表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

5.Initial MissionⅤ(港ミッション)


振り上げた拳には、ドロドロに付いた血が流れ垂れて地面に零れる。

次第には、鈍い音から弾けるようにビチャッビチャッと音が変わっていく。

殴る度に、顔や服に血が跳ねるもお構いなしだ。


必死にもがいて胸元を握りしめていた手も、力尽きたのか弱々しく落ちた。

それでも、真白は殴るのをやめない。


「―――――――。」


事務所内は、大荒れ。

それを見た風俗嬢たちは忽ち大慌てで逃げて行く。

その声で、我に返ったのか、真白は目を大きくしてハッとする。


「ぁ—————ッ!」


周囲を確認すると、すでに自分で殺した死体だけが転がっていた。

血の臭いが鼻に着くが、慣れてなんとも思わない。


「ありり、もしかして私って、全員殺しちゃったぁ!?」


と、手で口を覆う。


「あぁぁ、、、どうしようぅ~、、、、司令官に怒られちゃうかなぁ?どうしようぅ………………」


真白は怒られるかもしれないという怖さで、オドオドしている。

その時だ、背後で物音がする。

真白が震えている間に、顔が血だらけの男がゆっくりと手を張って扉の方に動こうとした瞬間、

真白はグロック17を剥きだし、見向きもしないで後ろに手を伸ばして発砲。

見事に、男に命中して即死だ。

その後、ゆっくり見返して、死んだ男へと近づきしゃがみ込む。


「ありゃりゃぁ、生きてたんだぁ……………………って、ぁあ!!この人連れてけばよかったじゃぁん!!!!」


『ちょっと!ピーピーピーピーうるさいわね!』


「綾ぁ~!どうしよぅ、皆殺しちゃったぁ!!!」


インカムから聞こえる真白の大声に、綾は一度インカムを耳元から外す。

声が止んだと思ったら、再度装着し直す。


「別に、こっちで対象の男追ってるから良いわよ!アンタは気にしすぎだっての!」


『えぇ?本当ぅ?』


「本当よ!今は………………」


『二人とも聞こえてるか』


瑛士の声だ。


『聞こえてるわ』

『聞こえてまーす!』


声の調子からして、綾と真白は相手を始末し終えた所なのだろう。

思わず、瑛士は手際の速さに笑みを浮かべる。


「今、乃亜と鏡花で敵拠点に潜入中。すぐに、港まで来い。位置は乃亜の案内に任せる」


そう言って、瑛士はインカムの電源を落とす。

それを聞いた綾は、大きく溜息をついた。


「たく、、、こっからどんだけの距離あると思ってんのよ………………」


真白の方は、両腕を大きく振り上げて背伸びする。

そして、外まで走って橋の下に隠してあったバイクに乗り込んだ。


「はいはーいっとぉ!そんじゃぁ、飛ばしちゃうよぉ~!」


エンジンを掛けると、ハンドル間の画面に乃亜から送られた位置情報が表示される。

それを確認すると、ヘルメットをかぶる真白。


「おっけぇ~!れっつらごー!!」


真白は、車の横や、建物の塀すらも乗りこなして突っ切って行く。


     ・


     ・


     ・


     ・


     ・


フェンスを越えて、倉庫側の石堤防陰に潜む瑛士と鏡花。

やはり、ボディガードが厳重に周囲を歩いて互いに交換し合い警戒している。

少しでも気取られれば、対象は逃げてフェリーにの乗り込んでしまうだろう。

そこで、武器の貯蔵の在処。

突き止めてしまえば、こちら側で処理はできるのだが未だに確証はない。


「ねぇ、先に御船さんを壊してしまえば良いのでは?と、思うんだけどね」


横で、欠伸をしながら鏡花は言った。

確かに、逃げる為の手段を潰せれば上出来。

が、人数的に不利だ。

逃げ場のない船上で、むやみに動けば撃たれて終わりだろう。


その時、鏡花と初めて会ったときの事を思い出す。

自分の部屋での、静かな無音行動。

そして、先ほど迄の偵察。


「鏡花。お前は、ステルスが得意か?」


瑛士が問いかけると、

自信満々に偉そうな表情でドヤ顔を見せる。


「まぁね。私と言ったら陰キャ。陰キャと言ったら透明人間なのさ。だから、私は透明人間なのさ」


と、言われるが瑛士はここで突っ込める技量も無い。


「そうか、凄いのは分かった。なら、船の上で静かに殺すことは?」

「可能だよ。でも、その時は銃じゃなくてコレを使うんだけどね」


鏡花が見せてきたのは、鋭く細い針だった。


「ほぉ、ニードル武器か。面白い、なら、船は任せた」

「らじゃだよ、司令官」


即座に、鏡花は瑛士の背後を回って遠回りしながら船に向かった。

そして、残った瑛士は、倉庫をジッと確認する。


「乃亜。真白が到着するまで、どのくらいだ?」


『そうですね。約10分前後と言った所でしょうか』


「丁度良いな。ドローン一台を、突撃させてくれ」


