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第十二話『氷の檻と運命の証明』

「さあ、次は一億だ!」


 札が会場から次々上がる。 値段は更新されあっという間に10億になった。


「100億だそう」


 ディセンタは札をあげる。 会場が水を打ったように静まり返る。


「100億だ! これ以上はないか! では決まり!」


 司会がそう木槌を打った。


「おめでとうございます! ディセンタさま!」


 クランチがそう拍手した。


「取り分の話は後で決めよう」


 そうクランチは俺に耳打ちしてきた。


 俺はイオリシアに言われたとおり、下にグラスを落とし合図をする。


 ガシャンッ!


 そう大きな金属音がすると、イオリシアの入っていた鉄の檻が吹き飛ぶ。 イオリシアは光の膜に包まれていた。


(あれは魔法か。 そういえば防御壁を使えるとか言っていたな)


「なんだ!?」


「どうなっている...... クランチ」


 ディセンタがそういうと、クランチは慌てている。


 下では会場がパニックになっている。 客が逃げようとしていた。


 ──その凍える、白き息吹よ、あらゆるものをここにとどめよ──


 イオリシアが言うと、白い霧が会場に広まり、客の足元が凍った。


「あれは魔法! 魔法適正があると言っていたが! あんな高位の魔法を! 何をしている! あの女を抑えろ!」


 クランチが叫ぶと、外から黒服たちがなだれ込む。


「あいつはなんだ...... なぜあの力がありながら、従っていた」


 ディセンタが俺の方を見ると、立ち上がった。


「悪いが帰ってもらっては困る」


 俺はその前に立ちはだかる。 

  

「カイト、貴様! やれ!!」


 クランチの手下が剣を抜いた。


(見きれる!)


 その腕をとって投げると剣を取り上げた。


契約コントラクト、【剣掌】《ブレイドハンド》」


「死ね!!」


 キィンッ!!


 もうひとりの手下の剣を掌で受ける。


「なっ!?」


 驚いている手下の腹を拳で殴り付ける。


「ぐはっ!!」


「お前たち! 中に...... ぐふっ!」


 そう言おうとしたクランチを殴り倒した。 床にクランチは倒れ気絶した。


「......貴様」


 ディセンタは懐から笛をふく。


(音がしない......) 


 振動が部屋を揺らす。


「カイトさん!」


 外からレンドの声が聞こえた瞬間、壁が吹き飛ぶ。


「なんだ......」


 そこにはライオンのような巨大な青い狼がいた。


「ははははっ、私のペット【キリングウルフ】だ!!」


(さっきのは犬笛か。 モンスターを飼ってやがったのか)


「貴様らと、私は違う! 生まれも何もかも! 選ばれているのだ! 運命に従い、貴様らは虫けらのように生きて死ぬだけの存在! やれ!」


 キリングウルフはその巨大な爪を、振り下ろしてきた。


 ギィィィンッ!


「ぐっ!!」


 爪は両手で受けたが、どんどん押される。


(腕の力で押さえ込まれる!!)


 俺は後ろに飛びのいたが、目の前にその牙が迫っていた。 


「速っ!」


 とっさに噛もうとする上下のアゴを掴んだ。


「ガルゥゥ!!!」


(くそっ!! 剣の掌だからつかめているが、そのままだったら食われている! ただ、もう少しで契約コントラクト切れる...... 切れたら終わりだ。 その前に)


「死ね、死んでしまえ!!」


 ディセンタがわめいている。


(仕方ない!)


拡張スキル・エクスパンション契約コントラクト!!」


 キリングウルフの口が急に裂けるように開いた。 


「おらああああっ!!!」


 俺は両掌をあわせてそのままキリングウルフの顔に突きだした。 


 ズシャッ!! 


「ギャウゥゥ!!!」


 キリングウルフは顔から血を流してそのまま倒れた。


「な、なんだ...... くっ」


 ディセンタはよろけながら壁に開いた穴から逃げ出した。


「くっ...... 待て」


 体がよろつく。


(キリングウルフの上アゴと下アゴを交換したが、記憶を失わないように、契約コントラクトを使ったら、やはり不足があったのか...... 生命力をかなり消費した...... このままだと追い付けない)


「か、カイトさん......」


 レンドが頭から血を流して立っていた。


「レンド、肩を貸してくれ......」


 レンドに肩を借り、ディセンタを追う。


 階段を降りると、霧がでて足元から冷気が伝わる。 そこにはイオリシアがいて周囲の黒服とディセンタの足元が凍っていた。


「き、貴様...... 領主である私にこんなことをして、ただで済むと思っているのか......」


「ええ、あなたの悪事は全て露見したのだから」


 そうイオリシアはディセンタを見据える。


「ふ、ふふっ、ここにいる者たちは全て金と権力を持つ者、こんなことをしても私を捕らえることはできん。 私の領地で証拠があろうが証明も何もできん。 奴隷たちの話など誰も聞きはしまい......」


 ディセンタはそう不敵に笑う。


(......だろうな。 この領地から出るのも難しい。 イオリシアはどうするつもりだ。 最悪、残りのお金で別の技能をとるしかないか)


「......いいえ、証明することはできます」


「なに......」


 イオリシアは懐から指輪を出した。


(あれはグレンベールの指輪......)


「そ、それは王家の指輪!! まさかあなたは!?」


「そうです。 私はルードランド王家、王女、ルードランド・イオリシア、今この場であなたの罪を裁きます」


「王女、イオリシアさま...... そんな」


 ディセンタはうつむいた。

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