第四話『ハードマンティス討伐とスキルの罠』
「契約!!」
ガキンッ!!
カマキリが振り下ろした前足を俺は右腕で受けた。 乾いた音が響き渡る。
(よし防げた! ただ、時間がない!)
俺は右腕でカマキリの色の変わった腹の辺りを殴り付ける。
ドゴッ
鈍い音がすると、カマキリの体が紙のようにひしゃげる。 そのままカマキリは地面に倒れた。 もがいていたカマキリは動かなくなると、冒険者カードが光っていた。
「ふぅ...... なんとか、倒せたか。 倒したからカードが光ったのか」
(それにしても助かった...... あの【契約】《コントラクト》って技能のおかげだな)
俺は昨日見つけていた契約の技能を手に入れていた。 これは自分の物と対象の同価値の物を取り換える技能だった。
しばらくたち、右腕が黒からもとの色に戻った。
(俺の右腕の皮膚とカマキリの腹の表皮を交換したから、なんとか攻撃を受けてやつの腹を攻撃できたな......)
「ただ変えられる時間は5分程度、一度使うとインターバルが一分あるし、取り換えられるものが同価値ってのがネックだな...... まあ、なんとかカマキリは倒した。 そうだ、こいつを売れるかな。 もうカードには記憶されたし......」
俺はカマキリを売ってみた。 画面には【ハードマンティス】、1000万の文字がでた。
「ハードマンティス...... ベビーじゃないじゃん!! 間違った!! でも1000万で売れる!!」
俺は早速、オールバンクでカマキリを売り払った。
「取りあえず、ギルドに行くのは明日にしよう...... なんか疲れた」
俺は帰路に着いた。
「カイトさま! あなた昨日、ベビーマンティスじゃないモンスターを倒しましたか!」
そうギルドの受付のバティアさんがすごい剣幕でいった。
(ま、まずい! 指定されたもの以外倒しちゃダメだったのか......)
「は、はい、なんか急に襲われてハードマンティスというモンスターを倒してしまって」
「ハードマンティス......」
「今、ハードマンティスって言ったか」
「嘘だろ......」
周りにいた冒険者がざわつき始めた。
(まさか、絶滅危惧種的なモンスターだったのか!)
「すごいことですよ! まさか試験でハードマンティスを倒されるとは......」
「へ?」
「あれはかなりの強さを持つCクラスモンスターなのです! あれを個人で倒せる人は、ベテラン冒険者や訓練をつんだ騎士ぐらいのもの」
そう興奮気味にバティアさんは言った。
「は、はぁ、それで試験のほうは......」
「もちろん合格です! 本来Fクラスから段階を踏むのですか、あなたはCクラス程度の実力と見なされますので、ギルドからCクラスからスタートとさせていただきます」
「あいつ、いきなりCクラスかよ!」
「三年目の俺たちでさえ、まだDクラスだぞ」
「信じられない! あんな子供が!」
周囲のざわつきが激しくなった。
(なんかすごいことになってるけど、まあ、Fだろうが、Cだろうが、そんなに変わらないだろ)
「Cクラスはあちらの掲示板になります。 クラスが上がると報酬が高い依頼を受けられますので、ご確認ください」
そうバティアさんは二階の掲示板を指差した。
(なるほど、クラス昇格で報酬が高いのを受けられるのか...... あの契約なら使い方次第で、依頼達成も可能だな)
「これはハードマンティス討伐の報酬です」
そう硬貨のたくさん入った袋をどさっとカウンターに置いた。
(まじか! 報酬まででた! ラッキー!!)
俺はそんなことを思いながら、掲示板へと向かった。
「しかし、ついてる。 あの契約もかなりお得な技能だったし、この世界で生きられる光明が見えてきたな。 次はこの依頼をちゃっちゃっとやってお金を稼ごう。 あとは帰るための金をためるだけだ!」
気持ちの高揚とは裏腹に窓から入る夕陽がやたら暗く感じる。
「あれ、なんか暗いな...... なんだ......」
俺はそのまま真っ暗な世界へと落ちた。
「ここは......」
「ああ、目覚められたのですね」
心配そうにバティアさんが言った。
「あれ?」
「ここはギルドの応接室です。 急に倒れられたのです。 お医者様の話だと、外傷はないがとても衰弱されていたそうです。 やはりハードマンティスとの戦いは過酷だったのですね」
そうバティアさんが言う。
「そうですか、すみません......」
(あの戦いはそこまで疲労するものでもなかった...... なんだ)
俺は礼をいい、ギルドをあとにした。
「ウィンドウ」
契約の項目を調べる。
『契約使用には対価交換が必要、しかしその交換価値が、不足する場合、生命力を対価として支払う』
そう書かれていた。
「俺の皮膚とカマキリの表皮では価値が釣り合わなかったのか。 それで生命力を奪われた。 やばいな。 これ交換価値を見誤ると、最悪死ぬぞ...... 多用はできないな......」
俺は暗い気持ちで宿へと帰った。




