第10話 「初仕事」
何はともあれ、俺を含めた3人は目的地へ向けて出発する。
影の異形はこの世界にとっての”脅威”。その存在に、俺も自然と身を引き締める。
…が、その前に出くわしたトラブル。
…俺の”初仕事”は、もう少し先になるらしい。
「この乾パンうめぇ」
俺はもしゃもしゃと袋詰めの乾パンを食いながら呟いた。
レフィリナに変な言いがかりをつけられた後、俺は城下のとあるパン屋にてこの乾パンを発見した。
保存食の基本と言えば”乾燥”だ。
…一つ欠点があるとすれば、保存食は長持ちする分、大して美味くないという点。
しかし、この乾パンはなかなかに美味い。もちろん普段の食事と比べると劣るが、”保存食”という分類ならば十分だろう。
乾パンにしてはそこまで硬くなく、仄かな甘さが飽きない。
…うん。これは向こうよりずっと美味いと思う。
これが売っていたパン屋はそこそこ繁盛していたのだが、この乾パンは袋詰めで山ほど売れ残っていた。
「こんなに美味いんだから、もっと売れてるかとも思うんだがなぁ…」
…まぁ、パン屋に来て乾パン買って帰る物好きはあまりいないのかもしれない。
そのおかげで、俺はこうして買いだめが出来たのだから良しとしよう。
値段も安かったし、いい買い物をした。
………。
……。
…。
「シン様、準備はもうよろしいので?」
部屋でくつろぐ俺を見て、リーゼが訊ねてくる。
「食料も水も準備したし。もう大丈夫だな。後は明日に備えるだけだ」
俺はそう言うと、手をヒラヒラとさせる。
「緊張は…してないですよね…?」
「ん…まぁな」
いつもと同じ調子の俺に対して、リーゼはどこか不安そうだ。
…俺より不安そうにされてもなぁ。
俺は俯くリーゼの頭にポン、と手を乗せてやる。
「俺は身体張るのは慣れてるんだよ。心配すんなって」
そう言って、笑みを浮かべる。
それを見たリーゼは一瞬目を輝かせたが、すぐにまた不安そうに俯く。
「…どうした?」
「シン様は…私が初めてお仕えした方ですので…何かあったらと思うと…」
「…初めて、って…」
今までずっと王宮勤めだったってか?
…やっぱ俺、落ちこぼれを押し付けられたな。とは、口が裂けても言えなかった。
実際、全く不安じゃない。と言えば嘘になるのだ。
何せ明日はこっちでの”初仕事”。今までの常識が一切通じない以上、何が起こるか予想も出来ない。
だからこそ、俺は俺以上に不安になってくれているコイツの存在が少し嬉しくもあったりする。
「…ま、ちゃんと生きて帰ってくるから、部屋の掃除とかは任せたぞ?」
俺はそう言って再び笑顔を浮かべる。
…さっさと仕事を済ませて、こいつを安心させてやらないとな…。
そんなことを、俺は考えていたのだった…。
………。
……。
…。
「お、おはようさん!」
「おう。随分早いな?」
てっきり俺が一番かと思っていたのに、早朝の中庭───その一角の野外訓練場には、既にアゼルの姿があった。
「当然だ! 毎日こうして早朝に身体を動かす。これがオレの日課だからな!」
「なんともまぁ、熱心な…」
ドスッ!!
手に持っているのは…槍か? それを練習用のカカシに勢い良く突き刺すアゼル。
第一印象から想像していたが、やっぱりコイツは熱血タイプらしい。
「オレは日課だが…オマエも訓練か?」
「いんや。俺はいつも通り起きただけだよ」
「早起きなんだな!」
ブゥン!
そう言いながら槍を振り回すアゼル。
…動きに無駄がない。かなりの実力者だ。
毎日早朝訓練をやっていると言ったが、そういった訓練と、実戦での経験。その両方のバランスが取れている。
まさに典型的な”戦士”なのだろう。
「緊張してるのか?」
「まさか」
向こうは俺に気を遣っているのかもしれないが、リーゼにも言ったように俺は全く緊張なんていていない。
「仕事柄、戦場には慣れてるからな。いちいち緊張なんてしねぇよ」
…何度も死に掛けたら肝も据わる。
ブゥン!!
