第四十二話『降伏勧告と潜入の決意』
現れたブラムは騎士たちを引き連れて現れた。
「我々は王の命にて、サイグレシアの大使として、貴国に降伏を勧告しに参りました」
そう席に着くなり、高圧的な態度でブラムはそう言った。
「......あのやろう」
レンドはそう小さな声でつぶやく。
「いきなりだな...... しかし、あの兵力で我が軍を倒すのは不可能だと思えるが......」
そうトレイル王は答えた。
「ゼアルードの話は聞いているでしょう...... 我らはダンジョンを作り出すことができます」
「ダンジョンを......」
(ブラフか...... いや、宝玉の力か! まさか、あの遺跡から持ち出した宝玉はダンジョンを生成できるのか......)
「ダンジョンからモンスターが出てくれば、この国はその対応と我らの軍と戦わねばなりません。 そうなれば多大な被害は避けられませんよ」
「............」
「無論今すぐとは言いません。 少し決断の時間も必要でしょう」
そう言うと、ブラムは席を立ち、俺たちの方を見ると薄く笑い、部屋を後にした。
「さて、どうしたものか...... カイトどのなにかあるか」
「ダンジョンの話、おそらく本当でしょうね。 宝玉の力を使ったのかもしれません」
「宝玉か...... あり得る話だな」
「父上、こちらも宝玉を使っては?」
ゼノフォスがいうと、ブレイロが止める。
「お止めくだされ、何が起こるかわかりませんぞ!」
「......確かに、使い方もわかりませんしね」
「しかし、宝玉を奪われたら、この世界はサイグレシアの手中に落ちる。 おそらくかつてブレンバルトに支配された世界のように、地獄のようになるであろうな」
イオリシアもうなづく。
「トレイル王、少しお話が......」
俺はトレイル王と二人きりにしてもらった。
「......なんだね」
俺は鞄から宝玉を取り出した。
「それは......」
「すみません。 かつて一つ宝玉を手に入れていました」
「なるほど、しかしそれも当然だ。 国に、宝玉を与えればどんなことになるかわからぬではな。 実際サイグレシアがそうした......」
「そこで俺は、サイグレシアから宝玉を奪おうと思います」
「サイグレシアから...... 可能なのか」
「わかりません。 しかし、このままだと最悪の結末になります」
「......そうだな。 宝玉を渡すわけにもいかぬし、かといって戦っても犠牲が大きい。 ここはそなたに託すしかあるまい。 私はできうるだけ彼らとの会談を長引かせよう」
トレイル王に許可をとり、俺たちはサイグレシアに向かうことにした。
「イオリシアの姉さんはつれていかないのですか」
レンドが聞いた。 俺たちは夜のうちに他の街に移動して、サイグレシアへと向かっていた。
「ああ、イオリシアがいないと怪しまれるからな。 あくまで王族のみの会談にしてもらった。 王が時間を稼いでいるうちに宝玉を取り戻す」
「でもどこにあるかわからないわよ」
不安げにディルセアが言う。
「少なくともブラムは持っていないだろう。 あの宝玉でダンジョンを作ったなら、なんのリスクもないとは思えない。 グラウニーのように宝玉で何かを得るにはその対価が必要だからな」
「と言うことは王ってことね。 でもサイグレシアの王は表にはでないとされているわ」
「それなら、王宮に潜入ですね」
レンドはそう剣の柄を握る。
俺たちは国境から馬車でサイグレシアへと潜入した。
「国境に警備すらいなかったわよ。 罠じゃないの」
ディルセアはそういぶかしむ。 実際国境の警備どころか門も開けられており、不自然な感じだった。
「圧倒的に優位な状況だ。 わざわざそんな罠を張る必要なんてないだろうがな......」
「......確かに、じゃあなんでこんなに簡単に入れるのかしら......」
(ディルセアの言うように、なぜこんなに人がいない......)
俺たちは不審に思いながらも、サイグレシアの王宮のある【ガスレブ】へと向かった。
「あそこに街がある。 でもおかしい...... 灯りが見えないし、人の動きがない」
ディルセアは遠くを見てそう言った。
「どうします、遠回りになるけど回避しますか」
「いや、遠回りしている時間はない。 強行突破しよう」
俺たちは街を突っ切る。
しかし、街には人影はなく、家々に灯りもなくひっそりとしていた。
「無人...... 戦争になるからどこかに避難しているのかしら」
「可能性はあるがおかしいな。 そこらの建物が壊れている」
建物の破損が多く、それどころか窓や扉は開け放たれたまま風に揺れていた。 突然人がいなくなったようにも見える。
(なんだ...... 何かが起こっているのか)
その真っ暗な街が、ひときわ不気味さを物語っていた。




