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~Samon Hearts~  作者: 厄猫
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第1話 「幻想世界からの誘い」

人々が寝静まる深夜。

そこが俺の”仕事場”だった。

なんてことのない日常に身を投じていた俺に、謎の”声”と、

何かの”予兆”が訪れる。

 悪夢はいつもこんな光景から始まる。

燃え盛る炎に、焦げた匂い。

どこを見ても、瞳に写るのは赤、赤、赤…。

見上げれば、真っ黒な夜空と、大きな十字架。

そして、下に視線を落とせば、そこには───




「ハッ…ハッ…ハッ…」

深夜の静まり返った路地裏を、1人の男が必死になって駆けていた。

時々躓き、転んでもすぐに立ち上がって駆ける。

どこまでも無様で、どこまでも必死な走り。

男は決して貧しい身分の人間ではない。むしろ上等なスーツを着ている辺り、その辺の人間よりはよっぽど満足な暮らしをしている部類の人間だ。

では、なぜそんな人間が、こんな深夜に、路地裏を、無様にも駆け抜けているのか。

…無理も無いだろう。なぜなら───

ガシャァン!!

「アガッ!?」

再び躓き、その場に倒れ伏す。

どうやらもう立ち上がる力も残っていないのか、男はよろよろと壁にもたれ掛かると、荒い呼吸を繰り返し始めた。

「ハァ…ハァ…ハァ…。…こ…ここま、で…くれ…ば…だ、大丈、夫…か…」

男は荒い息を吐きながらも、そんな事を呟いた。

そう、男は”追われている”のである。

捕まれば殺される。”そういう類の人間”に、だ。

「と、とにかく…早くこの街を出───」

男がよろよろと立ち上がり、また駆け出そうとしたときだった。

「そいつは困るなぁ」

「!!??」

月明かりの届かない、漆黒の闇が支配する路地裏に、違う男の声が響き渡った。

男はその声にビクリ、と反応すると、恐怖に歪んだ表情ながらもゆっくりと振り向いた…。

「アンタをらねぇと、俺が殺されるかもしれねぇんだよ」

───僅かに差し込んだ月明かりは、黒いコートに黒い帽子、そして真っ赤に染まった小さな十字架を首に掛けた若い男の姿を映し出した…───




「アンタを殺らねぇと、俺が殺されるかもしれねぇんだよ」

”俺”はゆっくりと目の前の男に近づいていく。

「や…やめろ…来るな!!」

目の前の男は這いずりながらも逃げようとする。

「無様だな~お前。そこまでして死にたくないならさあ…」

俺は足に着けている短剣を抜き取り…

ドスッ!