『はい!では、その一台は瑛士さんから出るという事ですね!』


乃亜は、すぐさま一台のドローンを瑛士の待機する場所とは真逆の壁にぶつかった。

その大きな音で、ボディガードが衝突した方向に集中。

その隙に、鏡花は一気に走って船まで駆け寄って行った。

瑛士も、その隙に倉庫の扉まで走る。


「それは、、、、そうだな。もっと良いのを買ってやる」


『やりました!ありがとうございます、瑛士さん!』


倉庫の脇の扉。

ドアノブに手を掛けて回すと、鍵は開いている。

少しだけ音を立てずに隙間を開けて、中の様子を確認。

電気は天上の一つだけで薄暗いが、誰もいなかった。

外も、ボディガードが戻って来た為、中に瑛士は入り込んだ。

壁に背を向けたまま、ゆっくりと窓枠を見つけて中を覗く。

背丈の何十倍もある棚が、綺麗に並べられているが、物は劣化しており長らく使われていない様な状態だ。

それに、壁も錆だらけで、触れた所から表面が崩れ落ちる。


そのまま、壁伝いに内部に繋がる開け放ちの扉から中に入り込んだ。

すると、次第に話し声が聞こえてくる。

棚の後ろで、隙間から覗くと

先には、ライトに照らされた人たちの影。

中央には、銀色のバッグが開かれていた。


「とりあえず、この薬物は今日中に向こうに着ければ良いな」

「では、上海を渡らせて流しますか?」

「あぁ、その為にも今追ってきやがるガキ共を殺すぞ。ちッ、、、北部何とやらって組織もだけど、あいつら学生だろ、、、、、バケモンかよ」


瑛士たちが潜伏しているのに気づかないで、会話をしている。

その様子を、どこから狙おうか瑛士は観察していると、慌てた男たちが中に入って来る。


「あぁ?なんだよテメェら、どした?」

「あ、あの!フェリーに乗っていた護衛が……………………殺られてます!」

「は、、はぁ!!??もうここに居るってのかよぉ!!??さ、探せ!!!!!」


驚きのあまり、口に咥えていた煙草を地面に落とす。

すぐ、男の命令で倉庫内の男たちが銃を構えるのだった。


「……………………今しか、ないな」


瑛士は、隙間から銃口を構えて、一人の男の頭部を撃ち込む。

すると、見事に命中して赤い花火が上がって飛び散る。


「襲撃だぁ!探して殺せぇ!!!」


突如として、銃声音が響き渡り、瑛士の隠れている棚に当たって金鳴り音が響く。

瑛士は、足を掛けて棚を登って行くと、上に吊るされている紐に掴んだ。

そのまま、ぶら下がりながら真反対の方向へと飛び移る。


「上だ!撃て!!撃てェ!!」


天井に向かって乱発射される。

飛び降りた先の男に飛び蹴りを食らわせて、地面に着いて頭を上から瑛士は撃ち込んだ。

その後、棚を足蹴りしてドミノ倒しの要領で中に居た敵たちを一掃する。


「ぐぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「逃げろぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


棚から避けてあぶれた男たちを、一人ずつ正確に瑛士は、歩きながら弾丸を撃ち込んでいく。

途中、隠れていた男に向かって走り込み、近接戦闘を行い首を締め上げる。

そのまま背中に乗せた瞬間、他方からの銃撃を守りながら盾を気づきあげる。


「ホントにガキだぞあいつ!」

「確か、風俗でも女が襲撃したって話だぞ!」

「マジかよ!」

「それも、良い体つきの、、、、、」


冷たい銃口が後頭部に当たる。

その感触が伝わった瞬間、肛門から締め上げえるような鳥肌を覚える。


「悪いが、お前らの下卑た目で俺の部下を語らないでほしい」

「な―――――――ッ!!??」


パキュンッ


弾けた音。

後頭部から貫通した弾丸は、左目を貫いた。

横にいた男も、そのまま銃で撃ち殺す。

中は、煙で巻かれて互いが姿を見えない分、適当に撃ち込む輩が多い。

その中を、瑛士は躊躇なく走り込んで行った。


目の前のナイフを奪って、喉仏を刺し込む。

その後、背後に背中を合わせて相手の脇腹を上と下で二か所刺し込んで、手で押して倒れた所を銃で撃ち殺す。


「居たぞぉ!!」

「まずいな…………………」


思っていた以上に、前線に出ていたせいか瑛士は前方を囲まれていた。

後ろには壁だ。

劣化して薄い板が錆びてもいるし、蹴破れば行けなくもない。

が、その隙に前方から弾丸を撃ち込まれれば終わりだろう。

冷静に、考える瑛士。


ブゥゥゥゥ……………………ンッ


「構えろお前ら!コイツ等のせいで、、、コイツ等のせいでッ!!!!」


ブゥゥゥゥンッ

ブゥン――――――ブゥンブ、ブゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!!!!


