第十五話『レンド、風の剣の誓い』
「はぁ、はぁ......」
レンドは肩で息をしている。 俺たちは何度かギルドで依頼を受け、モンスターと戦っていた。
「レンド大丈夫か」
「は、はい。 モンスターってこんなに強いんすね...... 剣できっても死なないし、弾かれちまう」
「レンド、お前は魔法を使えないのか」
「魔法は一部の才能あるものや王侯貴族しか使えませんよ。 俺は普通の、しかも底辺の生まれです。 カイトさんみたいに特別じゃないんですよ」
レンドは肩を落としていった。
(まあ、レンドは普通の人間、逆に俺みたいな特殊な力もなく、こんなところでモンスターと戦えるんだから、よほど根性がある)
「お前も十分特別だよ。 それで魔法はどうやって覚えるんだ。 俺は生まれつきだけど......」
「持って生まれた者以外なら、遺物でしょうね。 巻物になってるとか...... 見たこともないですけど」
「遺物か......」
(オールバンクにあったが高額すぎてメリットが少ない。 だが、これからは考えないといけないかもな)
そんなことを考えながら、俺たちはいくつかの仕事をこなした。
「お疲れさまでした!」
ギルドに向かうとバティアさんが迎えてくれた。
「バティアさん、Aクラスになるにはどういう条件があるんですか?」
「ええ、もうカイトさまは条件の一つ、Bクラスの案件を達成していますが、Aクラス昇格には一年に一度ある【Aクラス昇格試験】に合格する必要があります」
「それって、めちゃくちゃ難しいと言われているやつですか」
レンドが横から聞いた。
「......ええ、ベテランの冒険者パーティーでも何年も合格できない試験です。 今年は一ヶ月後にありますね。 受験するおつもりですか」
そういうバティアさんの顔が曇る。
「ええ、そのつもりですが、何か」
「......あの試験とても死亡率も高くて、廃止が検討されているくらいなんです」
「そういや、優秀な冒険者がなくなったら困りますもんね」
レンドもうなづいた。
「ええ、ですが......」
そうバティアさんは言いよどんだ。 気になった俺は話を聞く。
「何でもかまいません。 ここだけの話にしますから」
少し躊躇したがバティアさんは話を続けた。
「実は、この試験を認定するのは各国のお偉方なのです。 その理由は冒険者ギルドの弱体化にあるのではと噂になっています」
「えっ? 国が冒険者ギルドを弱らせたいってことですか?」
レンドが首をかしげる。
「まあ、そんなおかしな話でもない。 強い力をもつ組織ができれば、どんどん自分たちの影響力が下がるからな。 実際、国より冒険者ギルドの方が頼られている。 そのうち国が失墜して、冒険者ギルドの力を抑えられなくなれば、言いなりにさえなりかねない」
「はぁ......」
レンドは理解できない様子だ。
「ええ、そうなんです。 ですので受験は...... いえ、やめないのですよね。 すみません」
「いえ、かまいませんよ」
俺たちは受験登録をして、帰路に着いた。
「これから、どうします? 試験内容がわからないんじゃ、対策しようもないですけど......」
「ああ、まずはレンドに強くなってもらう」
「へ?」
レンドは口を開けている。
「無理っすよ! 一人でなんて! 俺も行きます!」
困惑したようにレンドが言った。 俺たちは宿に帰ると試験のことを話していた。
「かなり危険なんだ。 ついてきて本当にいいのか」
「ええ、正直言えばまだ困惑していますが...... 俺は弱いし」
「お前は剣の腕なら、俺よりはるかにうまいだろ」
「......ただ、昔、暇なときに練習で剣を振っていただけですよ。 剣を学んだやつがいたので、そいつの真似をして...... しかもモンスターにもあまり効かないし......」
自信なさげにレンドはうつむく。
「それでも、俺の我流よりましだ」
「でも、急には、強くなれませんよ。 来年にしませんか」
「ああ、だから武器を手に入れた」
「えっ...... 武器を?」
「これだ」
俺は剣を出した。
「これは...... まさか魔法剣っすか!!」
「ああ、オールバンクで手に入れた遺物の魔法剣だがな。 10億もした。 このところの稼いだお金をほとんど全てつぎ込んで買った」
「そんなのもらえません!」
「お前が働いた分も入ってるんだ。 この剣は【風の嘶き】《ウィンズ・クライ》、風を放てる魔法がかかった剣だ」
「そんなのカイトさんが使ってください! 俺じゃ使いこなせない!」
「俺には契約がある。 あれを使いながら、魔法剣を使うのは厳しい。 これはお前と連携するためのものだ。 本当におまえがついてくる覚悟があるならだが」
「俺と連携......」
しばらく考えたレンドは、覚悟を決めたのか剣を受けとった。
「......わかりました。 俺やってみます!」
レンドは真剣な眼差しでそう言った。
俺たちは試験の日まで剣を訓練に明け暮れた。




