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スーパースターな男II  作者: 柿井優嬉


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韮沢隆治と杉森圭吾の話⑥

 それでも、隆治は落ち込んだりはしなかった。

 圭吾は、自分と対決するために、プロの野球選手として復帰し、海を渡り、過酷な環境のマイナーリーグ、それもダブルAから、結果を出して、手が届くところまでやってきてくれたのだ。

 今度はこちらが応える番だ。

 レギュラー陣を完膚なきまでに抑え込んで、向こうの監督に、圭吾さんを起用しようという気持ちにさせてやる——。

 そう考え、あの奪三振ショーを演じたときを上回るほどの素晴らしいピッチングを行ったのである。

「ワーオ!」 

「ファンタスティック!」

「生で初めて観たが、ニラサワはこれほどのピッチャーだったのか!」

 隆治にとってはアウェーだったので、初めはブーイングが起きたが、パイオニアーズのバッターたちがあまりに打てないので静まり返っていった。そして、彼のその見事な投球に、敵チームのピッチャーであるにもかかわらず、観客たちは次第にすごいものを目にできている喜びによる興奮状態になったのだ。

「おい、まだヒットが出てないじゃねえか」

 六回終了時点で、出塁を許したのは、フォアボールの二人だけだった。

「この調子なら、ノーヒットノーランは堅いぞ!」

「でも、向こうもまだ点が入ってないから、わからないぜ」

 言葉の通り、ダイナソーズの打撃陣も得点できておらず、〇対〇のスコアで、七回の裏のフロンティアーズの攻撃を迎えた。

 そのイニングの先頭バッターの、打順は三番である、フィリップスという選手に投じた、内角の厳しいボールに対し、なんと彼は中心打者でありながら、まったく避けずにデッドボールを奪った。メジャーリーガーのプライドをかなぐり捨ててまで、チームの勝利のために塁に出ようとしたのである。いや、勝つべく最善の行動をとることこそが、本当のメジャーリーガーのプライドなのかもしれない。

 隆治は、この試合で初めて、ノーアウトでランナーを出したけれども、落ち着いた状態のままで、続く二メートルもの高さがある四番バッターは平凡なライトフライに打ち取った、はずだった。

 ところが、ライトの選手が、太陽と重なったことにより、ボールを見失ったのだ。地面に落ちてくる寸前で視界に捉えたものの、グローブに当てて弾き、打った打者はアウトにならないばかりか二塁まで進んでしまった。ただし、前のランナーの生還までは許さず、三塁にストップさせた。

 次の五番バッターには、守りやすくするために、監督の指示による申告敬遠が行われ、デッドボール、エラー、フォアボールで、隆治はノーアウト満塁の大ピンチを背負ったのであった。


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