶ鳥の声のような音だ。

枯れ木に黒い穴が開き、形が変動していく。

その虚空を風が通ることによって、その音が生まれていた。


 その音に共鳴するように、大老魔木の頭上に複雑な紋様の刻まれた円が浮かび上がっていた。

魔法陣と呼ばれるそれは十は浮かび、魔法が現出する。


「来るぞ!」


 紋様はこちらを向いている。まるで目のように開いた三匹の空洞が、先行した忠正を見つめていた。


 風が泣く。大気をかきむしるような泣き声に呼応して、拳大の石を打ち出した。


 まるで霰だ。数十にも及ぶ石礫が忠正に向かって吐き出される。


「問題、無し!」


 構えていた刀を即座に鞘へと叩きこむと、身体を僅かに折り曲げ傾けた。

少しでも殺到する石に当たらぬようにする工夫である。

やや半身となった彼は、脇差しを鞘ごと帯から引き抜き、

自分の元へと降る石礫を鞘で的確に払っていく。


 忠正ならば、矢であれば刃で切り払うことができる。

飛来する礫は矢よりも遅く捉えやすいが、しかし硬く重い石を切ることは危険を生む。

出来ないことはないが、刀が大小一揃えしかない今の状況ではあまりにも危険過ぎる。


 石礫を受けて鞘が軋む。受けとめずに流しているとはいえ、鞘は所詮木製だ。

内に収めた刀そのものに対する負担も強い。脇差しが壊れる前に到達する必要がある。

忠正は泥濘んだ土を、殊更強く踏み込んだ。


 進めば進むほど、礫の密度は増していく。

しかし、頬をかすめ、肩をかすめ、それでもを深く沈み込み、時に払って避けて行く。

密集するように生える木々は、こうなってはむしろ好都合。

忠正は木の幹を盾がわりに一挙に踏み込んだ。


 忠正の後方では咆哮を上げながら、アウグスタが大剣を盾代わりに吶喊(とっかん)していた。

光の魔法を使い爆発を起こしながら、大剣が礫を弾く。正に我武者羅な侵攻だ。

身体にかかる負担も気にせず、アウグスタの額は汗でまみれていた。


 いずれにせよ、両者は石礫を問題になどしていない。

それを見てか、また風が鳴動する。次いで、その魔法陣の半分が切り替わった。風の流れが変わる。


「次はなんだ!」


「分からん!」


 忠正の疑問は直後に氷解する。暴風が巻き起こったのだ。

まるで嵐のような強風が石を巻き上げてその軌道を変える。礫

の数は少なくなったものの、その見た目以上の厄介さがある。それは、


「軌道が見えん……!」


 いくら視界が多少開けたとはいえど、結局森林地帯であることは変わりない。

先ほどまでならばそれは利点であったが、今度はそれが逆転する。

風を利用して石礫が回りこんでくる。

それはつまり、木々に視界を遮られている石が横合いから飛び込んでくるということだ。

その密度を減らした、その見た目以上の厄介さがそこにある。

防ぐことに徹すればどうということはないが、これでは近づけない。


 しかし。


 ……負けるのか。己が。


 一瞬そんな言葉が彼の頭にちらついた。

だがそんなものは、この雨粒がもたらす気の迷いだと断じた。

ただ、負けられない。ただその信念だけが彼の足を動かした。


 それは無謀の二文字だ。だが、それでも。


 無謀のままに足を動かす。打ち払ったその衝撃で腕が痺れた。

鞘は軋み、思わず泥濘に足を取られかける。

均衡を崩した忠正の身体の横腹を礫のひとつが打ち据えた。


「が、ふ……っ!」


 一撃。ただの一撃だが、鎧を着込まぬ忠正にとっては身体に穴が開くような衝撃を与えた。

肺腑から息が吐き出され、一瞬意識が断絶する。

それでも意識は手放さない。負けられないというただその意志が彼の足を動かしていく。


 負けない。負けられない。ただそれだけだ。


「まだだ」


 しかし一度足を止めれば当然、攻撃はそこへと殺到する。

十を超える礫が忠正のもとへと飛来する。それを態勢を崩しながらなんとか避けるものの、

無茶な挙動であったために湿った土が足を引く。


 体を捻り、倒し、足で地面を蹴る。迫る礫を強引に避けるが、避けきれずに礫のうちの一つが背を打ち据えた。


 拙い、と心中で叫ぶ。距離は未だ五間(9メートル)は開いているだろう。

こうしてまごついているうちにも、大老魔木(グローガン)たちは速くはないながらも後ろへと後退し続けている。


 気持ちだけが逸る中、ひとつの礫の挙動を忠正の視界が捉えた。

この軌道は間違いなく頭を狙った一撃だ。


