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スーパースターな男II  作者: 柿井優嬉


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韮沢隆治と杉森圭吾の話⑪

 隆治の右腕から放たれたのは、四球目と一緒のコースの、最高の威力のストレートであった。

 しかし、圭吾ほどのバッターに、二球続けて同じ球など通用しない。バットがばっちりのタイミングで出てきた。

 だが、ボールはそこから鋭い角度で落ちた。実際は、直球ではなく、スプリットだったのだ。それも、ブラウンから初めての対戦のときにホームランを打たれたことで、練習を重ねて、今や、誰が相手だろうが、投げれば必ず三振を取れるというレベルまで磨きがかかった、言わば魔球である。

 けれども、圭吾はそれを読んでいた。ストレートが来る可能性もあるので、そこにタイミングを合わせていたが、遅れてやってくるスプリットのために一拍間を取り、バットに捕らえて、弾き返したボールは、彼が日本のプロ野球での一年目のシーズンの最終試合に、六車から打った優勝を決める当たりを再現したのかと思ってしまう軌道の、まるでロケットのような、バックスクリーンに突き刺さるホームランとなったのだった。

「ウオオオオー!!!」

 そこはパイオニアーズのホーム球場だったこともあり、またもや大歓声がわき起こった。マイナーリーグから昇格してきたばかりなので、すごい選手らしいと多少の情報は耳に入っていた人もいるけれども、観客たちは圭吾についてよくは知らなかった。それが、現在のメジャーリーグでナンバーワンとも評され、今日これまで観てきた圧倒的なピッチングの、隆治を打ち砕いた、ここまでの力量のバッターだったということで、驚きもすさまじかったのである。

 圭吾が、隆治がスプリットを投げてくると読んでいたように、隆治も、圭吾の頭の中にスプリットがあることは予測していた。しかし、本当にすごいボールは、たとえ来るとわかっていても打てないもので、彼もそうして狙われていても抑えられると考えてスプリットを放ったのだが、圭吾はやはり他の打者たちとは役者が違う、異次元の力を持ったバッターだったのだ。

 その圭吾は、ダイヤモンドを一周してきて、チームメイトたちに迎えられるなか、ホームベースを踏んだ。

「アメージング!」

「ナイスホームラン、スギモリさん!」

「グッジョブ!」

「サンキュー!」

 そう答えた彼は、仲間とハイタッチをして喜び合った。

 すると、マウンドにいる隆治がその場に崩れ落ち、地面に両手をつく格好になったのである。

 それに気づいた圭吾は、彼のもとに歩いていき、声をかけた。

「どうした? 隆治くん。悔しいのかい?」

「ええ……」

 グラウンドに、しずくが落ちた。

 隆治は、大粒の涙を流していたのだった。

「悔しいです、とても。ただ、同時に、すごく嬉しい。こんなにも熱い勝負ができて」

 隆治は顔を上げて、号泣したまま圭吾に言った。

「ありがとうございました。夢が叶いました」

 その台詞に対し、圭吾は満面の笑みを浮かべて言葉を返した。

「やりきったって様子だけれど、まだ終わりじゃないだろう?」

「え?」

「俺たちの勝負は、来年以降も続くはずだ。どっちがワールドチャンピオンの一員になれるかというのもあるしね。だろう?」

「……はい!」

 隆治も、涙を流したままではあるが、笑顔になって返事をした。

 そう、彼ら二人の対決は今後も続いていく。

「隆治、よく頑張った」

「圭吾くん、最高だったよ」

 響壱も、芽生も、感動して泣いていたが、同じように、その素晴らしいピッチングとバッティングは、観る人々を魅了し、しっかりと心に刻まれることであろう。



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