「そうか! …せっかくだから、訓練に付き合ってくれねぇかな? 2人の方が捗ると思うんだ」
「ん…まぁ、身体を動かすのもいいかもな」
特に断る理由もなかったので同意する。
それを聞いたアゼルは笑顔を浮かべると
「よし! じゃあ早速始めようぜ!」
そう言って、広場の方へと歩いていった…。
………。
……。
…。
「ホントに何も持たなくていいのか?」
訓練場の一角にある広場。そこで、槍を構えるアゼルと、素手で身構える俺が対峙していた。
「いつも通りで戦うなら、俺はこれが一番相応しいからな」
武器は現地調達。それはこの世界でも変わらない。
それに俺には太股の短剣と、腕輪のワイヤーがある。
それを使うならば、まったく素手というわけでもない。
俺の答えに納得したのか、アゼルは一つ息を吐くと、姿勢を低く身構えて
「そっか…。じゃあ、いくぞ!」
叫び、突っ込んできた。
ブォン!!
「ッ…!」
さっき見たときに感じていたが、速い。
一瞬で距離を詰め、突き出された槍を身体を捻ってかわす。
そのまま一旦後ろに跳んで距離をとろうとする、と───
「逃がすか!」
ブゥン!!
「なっ…!?」
突きの動作から身体を捻り、槍が薙ぎ払われる。
槍のリーチならば、この距離でも届く…!
そう判断した俺は、後ろに倒れこんでそれを避ける。
「っ…!」
ヒュン!!
そのままの勢いで俺は脚を上げ、がら空きの顎を蹴り上げようとした。
「くッ…!」
…が、それは首を後ろに逸らされて避けられる。
俺は蹴りの勢いを維持したまま数度後転。ある程度距離が取れた後、即座に身構える。
「やっぱやるなぁ。今の薙ぎ払いは手応えがあったんだが」
残念そうだが、アゼルはどこか嬉しそうに言った。
「悪いね、こっちも場数が違うんだよ」
…とは言え、コイツはかなりの強敵だ。
槍の弱点は接近戦である。
何せ槍の刃は先端にしか付いていないのだ。それを回避して懐に入ってしまえばどうしようもなくなってしまう。
…問題は、この男には懐に入る隙が少ないという事。
槍の弱点が接近戦だと言う事をしっかりと理解して、立ち回りや攻めも基本に忠実と言える。
基本に忠実だからこそ、付け入る隙が少ない。
…全く持って、侮れない。
(…仕方ない、俺も俺なりの戦い方でやらせてもらうか)
俺は一息吐くと、太股の短剣に手を掛ける。
「…」
向こうもその動きに気付き、警戒している。
…基本に忠実な奴を崩す方法は…───
「シッ…!」
ヒュン!
俺は短剣とワイヤーを連結させ、アゼルに投げつける。
「…と…!」
ガキィン!
真正面からだ、突然とはいえ、難なく防御される。
「…!」
ヒュッ! ヒュッ!
短剣が弾かれる前に俺は駆け出し、足元に転がる石を2,3投げつける。
「なっ…っ…!」
カン! カン!
それは流石に予想外だったのだろう。アゼルは若干うろたえながらも槍で石を弾く。
「ッ…!」
ヒュッ! ビュン!!
それを確認した俺は、大きく周りを回るように走り、石と混ぜて回収した短剣を再び投げつける。
「しまっ…くっ…!!」
意表を突かれてばかりのアゼルだったが、しっかりと短剣に反応して弾いてくる。
「…(ニヤ)」
「!? …え───!?」
…パキン。 ボフ!!
突然不適に笑った俺に動揺したアゼル。…が、直後にそれとは違う意味で動揺する事になった。
アゼルが短剣と一緒に弾いた”何か”。
それが弾かれた衝撃で割れ、中から白い粉が周囲に煙のように立ち込めたのだ。
「ゲホッ…ゲホッ…なんだ…コレ…!?」
いきなり立ち込めた煙に咳き込むアゼル。
…別に煙は有毒とかではないぞ?。
俺はその隙に短剣を回収し、アゼルに向かって駆け出す。
「ッ…!? させるか…!」
ビュン!!
「くっ…!」
流石にこの程度で無力化できるわけもなく、アゼルはこちらの気配を察して的確に槍を突き出してくる。
…だが、その突きはどこか曖昧で、確実にこちらを狙えているものでもなかった。
俺は左右に大きく揺れながらそれをかわし、槍を突き出したアゼルの右腕を掴む、
「…掴まえた!」
「なっ───」
煙で視界も悪く、突然のことに動揺して隙が生まれる。
───その一瞬が、命取りになる。
ガッ!
「痛っ…!」
俺は短剣の柄で右手首を殴りつける。
隙だらけのアゼルはそれだけで槍を持つ手を緩めてしまう。
俺はその隙に槍を掴み、手を捻ってアゼルから槍を奪い取った。
「ちょ───」
ドン!
