序章 「”死に抗った者達の物語”」
…おや、またお会いしましたね。初めまして、と言った方がよろしいでしょうか。
それとも、ここに案内されてきましたか?
はたまた、私とは初対面でしたでしょうか? …まあいいでしょう。
…さて、今回私がお話致しますのは、まだ彼の地が”幻想”とされていた頃のお話。
彼の地より呼び出され、数多の人々の期待を背負いて現れたのは”異界の使者”でした。
ですが…どうやら彼は何事においても様々な意味で各々の想像を遥かに超えた存在のようです。
これは、どんな過酷な運命の最中にあっても、決して”死”に屈する事無く、抗い続けた者達の物語。
どうぞ、お楽しみくださいませ。
…それでは、参りましょうか。
………。
……。
…。
”異世界”。それは人が誰しも一度は夢見る世界だろう。
科学が発達した現代世界とは違い、剣と魔法が発達し、空を竜が飛ぶ。
そんな、ゲームだかマンガだかの中でしか見られないような世界を、誰もが一度は夢見るはずだ。
俺は…その辺はよく覚えていない。
ただ、そういった”夢物語”は大人になっていく内に自然と消えていくものだ。
世の中の厳しさ、現実の空虚さを知り、自身が抱いた幻想を自然と捨て去っていく。
大人になるってのはそういうことだと思ってる。
ガキの頃どうだったかは覚えちゃいないが、少なくとも俺はそうやって大人になっていったクチだ。
科学が発達し、ありとあらゆる事象が解明できてしまうこの世の中、ある意味それもまた”魔法”の一種といえるのかもしれない。
───あるいは…そんな”万物の事象すら解明できてしまう科学”なら、いつか遠い未来に”そういう世界”へと人々を送ることができるのかもしれない。
…まあ、そんなことを話しても仕方が無い。仮に科学の発展でそんなことができてしまっても、俺はその頃には死んじまってるだろうしな。
大体、そんな理屈ばっかりでわけのわからないことを俺がいくら考えようが、世界ってのはいつも一定のペースで廻り続けてるだけだ。
…じゃあ何でこんなこと考えてるのかって?
そりゃあお前…”こんな状況”に陥れば誰だって一度は考えるはずさ。
「…」
俺は周囲に視線を送る。
周囲には俺を”奇異”とか、”疑心”とか、”好奇心”の瞳で見てる人、人、人。
そのどれもが、俺の知る限りでは”コスプレ”と称されてもおかしくないような服を着ている。
「…」
背後には”巨大な城”。
「…」
足元には、巨大な石畳の祭壇のようなもの、そしてそこに描かれている”魔方陣らしきもの”。
「…」
「…よくぞいらっしゃいました。”代表者様”」
言葉を失っている俺に一歩歩み出る少女。
服装は当然だが、その長い髪から覗く両耳は…明らかな程”鋭く尖っている”。
「…」
………。
……。
…。
ここどこだよ!?
ここから話が始まります。
ジャンル的には”異世界召喚モノ”でしょうか。
少しずつ更新していきたいと思います。