バイクのアクセル音。

吹かしてくる音だ。


『接触迄、3・2・・・・・1』


乃亜のカウントダウンピッタリに、瑛士の真上の壁を突き破る。

飛び散った破片が周囲の男たちに当たると、更に横からバイクで数人の男を轢きながら下敷きにする。

右足で地面に着いて、半円を描きながらブレーキをかけてバイクを止める。

そして、ヘルメットを外し髪を左右に振りながら整える、その姿は真白だった。


「司令官、お待たせ!」


思わず、瑛士はニヤケる。


「流石だ、タイミングバッチリだぞ真白・乃亜」


『褒められちゃいましたぁ~』

「やったねぇ!!!」


気分の上がった真白は、バイクから降りるとグロック17を手にする。

少しのジャンプをしながら、


「ねぇねぇ司令官!ここに居る人達全員殺しちゃってもいい感じ!?」

「あぁ、許可する真白。全員、殺せ」

「りょーかい!!!!」


真白は嬉しそうに走り出した。

グロック17で、前方の敵を次々と撃ち込んでいく。


『瑛士さん!後方からも来ますよ』


「分かった。周囲の状況も教えてくれ」


『はい!かしこまりました!』


倉庫の外に出ると、駆け寄る男たちと瑛士は対峙する。

その流れで、フェリーにいる鏡花の元まで向かっていくのだった。

鏡花は、上手く敵の攻撃を躱しながら、ニードルで首を突き刺して動き回っているようで、特に心配はする必要は無い。


「ほっと、、、おりゃぁ」


抜けた声に、男たちはイラつく。


「舐めやがって、、、、こんのクソガキ!!!」

「ダメだよ。大人がクソガキ何て言っちゃ」


鏡花は、すれ違い様に喉を突き刺す。そして、手元から拳銃を奪うと、奥の三人に連続して撃ち込むが、全て肩に命中。


「ありゃりゃ、私って現代武器苦手なんだよね」


と、自分の技量を再確認して残念そうに頭を掻く。

その時、倉庫のガレージが吹き飛んだ。

中から、鏡花の元に掛けて真白の乗ったバイクが走ってくる。


「鏡花ぁ!お待たせー!」

「ぉぉ、真白ん。私の為に?」

「ぅーん、、、司令官の為?」

「何と、振られちまったぜ。なんてね」


瑛士は、二人の様子を確認すると。

途中、方向を変えて歩いて行く。

まだ息がある男に、一人ずつとどめを刺していく先で、対象の男が銀色のバッグを抱えて息を切らしながら走る姿を見つけるのだった。


わざと、男の走る先の壁に向かって数発銃で打ち込む。

驚き避ける先で、片足を後ろから蹴る瑛士。

躓き転んだ男を、足で仰向けに蹴り上げる。


「ぅがぁ!!!……………………ひ、ひぃぃぃぃ!!!!!」


自分の顔に向けられた銃口に怯える男。

徐々に距離縮めて瑛士は、男に迫る。


「お前らは、一体誰の差し金で動いている。答えろ」

「……………………ぃ、言うモノかよ!」

「そうか、、、なら」


瑛士は、顔から次の足に向かって銃口を投げかける。

その刹那、


「ぅぐぁぁぁぁッ!!…………………ぁ…………ぁ、ぁあぁ…………………………………」


男の苦痛の声。

瑛士は男の顔を見ると、口から多量の泡を吹きだして血管を浮き上がらせた眼球を白向きになり倒れた。

頸動脈を手で触れるが、


「くそが。奥歯に毒を仕込んでやがったか……………」


『瑛士さん?状況はどうですか?』


乃亜からの無線だ。


「あぁ、こちら対象者の死亡を確認。服毒自殺だ。この件は、ミカエラに任せるから、俺達は上がるぞ」


『了解いたしました!』


乃亜は早急に、玲奈へと連絡を行う。

瑛士は、倉庫内を通ってガレージをくぐり、真白と鏡花の元に向かう。

二人は雑談をしているようで楽しそうにしていた。

そして、二人の周囲には血でいっぱいの地面。

瑛士を見つけると、真白は嬉しそうにジャンプして手を振るのだった。


「司令官ーー!私やったよーーー!」

「司令官という名の、ボス。任務達成だね」

「あぁ、これで終了だ。俺たちの家に帰るぞ」


真白はバイクに乗り、瑛士と鏡花は乃亜の待つワゴン車に向かって歩いて行った。

丁度、ミカエラ達の部下が港に到着して、すぐ遺体回収へと取り掛かるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