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スーパースターな男II  作者: 柿井優嬉


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韮沢隆治と杉森圭吾の話⑦

「ストライーク! バッター、アウト!」

 この危機にも、隆治はわずかばかりの動揺も見せなかった。むしろ、相手チームにとってはチャンスゆえ、「代打で、圭吾さんが出てくるのでは?」と期待したほどだった。残念ながらそうはならなかったが。

 六番バッターに続き、七番も、八番も、下位打線では彼に太刀打ちはまったくできなかった。三者連続三振に、隆治は切って取ったのである。

「……」

 フロンティアーズの選手たち、それに、上のポジションで、プレイヤーにやる気や安心感を与える必要から、少なくとも表向きは平然としていなければならない、このチームの監督やコーチらまでも、隠しきれずにショッキングな顔つきになってしまい、鼓舞する言葉も出なかった。

「皆さん、落ち込んでる暇なんてないですよ。まだチャンスはありますから、頑張りましょう!」

 そんななかで、控えに甘んじているけれども、圭吾が一人、日本のプロ野球時代と変わらず、ベンチ内に元気を振りまいた。

「……おう!」

「そうだよな!」

「サンキュー、スギモリさん」

「しかし、まさか俺たちが、全般におとなしい、日本人に気合いを入れられるとは思わなかったぜ」

 こうして、選手たちは精神面で息を吹き返した。

 かたや、ダイナソーズの面々も、こちらは気持ちが沈んでいるのでは当然ないが、普段から目にしている隆治の素晴らしいピッチングが、この試合では一段とすごみが増し、驚きによって、茫然といった状態になったのだった。

「どうしたんですか? 皆さん。この試合、勝ちましょうね。勝ち星、それから、できることならばノーヒットノーランも記録したいので、得点のほう、ぜひともよろしくお願いします」

 隆治はチームメイトたちに笑顔で声をかけ、こちらも闘争心が高まった。

「わかったぜ!」

「任せろ!」

「向こうのピッチャーのボールなんて、ニラサワと比べたら、子どもが投げているようなものだ」

「見てろよ! お前一人に、おんぶにだっこじゃ、メジャーリーガーとして恥ずかしいからな!」

 そして、八回表の攻撃で、タイムリーヒットによりダイナソーズに一点が入り、均衡が破られた。

 これで、隆治が残りの二イニングを、ヒットを打たれずに得点も許さなければ、ノーヒットノーランが達成する。

 途中までノーヒットノーランをやっていても、ずっと〇対〇で、終盤にようやく味方が点を取るという今回のようなケースでは、緊張が緩んで、直後にヒットを打たれやすいものであるけれども、隆治は変化することなく八回の裏も簡単に相手打線を三者凡退で抑えた。元々最初から、圭吾が出てくる前に球数が増えて交代させられないように、ゴロアウトの間に失点などとならないため、すべて三振を狙って奪った七回の満塁のピンチのとき以外は、なるべく早いカウントで打たせて取ることができるよう心掛けており、あと六人で大記録を手にできるという状況になっても、顔色一つ変えず、わずか七球でこのイニングを終わらせたのだった。


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