第十一話『運命を語る貴族と奴隷の檻』
「ディセンタってここの領主ですよ! そいつを見つけてどうするんですか!」
「わからん...... ただイオリシアには何か策があるらしい...... 俺たちはディセンタを見つけて逃げられないようにする」
「そんな...... あのディセンタは根っからの貴族で、俺たち庶民をゴミのような目で見る領主です。 このオークションに参加してても別におかしくはないですが......」
(やはり、そんな人間か)
それから屋敷を警備しているふりをして捜索を始めた。
「どこにいるか見当がつくかレンド」
「......えっと、多分、最上階、VIPが集まる階です。 おそらくクランチと一緒だと思いますけど...... ほら警備が多くて近づけもしませんよ」
そう角からのぞくと、大きな階段の前には数名の警備の黒服がいた。
「ここで待てば逃げられないか」
「いや、確か非常口が別にあったはず......」
「それなら行くしかないな」
「いい!? 無理ですよ! あの数、戦ったらその間にディセンタは逃げますよ!」
「レンド、お前はこのまま逃げてもいいぞ」
そう俺が言うとレンドは、少し沈黙し下を見る。
「......いえ、行きます! 罪の償いにはならないかもしれないけど、俺は何かやらなきゃ、このままじゃ生きてはいけない!」
少し考えてレンドは震える拳を握り答えた。
「待ってください......」
普通の服に着替え、俺がレンドをつれ階段に向かうと、前の黒服に呼び止められた。
「なんだ」
「ここはVIP専用の階です。 一般客は下の階になります」
「......仕事の件で話があるからクランチに会いたいんだが」
「ここに連絡はありません。 お引き取りを......」
予想通りの反応だった。
「俺はここに運んだ奴隷の所有者だったが、そちら側から不義理があった。 奴隷を戻してもらう。 この事を他の組織に話を持ち込む。 【ゼプト商会】とかな」
その名前をだすと、黒服らが戸惑いの表情を見せ、何事か仲間にいうと、ひとり階段を上がっていった。
しばらくすると黒服が戻り、仲間に耳打ちする。
「......すみませんでした。 上にどうぞ」
俺たちは階段を上る。
「効果はあったな」
「ゼプト商会は、ここの領地だけじゃなく、他の国にも顔が利く大商会、無視はできなかったんでしょう。 不義理の話がそっちに伝わるとクランチは困るんです」
そうレンドがいった。
「レンド、言ったとおり頼むぞ」
「ええ...... やってみせます」
最上階は豪華な内装が施され、いくつもの部屋があった。 奥からクランチともうひとりの貴族風の老人が幾人もの護衛をつけ、会話しながらこちらに来る。
「クランチ」
俺が近づき声をかけると、クランチは驚いた顔をしている。
「な......」
「ずいぶんひどいな。 あの扱いは」
その時レンドがクランチのそばに行く。
「ボス...... 待ち伏せしてたアニキたちが一瞬でやられまして、ゼプトの方に奴隷を持っていくというのでここに連れてきました」
「......わかった」
「どうしたクランチ、揉め事なら私は帰るぞ」
老人はそう怪訝な顔でいった。
「い、いえ、ディセンタさま。 少しお待ちください」
(やはりこいつがディセンタか)
「すまなかった。 行き違いがあったようだ。 この詫びは後でする」
「後で襲われては困るのだがな」
「い、いや、そんなことはしない...... そうだ、詫びのためにここで楽しめ、その後で商談だ」
「信じられんな。 そいつは偉いやつだろ。 そいつと同じ部屋にしろ。 でなければ......」
「......わかった。 ディセンタさま、すこし彼との同席を願えますか」
「......なぜだ」
「彼は今日最高の奴隷の所有者なのです。 最後の目玉商品ですよ」
「......あの貴族の令嬢という奴隷か...... いいだろう」
そうディセンタが承諾をして、俺たちはディセンタと同じ部屋にはいった。
その部屋は小部屋でオペラハウスのような一階を見渡せる三階だった。 下の階にも同じような小部屋に貴族や富豪たちが並んでいる。
(なるほど、ここから奴隷の品評を行うのか)
「では皆さま! オークションを始めたいと思います! まずはこのモンスター! 【ホーンウルフ】! 番犬としても、ただ人狩りをするにも優秀ですよ!」
奴隷のオークションがはじまった。 次々と檻が運ばれ、客たちは欲しいものに札をあげる。
「君は若いのに冒険者か......」
ディセンタがそう感情もなくそう言った。 その表情は暗く、薄い唇、冷たい目がいっそう陰鬱な顔に見せていた。
「ああ」
「命を懸けて金を稼ぐ、正直無駄だとは思わんかね」
「それが俺の人生だからな」
「ああ、そうだ。 生まれで人生は決まっている。 選択など意味のない悪あがきだ...... よきところに生まれれば私のように生きられ、悪いところに生まれれば商品としてあそこに並ぶ。 それが運命というものだ」
そうグラスに口をつけオークションを見ている。
(今はイオリシアが心配だが......)
「俺はそうは思わない......」
「なぜだ......」
「運命だろうが俺は自分で選択する」
「選択しても結果が同じでもか......」
「ああ、同じでもだ。 選択することに意味があるからな。 納得しない成功なんて意味がない」
(そうやって今も命を削ってる。 代償もなく与えられた力だけなら、あの時死んでいても同じだった。 選択して俺はここにいる。 くいはない)
「詭弁だな...... いい方と悪い方ならいい方をとるだろう」
「確かにな。 だがいい方とはなんだ? 俺のいい方は自分の納得がいく方だ。 運命に頼るあんたは自分で選ばず生きてきたのか? その地位はたまたまなのか、ならあんたの生き方は俺にとっては悪い方だな」
「......小僧」
ディセンタがこちらをにらむ。
「まあ、まあ、それより目玉が来ますよ」
クランチがそう言うと、檻が運ばれてくる。 ライトが当てられ、檻の中のイオリシアが輝き照らされた。 その美しさと白いドレスが輝き客の視線を集めている。
「今回の目玉です。 元貴族令嬢、魔法適正あり、希少性ありの奴隷です!!」
「おお......」
会場の盛り上がりと共に、ディセンタがそう感嘆の声をあげた。




