第十話『地下潜入と檻の令嬢』
「この街か......」
夜に大きな湖が見える街までやって来た。 そこは都市部から離れた街だが、大きな屋敷が立ち並ぶ。
「ええ、ここは金持ちどもの避暑地なんです。 ほらあれです。 あれがクランチの別荘ですよ」
そうレンドがいう山を背にした他よりひときわ大きな屋敷がある。 そこには馬車が列になって入っていくのが見えた。 黒服の男たちが剣や槍で武装して立っている。
「......さて、どうやってはいるか。 なにか案はあるか」
「裏口に搬送路があるんです。 そこからゴミ捨てをよくさせられたから、知ってるんです」
「なるほど、警備は」
「前面と中に上のやつら、そこらの警備は新人や雑用がやらされます」
「そこからなら何とか入れるか......」
(技能は限界まで使いたくないしな...... レンドが協力してくれて助かる)
俺はレンドに逃げるように言ったが、レンドはせめての償いと協力を申し出てくれた。
「行くぞ」
「ええ!」
俺たちは山の斜面を移動すると、タバコをふかしたり、酒を煽ったりして暇そうにしている警備がいた。 それから隠れて裏口まで回り、ゴミの搬送路から中に入り込んだ。
「ずいぶん緩い警備だな」
「まあ、楽して金を稼ぎたいやら、偉くなりたいチンピラが入ってきますから、だいたいはこんなもんす。 俺もそうだったからわかるんですけどね」
そう自嘲気味にレンドは言った。
「そうか、俺はそうは思わない。 こいつらがお前のように心が痛むなんて気持ちはないだろ。 そんなやつらなら奴隷売買のオークションの警備で酒やタバコをやらないはず......」
「そうすかね...... あっ、あそこです。 ここが裏口で地下に通じてるんです」
そう屋敷の地下へと続く階段を指差した。
「問題はここからだな。 さすがに見回りを回避しても、中には警備がいるだろうしな」
「ええ、中のはかなり上のやつらだから、それなりに戦えます、どうしますか? 強攻突破しますか」
「いや、まだだ」
(そもそも目的はイオリシアだけじゃなく、貴族のディセンタだった。 やつもこのオークションに関わっていることを証明し、イオリシアは潜入できれば方法はあると言ってはいたが...... こうなってはイオリシアを連れて逃げるのが優先だ)
「オールバンク」
俺は黒服を二着手に入れる。
「な、なんすか? どっから出したんですか?」
「そんなことはいい、はやく着て中にはいるぞ」
俺たちは黒服に着替えると警備を回避して、階段を降り、地下の扉から屋敷へとはいった。
そこは棚があり、倉庫のような地下の部屋だった。
「ここは......」
「まあ、倉庫です。 ここからゴミを外に出して捨ててました」
「奴隷たちはどこかわかるか?」
「多分この奥です。 奥から檻みたいなものが、運ばれて来てました...... あの時のことは忘れられない。 すすり泣く声...... なんとか逃がそうとしたこともあったけど、見つかってリンチされて......」
そう目を伏せてレンドがいった。 奥には扉がある。
「向こうにも誰かいるのか」
「ええ、奴隷の監視が多分...... 食事を持っていったり、タバコを吸いに来たりしてましたから」
「......よし、お前はここ隠れていてくれ」
俺はオールバンクで食事とタバコをだし扉を開けた。
「なんだ......」
奥の部屋に男がいた。 その横には扉がある。
「食事だ」
「ずいぶん早くないか?」
「いらないのか? タバコもあるが」
「......わかった。 少し休憩する。 代わりにいてくれ」
「はやくしてくれよ」
「ああ」
男はタバコと食事を受けとると、倉庫のほうに向かった。
俺は扉がしまるのを待って奥の扉をゆっくり開ける。
そこには鉄の檻が無数にあり、中には動物やモンスター、人などがいた。 奥には天井につくほどの巨大な檻もふたつある。
(なんだこれは...... 人は助けたいが、まずは......)
「イオリシア...... いるか」
「ええ、ここです!」
横から声がして、檻を抜け俺は近づいた。 そこには少しつかれた顔のイオリシアが小さな檻の中にいた。
「大丈夫でしたか。 クランチが『やつは死んだ』と言っていたので心配していました」
「ああ、裏切られたよ。 それよりここから出て、ディセンタを探そう。 今、檻から出す。 後は別の方法で他の人を助ける」
「待ってください。 私がここからいなくなったらディセンタに警戒されます。 ディセンタはとても狡猾で慎重な男です。 おかしいと感じると、すぐ逃げるでしょう。 この数の奴隷たちも隠されてしまう」
「しかし......」
「お願いします。 オークションが始まるまでに彼を探してください...... あとは私がやります。 信じてください」
その強い意思を宿らせた瞳は、イオリシアの覚悟を映しているようだった。
(仕方ないな...... 何か策があるのだろう。 逃げろといっても聞きそうにない...... ここは信じるしかないな)
「俺はディセンタを探せばいいのか」
「......ええ、見つけたら、逃げないように退路を防いで下さい。 そして......」
イオリシアは俺に最後の一言告げる。
「わかった」
俺は帰ってきた見張りと代わり、倉庫に戻った。
「なんで!! イオリは!?」
レンドは驚いている。
「どうも事情が変わった。 ディセンタを探す」
「ディセンタ...... ええ!?」
「すぐに行くぞ......」
驚くレンドを連れて、屋敷内部に入った。