武器を奪われ、さらに動揺するアゼルの足を払い、突き飛ばす。
バランスを崩し、後方に倒れこんだアゼルの喉元に、俺はやりの切っ先を突きつけていた。
「…勝負あり」
「あ…?」
あまりにも突然だったので、アゼルは未だポカンと口を開けていた。
「あ…あ~…。そっか。…そうだな」
ハハハ…と、力なく笑うアゼルを見て、俺は手を差し伸べてやる。
「流石に強いな。万全じゃなかったら勝てなかった」
「お互い様だろ。…闘技場で見たときに、”そういう戦い方”をするってわかってたんだがなぁ…」
アゼルは頭を掻きながら、俺の手に掴まって立ち上がる。
「この粉、なんだったんだ?」
アゼルは周囲に散らばっている白い粉を見ながら問う。
「小麦粉だよ。今日パン屋でついでに買った」
「…あー。なるほど」
…貴重だったんだが、ついつい本気を出して使ってしまった。
先ほど俺が石に混ぜて投げたのは、薄いガラス製の玉。
これは俺が向こうで使っていた物だ。
中に粉状のものを詰めて、煙玉として使用する。今日、ベルトのケースに入っていたいくつかに小麦粉を詰めておいたのだった。
…こっちじゃ玉の補充が出来ないから、かなりの貴重品である。
「一本とられたなぁ。オレもまだまだって事か」
そう言って爽やかに笑うアゼル。
…勝負は勝負。こうして勝ち負けに関係なく嫌味のない奴は嫌いじゃない。
「今回は油断したが、今度は負けないからな!」
そう言って手を差し出す。
その意味を理解した俺は、逆の手を差し出して
「ああ、次も手加減なしだ」
固い握手を交わしたのだった…。
………。
……。
…。
「全員揃ったようだな」
やがて集合の時間となり、俺達は王宮の門前に集まっていた。
「王女自らが見送りとは、またご大層だな」
エンフェルとレフィリナまでいるし…。
「…」
「チッ…」
レフィリナの奴は相変わらずめっちゃこっち睨んでるし!
「シン様の初陣ですからね。応援しておりますわ」
「初陣ってお前…物騒だなぁ」
…まぁ確かに、危険なのには変わりないか。
「…じゃ、行って来るぜ」
「ちゃっちゃと終わらせてくるから。期待して待ってなさい!」
俺達3人を乗せた馬車はゆっくりと動き出し、3人に見送られて、俺達はランブルグを出発した───
………。
……。
…。
この世界には電車も車も存在しない。
なので陸の主な移動手段は馬車となる。
…中には訓練させた魔物等に引かせる車もあるらしいが、それらは貴重で、少なくともこの大陸では数が少ないらしい。
一応王宮にはそういう車も用意されているらしいが、今回は目的地が近い事もあって、馬車での移動となった。
「馬車で2日か…長旅だな…」
地図で目的地の場所を確認していたが、向こうなら1日もかからないような距離だ。
魔術という存在に軽くながらも触れてきたが、こういう点においては苦労するあたり、やっぱり魔術文明も機械文明もどっちもどっちなんだと思う。
「長旅って…アンタ。異界ってのはそんなにヤワな世界なワケ?」
俺の呟きに反応するユミル。
「…航行中の船の船底に張り付いていたり。野生の猛獣の群れと丸腰で戦ったり。断崖絶壁を何も持たずに登ったり。…それはもうヤワな生活やってたよ」
ニヤリと笑いながら言ってやる。
…無論、ちょっとした嫌味返しなワケだが、それを聞いたユミルは
「アンタ…よく今まで生きてこられたわね…」
と、本気で心配していた。
…うん。言ってて自分でもそう思うよ。まったくね。
………。
……。
…。
「シン。ちょっといいか?」
馬車に揺られて数時間…といったところ。アゼルが話しかけてきた。
「なんだ?」
「オマエならもう予習済みかもしれないが…影の異形について話しておこうと思って」
…ああ。なるほど。
アゼルの言うように、”影の異形”についてはある程度予習済みだが、実際に何度か戦った事があるであろう人間に話を聞いておくのは悪くないだろう。
「出来るだけ詳しく頼む。これに関しては俺もどうなるか予想できないからな」
………。
……。
…。
「まず、影の異形ってのは文字通り”影”なんだ。影属性のマナで身体全体が構成されてる」
俺が頼むと、アゼルは一息吐いて話し始めた。
