第四十三話『不死の王と宝玉の代償』
俺たちは街を突っ切り、ガスレブへと向かう。
しばらく馬車を走らせると、巨大な城壁都市が見えてきた。
「さすがにあそこには人がいるだろう...... ここで止め慎重に向かおう」
馬を止め街へと近づく。 大きな壁が反りたつ。 巨大な鉄門が閉まっているが、門番などはいない。
「門番もいない...... いったいどうなってるの?」
「まさか、全兵力をルードランドに向けてるとか......」
(いくらなんでもな。 しかし街といい...... 異様だ)
「中にはいれるか......」
壁を契約で地面の土と変える。 そして壁を抜け出た。 そこも古い巨大な建物が並ぶ街だった。 ただやはり灯りはどこにもなく人の気配がない。
「ここでも誰もいないのか...... さすがにおかしい」
「ああ、だがもう王宮に行くしかない」
「そうね。 ここまで来たら行きましょう」
俺たちはそこから見える大きな王宮へと向かった。
王宮にも警備の兵はいない。 王宮内に入っても誰一人も見えず、灯り一つない。
「こんなことってある...... もしかして前線に王もいるの?」
「......さすがにそれはないだろう。 そんなリスクを負うなら、降伏など求めずすぐにダンジョンを作り、兵を動かすはずだ」
「やはりダンジョンを作るのには、大きな対価が必要なんじゃ...... まさか」
レンドとディルセアは顔を見合せ言葉を失った。
「......ああ、もしかしたらこの国の者たちは...... 早く宝玉を探そう」
俺たちは王宮を進む。 すると中央に巨大な扉があった。
そこを開けると、埃っぽい匂いがする。
暗い部屋の玉座に誰かが座っている。 それは老人でただ虚ろな顔をしている。
「貴様たちは...... 何者だ」
その老人はそういい、警戒感もなく特になんの感情も持っていない風だった。
「お前は...... 誰だ」
「......我はサイグレシアの王...... 【ルシウス三世】......」
「そんな、あり得ない! ルシウス三世は古代サイグレシアの王よ!」
「......そうだ。 我はこの国の王、不死となりこの国に君臨してきた...... いや君臨させられてきたというべきか......」
「不死!?」
「君臨させられたとはどういうことだ」
「我は不死を望み、宝玉を作った。 民数万の命とともに......」
「民数万......」
レンドが息を飲んだ。
「......だが我らは帝国に負け、ヴェルザグは我に使命を与えた」
「使命......」
「ああ、再び力を得るまで、宝玉を守れ、と...... それゆえ永劫と思える時間をここで過ごした......」
「それでゼアルードやルードランドへ攻め入ったのか」
「そんなものが目的ではない...... やつの目的は宝玉とその生け贄だ」
「宝玉と生け贄......」
「この国を見たであろう。 宝玉を使うには犠牲が必要だ」
「やはり国民を犠牲に...... なんてことを!」
ディルセアが握った拳が震える。
「......我はもう死にたい、いかなる犠牲を払ってでもだ...... でなければ我はこの苦しみから永遠に解かれることはないのだ!」
老人は玉座から立ち上がる。 その足元は木の根のようになっていて地面に埋まっている。
床が盛り上がると、床を割りながら木の根が飛び出てきた。
「こいつも、モンスターに!」
「全てヴェルザグのせいだぁぁぁ!!!」
そう咆哮するようにルシウスが叫ぶと、木の根が生き物のように動き、こちらに迫る。
「この!!」
レンドが風の剣で根を切り裂く。 しかし切られた根はすぐに再生する。
「くっ! 石化させたのに!!」
ディルセアが石化した根を、他の根が切り裂き再生する。
(石化も無駄か...... 全てを止めないと、きりがない)
「返響! 【凍結】《フリーズ》!!」
俺はイオリシアの氷の魔法を地面にはなった。 根っこが凍っていく。
「ぐぅぅ......」
ルシウスは口から泡を吐いている。
(痛みはあるのか!)
「ディルセア、ルシウス本体を石化だ!」
「わかったわ!」
ディルセアが魔法を唱えると、ルシウスが足元から石へと変わっていく。
「体が...... ヴェルザグ...... 我を捨て駒につかうとは......」
忌々しげにルシウスはつぶやいた。
「ヴェルザグは何をしようとしていた」
「やつは、失敗した...... だから、今度は全てを得るために...... 宝玉とこの世界...... を......」
そういいかけルシウスは石になった。
「……自業自得ね」
「こんな奴のために、どれだけの命が……」
そうレンドとディルセアが石となったルシウスを見ていう。
(……これが権力に溺れた者の末路か)
そのがらんとした王の間は、かつての栄華もむなしく埃だけが舞っていた。




