第四十七話『簒奪帝の復活とオールバンク』
「すまなかったな......」
そう目を潤ませたリゼルダインが立ち上がる。
「ルシウスの子孫だったのか」
「ああ、あの男とヴェルザグに利用され、一族はみな苦しみ続けた...... 民も両親も妹も...... やつらの生け贄となった」
「それで復讐を......」
イオリシアが言葉を掛けると、リゼルダインはうなづく。
「ああ、やつは不死、並大抵の攻撃は意味をなさない。 宝玉を取り込んだ宝玉の力ならばやつを消せると思った」
「それで宝玉を...... ヴェルザグはなぜ宝玉を集めていた」
「やつはかつて、何かをしようとして失敗したらしい。 それでいざというときのための宝玉を残し、ルシウスや他の手駒をつくり手に入れようとしていた」
(失敗...... 一体何をしようとしたんだ。 なぜ、今になって動き出した。 偶然なのか......)
「罪なら償おう...... もう全てが終わった」
そうリゼルダインが何かから解き放たれたような顔をした。
その時。
抉られた場所が軋むような音がして空間が歪む。
「なっ!? 馬鹿な!」
その場所にチリのようなものが集まり、人の形をなしていく。 それはヴェルザグだった。
「クックック...... 無駄なことを」
「あの力で消え去らないだと!」
リゼルダインは剣を取り、その首に切りつける。
「くっ、切れない......」
「無駄だ...... お前が放った宝玉は我が力となった」
「なんだと!?」
「お前が何かを企んでいたことなど知っていた。 宝玉の事を教え、集めさせたのたのもそのためだ......」
そう言うと、顔がミイラのような老人の肌から、若くなっているように見える。
「どういうことだ!?」
「私が欲していたのは宝玉の効果ではない。 力のそのもの、この体は対価として力を奪われ続けていた。 その代わりにするものだ。 お前のおかげでもうすぐ私の目的が叶う」
リゼルダインは弾かれ地面に転がった。
「目的とはなんだ!?」
「我の目的はオールバンク......」
「なっ!?」
(オールバンクが!)
「我は全てを手に入れる。 そのために我はオールバンクを欲した」
「......なぜだ」
「あれはすべての欲を叶えるもの。 かつて四大国の王たちもそれぞれオールバンクによって欲を叶えた。 永遠を欲したルシウスは不死となった。 財を欲したベネウスは遺物を生んだ。力を欲したブラネスクはモンスターを作り上げた。 他よりも優性であることを願ったカーマインは魔法を...... すべては贄の果てだ」
「それが宝玉なのか......」
「ああそうだ、あの者たちは他の国を、自分たちの民を、家族を生け贄にオールバンクから宝玉を手に入れた」
「そしてお前も......」
「そうだ。 我は生まれたときより何も持たぬ奴隷だった。 そして苛烈な労働の果て死に直面したとき、オールバンクは現れた。 そして全てを捧げて力を得た【簒奪】《ユザープ》を手に入れてな......」
「簒奪...... だが、お前はこの世界を支配したんだろ」
「ああ、世界を支配しても我は、満たされなかった。 もっと、もっと、もっと欲しいと...... だからオールバンクを手に入れることにした」
「まさか、それで前の文明を......」
イオリシアは言葉を失う
「ああ捧げた。 多くの人、国、文明...... ほとんど捧げたが足りなかった。 足りない分、我の生命力を奪われ、不死だが、ここから動けなくなった...... だが!」
ヴェルザグの背筋がのび、肌のしわがなくなり瞳に爛々と光が宿る。
「だが、全てを払い終えた...... これでオールバンクは私のものだ! これで何もかもを手に入れられる!」
そうヴェルザグは歓喜に震えた笑みをこぼした。
「ふざけるな...... そんなことのために、我らの国は滅ぼされたのか!!」
リゼルダインが放った雷がヴェルザグを直撃する。
「簒奪......」
「馬鹿な! 魔法が」
「お前の魔法はもらい受けた......」
「がはっ......」
ヴェルザグから雷が放たれ、体から煙を出してリゼルダインは倒れた。
(こいつ、相手から奪えるのか。 それなら俺の契約も...... いや)
「さあ、そなたらを殺し、世界を再び我が物としよう......」
「イオリシア、隙を頼む......」
「はい」
──その凍える、白き息吹よ、あらゆるものをここにとどめよ──
イオリシアの魔法が放たれ、ヴェルザグの足元が凍る。
「無駄なことを......」
俺はヴェルザグの後ろに転移し、その体に触れた。
「なに......」
「契約!! がはっ!!」
ヴェルザグから雷が放たれ、俺は吹き飛ばされうずくまる。
「くっ......」
「無駄だといっていよう...... 我は全てを手に入れたのだ。 膨大な年月と苦痛を支払ってな」
ヴェルザグは勝ち誇るようにそう微笑んだ。