 足元が泥濘み力が篭もらない。

既に崩れきった態勢、それを立て直さんとしている今この時は、最も無防備な瞬間だった。

間違いなく、死ぬ。そういった直感が彼の背を貫いた。


 しかし。


「カノォ!」


 怒号が響いた。同時、彼の耳元を風が劈いた。


 アウグスタだ。アウグスタの風の魔法が迫る礫を弾き飛ばしたのだ。

振り返ると、彼はこちらを真っ直ぐに見据えて、


「征けェ、カノォ!」


 と叫んだ。忠正にはこちらの腕を信用しているように思えてならなかった。


 勝たなければ。


 そこでようやく忠正の彼の脳裏に別の言葉が浮かんだ。


 油に打ち粉、懐紙にパン。


 そうだ。その恩義すら果たせずに何の誓約が果たせようか、と。


 直後、彼の真芯を寒気とも熱気ともつかぬ何かが包み込んだ。


「お、」


 それを受けて彼の喉元から何かがせり上がる。吐き気ではない。怖れではない。

何か熱いものがこみ上げる。


「おぉぉっ!」

 それは叫びだ。彼の喉元よりかつてないほどの裂帛が吐き出された。

吐き出し、彼は疾走した。それはまるで獣のような猛進だ。


 最早帰ることの出来ぬ郷愁の念か。


 負けられぬという意地のためか。


 或いはこの異世界で受けた恩義に報いるためか。


 いずれでもある。そしていずれでもない。

喉からは熱い何かがこみ上げていたが、その心根は不思議と冷えている。

アウグスタの働きで態勢を立て直した忠正は、一心不乱に足を動かした。


 かつてない速度の疾走は対手に戸惑いをもたらした。

礫の狙いが逸れて、僅かに届いたそれを脇差しで払い落とす。

無限にも感じられた五間は、瞬く間に詰められていった。


四間、アウグスタの快哉が耳を打つ。


三間、正面から打ち出される礫を、横飛に避ける。


二間、大老魔木(グローガン)の嘆きめいた声が響く。


一間。そうして先頭の大老魔木(グローガン)の、その間近へと喰らいついた。


 掲げたままの脇差しを、鞘に入れたままに叩きつける。

正に枯れ木を割るような感触が手に返った。

風が鳴動するが、しかし密着したこの距離では背後に展開した魔法陣から石を放つことはできはしまい。

苦し紛れに枝を振り回すが、抜き払った脇差しによってそれを断たれた。

次いで、忠正はその刃を空洞に差し込んだ。ここを目か口かと過程するならば、その頭上は脳である。

脳を断たれて生きているものは居ないだろう。


 だが止まらなかった。大老魔木は頭と思しき部分を貫かれようと止まることはなかった。

振り乱した枝が強かに忠正の肩を強打した。


 忠正の顔が苦痛に歪むが、今度は動揺などしなかった。


 ……突いて殺せぬならば断って殺すまで。


 至極当然の理屈だ。素早く脇差しを手放して、打たれた左腕で腰の刀を支えた。

肩を打たれたばかりで、力は強く入らない。

ならばこれしかないと、忠正の白刃が袈裟に閃いた。


 足、腰、そして腕。これらの運動により一拍子で斬撃を繰り出す業。いわゆる抜刀術である。


 片手打ちながらも、その速度の程は大老魔木の枝よりも遥かに鋭かった。


 一刀のもとに切り倒され、湿った音を立てながら倒れ伏した。

じくじくと、まるで油のようなものを垂れ流しながら大老魔木が沈黙した。


「先ずは一つ」


 忠正が冷静に告げる。攻勢に回ると厄介だが、外皮は今までのいずれよりも断ちやすい。

忠正のその一閃に恐れを成したか、残ったものが魔法陣を忠正へと向け後退った。

しかし、内一匹を、


「ならばこれで二ぁつ!」


 横から回り込んだアウグスタが断ち割った。

苦し紛れに放った石礫がアウグスタの身体を強かに打ち据えるが、鎧で硬く守られた彼に対してでは、致命傷には至らない。


 忠正は残った最後の大老魔木(グローガン)を討ち果たさんと疾走した。

距離にして二間(3.6メートル)。最早礫は打たせぬと踏み込んだ。


 敵は目前。眼前に礫は無し。忠正は勝利を確信して白刃を振り下ろし、


 それと同時に、忠正は足元に魔法陣が展開していることに気がついた。


「な、に……!」


 大老魔木(グローガン)を両断すると同時に、雷が忠正の全身を焼いた。


七話更新しました。

物語はまだまだ始まったばかり。

これからもお付き合いいただければ幸いです。

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