「普通の武器は普段の状態だとすり抜けてしまう。つまり物理攻撃は全く効かないわけだな」
「マナを使ったもの…魔術を直接ぶつければいいんだよな?」
これについては知っている。
実体を持たないが故に、影の異形は魔術が扱えない人間にとっては脅威でしかないだろうな。
俺の言葉にアゼルは頷く。
「ただ。影属性は”反属性”を持たない9番目の属性。今のところ有効な属性魔術が存在しない」
”反属性”というのは、確か守護神と破壊神が創った3対───そして、双神が持つ聖魔の属性の関係の事だ。
火と氷。水と雷。風と地。…そして聖と魔。
対になっている属性はお互いに有効なんだよな。
…で、影の異形が持つ影属性は、その対となる属性がない…と。
「有効じゃない属性でも倒せるけど…半端だと逆に吸収されて、その属性の耐性も付くわ。さらに、吸収したマナを影属性に変化させて強くなる…」
「つまり、影の異形相手には短期決戦の方がいいんだ。それも、最初から全力全開でな」
…半端に挑むと、返って相手をパワーアップさせちまうってことか…。
「物理攻撃はどうしても効かないのか?」
これに関しては俺は知らない。
影の異形については情報が少なすぎる。
何せ遭遇した人間がほとんど殺されているのだ。影の異形の起こす現象に関しても、それに巻き込まれて死んだんじゃ元も子もない。
「方法は…ない事もない」
「マジか」
物理攻撃なら吸収は出来ない。俺は魔術が使えない以上、それしか対抗する手段がないのだ。
俺は思わずアゼルに詰め寄る。
「マナを吸収するとき、影の異形はその瞬間だけ実体化するの。その時は武器が効くわ」
思わず後退するアゼルに代わって、ユミルが説明する。
「影の異形には核となる部分がある。そこを砕くのが一番だな」
核…心臓のようなものか。
影の異形にも急所がある。
…魔術が使えない以上、実体化は誰かに頼むしかないが、これならまだやりようがあるな。
「…あーあと一つ。魔力を纏わせる”魔具”なら、武器でも攻撃できるな」
”魔具”というのは確か、魔力の伝導率が高い武器、道具の事だ。
普通の武器等も魔力を纏わせる事が出来るが、それは微弱で時間がかかるらしい。
…たしか、この大陸じゃあまだまだ貴重なものだったっけか。
「一つ疑問に思ったんだが。心器って魔具の一種なのか?」
「いや、これはどちらかというと”魔器”に近いわね」
”魔器”というのは”魔具”と違って、個人の持つ魔力とは別にマナを吸収、貯蔵して使用できる物の事だ。
魔具と違って本人が魔術の心得がなくても使えるため、日常生活等にもこの技術が応用されている…らしい。
判りやすく例えるなら、”電気を自分で充電しなきゃいけない道具”が魔具で、”自動で電気を発電して使えるようになる道具”が魔器…なのかな?
「心器はその上位である”宝具”の類らしいけどな」
”宝具”は確か…人間が作れる最高位の武具の事だったか。
高い魔力に性能…それはまさに人間の”宝”だとか何とか。
その上に神々が作れるとされる”神具”ってのがあるらしいが…それはもう伝説上の存在だとか。
「…ていうか、エンフェルって実はすごい奴だったんだな…」
「そりゃあすごいよ。オマエを召喚したあの魔術も、魔方陣も、エンフェルが作ったんだから」
…”宝具”を創れる魔術や、異世界から人間を召喚する魔術。
どうやら俺が思っていた以上にエンフェルはすごい人物だったらしい。
「…話が逸れたが、とりあえずシンは影の異形相手に戦えそうにないなら下がってくれていいからな?」
…心器が使えない俺に気を遣ったのだろうが、それは愚問だな。
「バカ言うなっての。ちゃんと役に立ってやるさ。給料泥棒だなんて言われたくないんでね」
請けた仕事は完璧にこなす。それが俺のモットーだ。
………。
……。
…。
そして2日後。俺達を乗せた馬車は特に何事もなく目的地に到着しようとしていた。
「もうじきか…退屈だったなぁ…」
俺はそう言って大きく伸びをする。
馬車旅ってのは思っていた以上に退屈だ…。
ォォ…───ン
「…あん?」
「どうした?」
もうすぐ到着と言う頃、俺の反応に2人が視線をこちらに向ける。
「…」
俺はそれには答えず、聴覚に意識を集中させる。
ァァ…───!
