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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

世界は、残酷だ

イノチゴイ

作者:
掲載日:2013/05/24

安寧の地なんて、もはや存在しない。


「い、いやぁッ…やめて、やめて!!!し、死にたくなッ……」

バキッと、骨が折れる音が聞こえた。

続いて、ビキビキビキと耳を塞ぎたくなる音。それに混じるように、悲鳴が聞こえる。


やがて、しんと辺りが静まりかえり、隠していた身体を少し乗りだし、状況を把握しようと試みた。


見た途端、胃袋のものが出てきそうになって、抑えた。

そこには、先ほどまで悲鳴をあげていた人間の肉片と、砕け散った骨、そして飛び出た内蔵。そして、それらを包み込むように溜まる血。


ピシャッと血溜まりを踏む音が聞こえて、体を硬直させた。


ソレは人間ではない。かといって、肉食の獣でもない。外見は半分人間、半分獣。

口の周りについた肉片を舐めとったソレは、フゥゥと息を吐いた。


ソレは、亜類と言われている。

人類を唯一食い荒らす生き物、一週間ほど前に急激に増殖した。人類はもう、ソレに勝てる手だてを持っていない。人類の知恵も、武器も、亜類には太刀打ちできなかった。


そして、皆食われた。


亜類がこちらを向く。

すっと生きた心地が退いていった。頭が冷たく、体も凍ったように動かない。


逃げろ、そう思ったが、ふと思う。

どこへ?

もう、安寧の地なんて存在しないのに。平和な場所なんて、もうない。

亜類のせいで、人類の世界は消える。


そこで、ああ、と思い返す。

違う、変わってない。

よく考えろ、何も変わってなんかないんだ。

世界はとうに、このように―――弱肉強食の世界になっていた。ただ、人類がてっぺんにいただけ。そして、てっぺんが変わっただけ。


同じだ、亜類と。

同じように、家畜を食ってきた。命を奪ってきた。世界は何も、変わっちゃいない。


そして俺は、獣のような手に肩を掴まれて―――・・



そう。


世界はいつも、残酷だ。

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