「アガァァァァァァァァ…」

逃げる男の足目掛けて投げつけた。

短剣は男の太股に突き刺さり、男は痛みにもがく。

「お前が悪いんだぜ? 事情は知らねぇが、ヤバい連中に目ェ付けられるような事すっから…」

俺はこの男がなんで殺されなければならないのかを知らない。

必要なら聞くこともあっただろうが、ただ”殺せ”と言われたから殺すだけだ。

「お…お前、”雇われ”なんだろ!? 頼むっ! 助けてくれ!! 金ならあいつらの倍払うから…!」

男はそこまでして生き永らえたいのか、俺に取引を持ちかけようとする。

俺はそんな男にため息を1つ吐くと、肩を竦めて

「あのなぁ…。俺は確かに”雇われ”だけどな、雇われる相手は選ぶぜ?」

俺は反対側の足に着けていた短剣を引き抜く。

「今ここでテメーに雇われたところで、お前の都合のいい駒にされて飼い殺されんのがオチだろーが」

俺は何の躊躇いも無く男の心臓に短剣を突き刺した。

「カッ…! ヒッ…!!」

男はその胸から鮮血を噴出すと、掠れた息を2、3吐き出して息絶えた。


「よ…い…しょっと」

俺は男の死体から短剣を引き抜く。

血を拭い去り、再び足に着ける。

「お仕事完了…と」

俺はポケットから携帯電話を取り出すと、今回の依頼主クライアントに連絡した。

「俺だ。目標ターゲットは間違いなく始末したぜ。何なら首を持って行ってやろうか?」

俺は受話器の向こうの人物に報告する。

『…その必要はない。既にこちらでも確認した』

「ああ、あのちょこまかついて来てる奴ら、やっぱアンタの差し金か」

俺はすぐ近くのビルの屋上を見上げる。

人影が何人か見えた。もう隠れる気も無いらしい。

『流石だな。こちらの監視に気付いていたとは』

「いやいや、俺もこれで飯を食ってるからねぇ」

俺はカラカラと笑って言う。

『…ご苦労だった。報酬は既に送ってある』

「ハイハイ、毎度どーも。またよろしく頼むぜ」

そんな会話を2、3交わして、電話を切った。

屋上の人影は、いつの間にやら消えていた。


 俺は簡単に言うと”便利屋”だ。

金さえ払えばなんでもやる。…もちろん最初からこんなヤバい仕事ばっかりだったわけじゃない。

最初こそもっと良心的な依頼も数多く来ていたが、こういったヤバい仕事もこなしているうちに噂は広がり、次第に良心的な依頼が来なくなっていった。

今じゃこんなヤバい仕事専門みたいになっている。…別に専門というわけじゃないが。

まあ俺としてはこっちの方が実入りが良いし、別段困ることはないのだが。

「ただいま~っと…」

誰もいない”家”兼”店”に帰ってくる。

机の上にはアタッシュケースが置いてあった。

俺はそれを開く。中には多額の札束がギッシリ。

「うん、確かに」

金額を確認すると、俺はそれを床板の下にある隠し金庫に放り込んでいった。

一度に全額盗まれるわけにもいかないので、一部は宝石に変えたり、別の金庫に隠したりしている。

「えっと、今月はこれで終わりだっけか…?」

ひとしきり作業が終わると、俺は椅子に腰掛けて手帳を見る。

今のところ仕事の予定はないようだ。

「久しぶりの休日だ~…」

明日は久しぶりにバーにでも顔を出してみようか…。

そんなことを考えながら、俺は床に就くのだった…。




 バーからの帰り道、人気の無い寂れたスラム街を歩いていた時のことだった。

「んあ?」

静まり返った夜道に感じた殺気。

俺はそれを反射的にかわす、と…。

ビュオ!

「うぉっと!?」

さっきまで俺がいた位置に短剣の切っ先。

俺が距離をとると、それを取り囲むように数人の男が現れた。

「オイオイ、俺は男に好かれる趣味はないんだけどな?」

”ヤバい仕事”を引き受けるようになって変わったことが1つ。

それは、こうやって頻繁に俺も命を狙われるようになったことだ。

まあ大方…昨日始末した男のバックの組織の差し金なんだろうが…。

(俺のことよく知ってる相手なら、こんなバカな真似はしねぇよなぁ…)

俺は割りと裏からの評判が良い。…別に喜んでいいことでもないが。

最初こそ毎日のように命を狙われ、何百人とそういう奴を相手にしてきたのだ。

そいつらはどうなったのかって? …俺が生きてるんだから言うまでもないよな?

まあ、そんなわけだから、俺のことをよく知ってる奴らなら”刺客を送るだけ戦力の無駄”と考えるのである。

こんな風に襲ってくるのは、俺のことを知らないのか、あるいはよほど血迷ってるのか…。

「まあ、何にせよ…」

男たちはそれぞれの獲物を取り出す。

「タダじゃ帰してくれそうにねぇな」

俺はゆっくりと身構えた…。

そんな俺に対し、男たちは一度距離をとってそれぞれの”獲物”を構える。

(ナイフ2…鎖鎌1…棒1…)

俺は構えたまま、即座に男たちの装備を確認する。

(歩道に消火栓…壊れかけた看板…)

一通り装備を見終えたら、次は周りの状況を確認する。

そんなことをやっているうちに

「…ッ!」

ナイフの男が襲い掛かってきた。

「お…っと」

俺はそれを難なくかわす。

背後から棒。

「ッ…!」

身体を捻ってそれを避けると、俺は横から男の棒を掴んだ。

「!?」

獲物を掴まれて若干動揺した男の顔面に肘を入れる。

「ガフッ!!」

男は痛みに棒を放してしまう。

目の前にもう1人のナイフの男。

「あっぶねぇなぁ!!」

ドガァ!!