「…村の方が騒がしい」
「え?」
俺の発言に、2人は不思議そうな声を上げた。
それも仕方ないだろう。なぜなら───
「空耳じゃないの? すぐ近くって言っても、村までもう少しあるわよ?」
そう。目的地はまだ少し先なのだ。
普通ならこの距離で騒がしさが聞こえるはずがない。
「…確かなのか?」
「ああ───」
俺が肯定しようとしたそのとき…───
ドオオォォ…───ォォン!
「「「!?」」」
何かが崩れるような大きな音。
今度はそれが、ここからでもはっきりと聞こえた。
「私、ちょっと見てくるね!」
村まであと少し。ユミルは馬車から飛び出して空高く飛んでいった。
「急いでくれ!!」
何も出来ない俺達は、馬車を急がせる他なかった…。
………。
……。
…。
「村の方から煙が上がってる! 影の異形じゃないけど…盗賊にでも襲われてるのかも!」
村の周辺。このまま突入するのは危険と判断した俺達は、そこで馬車を止めていた。
「盗賊か…。影の異形じゃないだけマシ…なのかな?」
「だが、どうするよ? このままじゃ村人が危ないぜ?」
ユミルから聞いた話によると、人数はおよそ20人前後。それなりの規模だが、どうということもない。
村人は黙って略奪に従っているので人質は今のところ無し。
…よし、やれる。
「2人は正面から突入して注目を集めてくれるか。村の中央で合流しよう」
「アンタはどうするのよ?」
「俺は2人が囮になってる間に裏手から侵入する。多分リーダーはそこだろうからな」
単純で簡単な作戦だが、これが一番確実だろう。
隠密行動なら慣れている俺が一番適任だろうしな。
「ちょっと。オイシイ所全部持っていくつもり!?」
俺の提案に、ユミルがそんな事を言う。
…んな事言ってる場合か…?
俺がそう言おうとすると───
「よせよユミル。今はそんな事言ってる場合じゃないだろ? そういう作戦ならシンが適任だと思うぜ?」
そう言って、アゼルがユミルを制した。
…アゼルは今朝の訓練で俺の戦い方を良く知っている。
それでそう判断してくれたんだろうな…。
「う…」
アゼルに制されて、ユミルは大人しくなった。
…流石にコイツも状況くらいはわかってくれているらしい。
「…じゃあ、2人とも。頼んだぞ」
俺はそう言って、林の中へと歩き出す。
「おう! 任せときな!」
「…しくじるんじゃないわよ!」
…2人の返事に、俺は手だけを上げて答えたのだった…。
~追加用語~
【神具】
カテゴリー:武具・道具
主な登場作品:全般
~概要~
”宝具”の上位に位置する神々の武具。
神帝、魔帝クラスの力を持つ者が想像できるとされており、”神々の戦乱”に用いられた武具は全て”神具”であったと言われている。
現在の技術での想像は不可能とされており、現存する物は伝説上の存在となっている。
【宝具】
カテゴリー:武具・道具
主な登場作品:全般
~概要~
人間が想像できる最上位の魔具、または魔器。
非常に高い魔術伝道率。そして武具そのものとしても洗練されており、当然ながら想像には相応の素材と技術が要求される。
その想像の困難さから貴重品である事は言うまでも無いが、同時にその性能を最大限に生かせる担い手も少なく、宝具の所有者は世界でも数えるほどしかいないと言われている。
【魔器】
カテゴリー:武具・道具
主な登場作品:全般
~概要~
魔力───マナを集め、魔術現象を発生させる道具。
魔具とは違い、持ち主がその瞬間に魔力を流し込む必要はなく、自動的に周囲のマナを吸収するものや、自身でマナを生み出し、補充するものがある。
魔術が扱えない者でも使用が容易であり、この技術は日用品等にも応用されている。
【魔具】
カテゴリー:武具・道具
主な登場作品:全般
~概要~
魔力───マナを持ち主が流し込む事によって魔術現象を引き起こす物。
または魔術の伝導率が極めて高い物のこと。
一般的な武・道具は魔力の伝導率が低く、その効率が悪い。
それに対して魔具は、ほぼ一瞬で魔力を循環させる事が出来、中には魔術現象を発生させる事が出来るものもある。
当然ながら作製には特殊な素材が必要であり、素材、完成品共に貴重なものである。
表と裏に続いてこちらでも書き方を変えてみました。
…読みやすい…とは思うのですが、なかなかに今までと違うので意識するのが大変だったりしてます。
書き方についての感想を頂けたら嬉しいです。