第四十四話『裏切りの使者と赤き宝玉』
「まさか国民を犠牲にしてダンジョンを作っていたのか......」
トレイル王はそう眉をひそめる。 俺たちはすぐにルードランドに戻り報告した。
「街などに人がいないと言うことならば、もはやダンジョンを作る能力はないと考えて問題ないですね」
ゼノフォスが王にいう。
「なれば会談に臨みましょう」
イオリシアもそう告げた。
トレイル王は交渉を長引かせ、ブラムを待たせていた。
「トレイル王よ。 いつまで相談されるおつもりか...... もう限界です。 早くお決めください」
会談に向かうと席に着いたブラムは焦るようにいった。
「すまぬな大使どの。 大変な決断ゆえ、諸侯の説得に時間がかかっていた」
「それならば、降伏でよろしいですか」
ブラムは机に身を乗り出した。
「いいや、戦うことになった」
「なっ!? わかっているのですか! このまま戦えばゼアルードの二の舞ですよ! 国民を、兵士をダンジョンのエサにするつもりですか!」
「いや、もはやそちらにダンジョンを作る力がないのはわかっておる」
「なっ......」
王の指示でブラムの周りに槍を持つ騎士たちが囲む。
「一国の大使をこのように扱うなど、外交で許されるとお思いか!」
「すまぬが、もうそなたの国の王はおらぬ」
「なんだと......」
ブラムと警護の騎士たちが動揺している。
「本当だブラム、俺たちはルシウスを討った」
俺がそう告げるとブラムの顔が青ざめる。
「嘘をつけ! あの王は......」
「不死だったのよね。 だから石に変えたわ」
「......る、ルシウスさまが......」
「やっと、解放される」
その場で騎士たちがへたりこみ、ブラムの顔が白く変わる。
「宝玉はどこにある......」
「お、俺は知らない! ただこの国を降伏させろと言われただけだ!」
「誰にだ......」
ブラムは懐に手を入れた。
「突風!!」
「ぐはっ!!」
レンドの風がブラムを吹き飛ばし、指輪がその手から落ちた。
「もう逃がさないブラム!」
「引っ捕らえろ」
トレイル王がそう言うと、騎士たちに拘束され、ブラムたちは連れていかれた。
「助かった...... 感謝する」
トレイル王から礼をいわれる。 サイグレシア軍に王の石化事実が伝わると、兵士たちは皆、簡単に降伏した。 どうやら王に逆らうものは根に吸収されるようで、やむなく従っていたという。
「それでトレイル王、宝玉は?」
「サイグレシアの軍にはなかった。 ブラムから話を聞いているが、どうやらリゼルダインというものが関わっているようだ」
「あいつか......」
銀髪の男の冷たい瞳が思いだされる。
「しかし、これでサイグレシアの脅威はなくなった。 この国で宝玉を守れば安泰だろう」
「ええ」
(しかし、ルシウスはヴェルザグが再び力を得るまで、と言われたと言っていた。 それならリゼルダインはなんのために宝玉を集めている......)
「父上!!」
ゼノフォスが部屋に入ってきた。
「なんだ......」
「宝玉が!!」
「なにっ!?」
「王の命を受けたとブレイロが持ち出したと!」
俺は転移の指輪で飛んだ。
「なっ!? カイトさま!」
門番の前にでた。 門番は驚いている。
「ブレイロは!!」
「ブレイロさまなら王からの命といって馬車で......」
門を抜けて走ると、遠くを馬車が走っている。
「返響! 氷結」
地面を凍らせ馬車を止める。 馬車からブレイロが出ていった。
「くっ! 待て!!」
俺が走ると、別の馬車が止まっている。 そこにはガーランドとリゼルダインがいた。
「これが宝玉だ! 早く乗せろ!」
「そうだな......」
リゼルダインが宝玉二つを受けとると、ブレイロを蹴りあげ、冷笑を浮かべた。
「ぐあっ! き、きさま、ヴェルザグさまに仕える私を......」
リゼルダインが持つ宝玉が赤く輝く。
「そ、それは運命の...... や、やめろ...... 私はヴェルザグさまに、不死にしてもらうのだ......」
そうブレイロが手をのびそうとするも、リゼルダインの乗る馬車が走り去る。
「逃がすか! 転移...... なに!?」
「ぐああぁ...... グアアアアア!!」
ブレイロが苦しむと、その体が大きく歪み、背骨が服を破り、手には鉤爪が伸びて、異形の姿へと変わっていく。
「ブレイロがモンスターに! くそっ!!」
「ガアアアアアアッ!!!」
巨大な鉤爪でブレイロは地面をえぐる。 俺はとっさにかわす。
「返響、光剣!!」
俺は光の剣でブレイロを切った。
ブレイロは倒れたが、馬車の姿はもうなかった。




