第四十六話『遺跡の静寂と叫びの終焉』
遺跡に入る。 そこは無機質な壁がただ続いていた。
「なにもない......」
「かつて世界を支配した皇帝の遺跡にしては、あまりに簡素じゃないですか?」
レンドが首をかしげる。
「そうね。 確かに、財宝や何かが奪われても、普通は壁画などは残ってると思うけど......」
ディルセアも怪訝な顔をしている。
「......文献のように、強欲な皇帝ではないのでしょうか?」
イオリシアは壁を見ながらそう言った。
「まあ全てが伝わっているわけではないだろうからな」
「あのオールバンクで文献を出せないの?」
「ああ、ディルセアに見せたので全てだ。 他にはない......」
(確かにおかしいな。 もっとあっても良さそうなものなのに、たいした情報も書かれてはいなかった)
「リゼルダインはなんで宝玉を集めているんだ」
「もしかしてヴェルザグの復活でも目論んでいるんでしょうか」
レンドが不安げに聞いた。
「復活させたところで国も兵士もいない。 ただの人よ。 そんなことをしてなんになるの?」
ディルセアは首をふる。
「......そうですね。 それに宝玉の使用にはリスクもある。 正直、そうそう使える代物ではないでしょう」
(そうだ...... 宝玉を集める理由がない。 ルシウスはいくつかのダンジョンを作るために国民を犠牲にした。 ならなぜ集める...... ルシウスは生け贄を集めると言っていた......)
この無機質な壁に俺は不安が胸によぎるのを感じながら先を進む。
「やはり、来たか......」
通路の先にガーランドが座っていた。
「ガーランド...... なぜお前たちは宝玉を集める」
「俺は騎士でな。 といっても元だがな。 主のためこの剣を振るうだけだ...... お前たちには主の目的のため、ここで待ってもらおうか」
その目には覚悟を感じる。
「主...... リゼルダインのことか」
「......いくぞ」
その巨体が巨大な剣をもち、地面を蹴りながら迫る。
「ここは俺に!!」
レンドは左右に風と光の魔法剣を構えながら、巨大な剣を受けた。
「しかたないわ! イオリシアさま! カイト! ここは私たちに任せなさい!」
ディルセアは石化の魔法を使いガーランドの足を止める。
(なにか嫌な予感がする!)
「行きましょう!」
「ああ!」
俺たちはガーランドの横をぬけ先へと進んだ。
「やはり、何かをしようとしているのですね!」
「ああ、阻止しよう!」
俺たちが奥まで走ると、そこは巨大な空間があった。
「貴様ら......」
そこには跪くリゼルダインがいて、その前に玉座があり、その椅子にミイラのような老人が座っている。
「あれは何者だ......」
老人はその窪んだ瞳をこちらに向け、そう聞いた。
「......ヴェルザグさま、あれは我らの邪魔をしている者共です」
「......なれば排除せよ」
「はっ」
リゼルダインは立ち上がると、剣を抜く。
「お前の後ろにいる者がヴェルザグか......」
「我らの計画の邪魔をするな......」
リゼルダインは剣をふるう。
(遺物じゃないが、速い!!)
「返響き!《リフレイン》 光剣」
俺は光の剣を出してリゼルダインの剣を受けた。
「これは、あの男の......」
「イオリシア! ヴェルザグを!」
「はい!!」
ーーその凍える、白き息吹よ、あらゆるものをここにとどめよーー
白い冷気をたたえる霧が老人を包む。 老人は凍りついたが、すぐに凍りは溶けた。
「......こざかしい」
(効かない...... なんだ!?)
「そんなものが効くものか!」
リゼルダインの剣技は俺を凌駕し、弾かれる。
「くっ......」
(やはり剣では勝てない...... ただ、なんだこの違和感は......)
「ぐはっ!」
その時、蹴りをくらって吹き飛んだ。
「大丈夫ですか!」
イオリシアがそばに駆け寄り、俺の回復を始めた。
「......もうよいリゼルダイン、そのような些末なことより、早くあれを......」
「はっ!」
リゼルダインはヴェルザグのもとに向かい、懐から二つの宝玉を取り出した。
「おお...... 我がもしもの時のために置いてあった宝玉、やっと我がもとに......」
リゼルダインは宝玉を渡さず、冷たい目でヴェルザグを見ている。
「どうしたリゼルダイン、早く渡せ...... ぐっ!」
リゼルダインの剣がヴェルザグの胸に突き刺さる。
「まさか、我を裏切るつもりか......」
「裏切る...... 貴様が我らにしたことを忘れたのか」
「サイグレシアか...... あれはお前の祖先、ルシウスがしたことであろう......」
「ルシウスにお前が命じたことだ! 我が国や、両親、妹、国民を犠牲にして宝玉を奪わせようとした!」
「リゼルダインはサイグレシアの王子だったのか......」
「そんな......」
俺たちは言葉を失った。
「ああ、やつは俺を殺す気はなかったらしい......」
リゼルダインは剣を何度も刺している。
「何世代にも渡り、我が国を戦火に導いた...... お前は再び世界を支配するために宝玉を求めた。 そんなお前の目の前で宝玉を取り上げる。そのために俺は生きてきた!」
「クククッ...... そんなことをしても無駄なこと、我は不死、それはお前がよく知っていよう」
「ああ、あの畜生、ルシウスも同じだからな...... だからこそお前に従った」
そういうと黒と赤と黄色い宝玉が光る。
「何をするつもりだ...... 宝玉を使うにも力が足りぬぞ......」
「宝玉は使うために多くの犠牲が必要だ。 それなら宝玉自体を犠牲にすれば......」
「やめろ......」
老人はそう感情もない声で止めた。
「意志の宝玉よ! 宝玉二つを食らってその力を見せよ!!」
黒い宝玉は輝き、他の二つを飲み込むと、黒い球体となって老人を飲み込んだ。
その場には抉られたような空洞があった。
「......やった。 父上、母上、【レノン】、みんな、仇はうった......」
そう言うと、リゼルダインは膝から崩れ落ちた。