俺は男から奪い取った棒でナイフの男の顔面を横から殴りつけた。

「お前も、だ!」

そのままの勢いで身体を捻り、さっきまで棒を持っていた男の顔面にも横から打撃を加える。

ド…グ…

スイングの遠心力を乗せた重い一撃に、男は倒れて動かなくなった。

「まず1人…と!?」

棒を持っている方の腕を鎖鎌の鎖で縛られる。

と、同時に左右からナイフの男。

俺はなんとか鎖で体制を崩されないように力を入れると、空いている方の手で太股から短剣を抜き、片方の男の”腕”に投げつけた。

ザク…!

男は突然訪れた腕の痛みに持っていたナイフを落としそうになる。

俺はそれを蹴り上げ、そのまま後ろに倒れこんだ。

ドスゥ!

俺が突然倒れこんだことに対応できなかったのか、もう片方の男はそのままの勢いでもう1人を刺してしまう。

「あーあ。俺はしらねー、ぞっと!!」

俺は味方を刺し殺してしまった哀れな男を足払いで転ばせ

「離れろよ!!」

持っている棒を持ち替え、鎖鎌の男の近くにあった消火栓へと思いっきり投げつける。

ガッ! ブシャアァァァァァァ!!

消火栓は棒の衝撃で凹み、水が勢いよく飛び出してきた。

突然水を浴びることとなり、俺の縛る鎖が緩くなる。

「今だ…!」

俺は拘束されている腕を思いっきり引っ張り、男はそれに引きずられてこちらへ寄って来る。

その男の顔面に拳を入れ、鎖鎌を持っている腕に肘を入れる。

男は鎖鎌を手放し、顔面の衝撃に一歩引く。

「3人目、だ!」

俺はさっき蹴り上げたナイフをキャッチすると、そのまま男の喉下に突き立てた。

「カ…」

真っ赤な鮮血を噴出して息絶える男。

「お前でラストか…」

俺は即座に振り返ると、さっき奪い取った鎖鎌で最後の男を拘束した。

そしてもう一本の短剣を抜き取り、頭上の看板の留め金目掛けて投げつける。

「…バイバーイ」

錆付いて劣化した留め金はそれだけで壊れ、それを支えていた看板は落下。男はその下敷きになった。

「おおう、スプラッタ…」

気分悪くなるから見ないでおこう…。


「さて…死体はどうしたものか…」

もうすぐ夜が明ける。時間的な意味でも死体の数的な意味でも流石に後始末は完璧にはできなさそうだ。

俺を襲ったこいつらがどこの差し金なのかは後々調べるとして…どうしたものか。

「とりあえず目立たない位置に移動させて───ッ!?」

俺がそう思って一歩踏み出そうとした時だった。


───………え……た…よ…───


不意に声のようなものが響く。

耳から聞いてるというよりは…頭の中に直接響いてくるような…。

「幻…聴…か?」


───………が…と………か…の……よ…───


「ぐ…っ!?」

幻聴というにははっきりと聞こえてくる。

これは…女の声、か…?


───…の…を………へ………せ…………───


「く…そ…っ!」

なんなんだよ、一体!?


───…ん……わ……と…───


やがて、その声は薄らぎ、そして何事も無かったかのように消えてしまっていた。

「何だってんだよ…まったく…」

疲れてるんだろうか…?

「とにかく、後始末を…」

俺は早々に痕跡を消し去ると、足早に帰路に就いたのだった…。

戦闘シーンって難しいなぁ…。

読みにくかったらスミマセン。

感想お待ちしております。

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