2.Initial MissionⅡ(自己紹介)
二階へ続く階段を登ると、すぐ手すり壁横を歩いて突き当り。
扉を開ければ、ベッドと机は用意されているだろうと思っていたが、他にも冷蔵庫や椅子にテーブルも用意されていた。
「ここが、瑛士さんのお部屋になります!」
「なるほど。いたって普通だな」
「まぁ、学生寮ですからね。けど、冷蔵庫備え付けって凄くないですか!?」
「あぁ、そうだな」
瑛士は、部屋に入ってベッド上に荷物を置く。
「瑛士さん、今日の案内はどうします?明日でも良いですけど?」
「そうか。なら、明日に頼む。今日は、これでも気疲れした方だからな。少し寝る」
「はい!任されました!では、ご飯ができ次第お呼びしますね!」
そう言って、乃亜は元気をそのまま通して部屋を出る。
出る時も入る時も、律義に一礼するモノだから、ある意味では瑛士は感心していた。
「ふん、全く。騒がしいな……………………」
瑛士は、力が抜けたようにベッドで仰向けになる。
(渡米してたからな、、、疲れと言うよりは時差か、、、、、、流石に眠く、、、、、、なって、、、、、、、)
瑛士は、意識が薄れる中、思考も途切れ途切れになる。
そして、遂には目を閉じて眠っていた。
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意識が戻るように、目が少し開眼する。
「――――――ん」
天井は、暗い空間でうっすらとしか見えなかった。
部屋の状態からするに、夜なのだろう。
ベッドから体を起こして、正面を向く。
すると、目の前には一人の少女が暗闇に紛れて立っていた。
「お、起きた」
「お前は誰だ」
瑛士は、目を細めて睨みをきかせた。
「おー怖い怖い。ダメだよ、そんな顔を女の子に向けちゃぁ」
なんともやる気の無いような力の無いような声。
此方の気迫も削がれるというモノだ。
「あ、姿が見えずらいから警戒するのか。ではでは…………」
少女は、部屋の電気をつける。
最初の点灯が二、三回起こると一気に明るい電気が部屋を照らした。
すると、さっきまで話をしていた少女の姿は無かった。
それでも、瑛士は焦ることはしない。
一度、呼吸を深く吐いてから目を閉じる。その後、右目を開けて横に向ける。
「俺を確かめているのか」
「お、バレちった?」
「バレるも何も、匂いで丸分かりだ」
その言葉に、少女は袖の長い手で音のならない拍手をする。
「ぉぉー。流石。流石司令官様、代官様。匂いフェチ……とも言うのかな」
「誰がフェチだ。それより、早く俺のベッドから降りろ」
「ぉぉ、すまないね」
力の無いように見える足取りで立ち上がる。
良く見ると、少女の髪はセミロングで白髪だった。
服のサイズが合っていないのか、スカートは履いているのだろうが、服が大きすぎてカーディガンから生足が出ている状態だ。それに、絶滅危惧種に認定されそうなギャルが履いてるダボダボ靴下。
袖は、さっきも言ったように手元が出てないどころかぶら下がっている。
余計に、姿もやる気が無さそうで、目も眠そうだ。
「それで、お前は誰なんだ?」
「ぉぉ、いっけないいっけない。私はね『凌木 鏡花』だよ。よろしく」
「俺は、広瀬瑛士だ。いい加減、何の用なのか教えてくれても良いんじゃないのか?」
「ぉぉ、そうだったね。乃亜がね、ご飯できたんだって。だから、呼びに来たんだ」
「あぁ、夕食か」
確かに、食事ができたら呼ぶと入っていたが、
まさか、乃亜じゃない人が来るとは思ていなかった。
「それじゃ、私は呼んだので、来てね。来なければ私が喰ってやる…………とうッ」
擬音を自分の口で放ち、鏡花は瑛士の部屋を出て行った。
そんな彼女の後を、追うようにゆっくりと瑛士も歩いて階段を降りるのだった。
徐々に美味しそうな焼けた匂いが漂い鼻を刺激させる。
居間の扉の取っ手を手に取り、中に入ると、テーブルの上には盛大にパーティのような盛り付けの料理ばかり。
「瑛士さん!こっちにお座りください!」
乃亜だ。
瑛士を座席へと誘導して、座らせる。
その横には、二番目にあった綾が腕を組んでぶっきらぼうに座っていた。
「なんでアンタと隣なのよ」
よほど自分との隣が嫌だったのだろう。
「なんだ、お前。思ってたよりも背が小さいんだな」
「―――――――ッ!!!???なんですってぇ!!??もう一遍言ってみなさいよぉ!!!!」
地雷だったのか、椅子の上に立ちあがって瑛士を見下すように指をさす。
真顔だった瑛士も流石に、驚いたのか数ミリだけ口が開いていた。
「悪い、お前とは呼ばないから座れ」
「お前呼びに怒ってんじゃなくて、小さいっていたことに怒ってんのよ!!!」
「そうなのか?」
「……………………このぉ!!」
良く見なくても分かる。
綾の顔には、怒りマークが無数に付いているのだろう。
キッチンでは、乃亜が口パクで瑛士に伝えていた。
い・ま・は・あ・や・ま・っ・て・く・だ・さ・い
(そうか、まずは謝るか)
「すまない綾。口が過ぎた」
「―――――あ、謝っただけで許すわけないじゃない!けど、でっかく乃亜が用意した歓迎会だしぃ?別に良いんだけど!」
と、そっぽを向かれる。
その後、瑛士は更に乃亜を向くと、乃亜は満面の笑みでジェスチャーで拍手をしていた。
次第に、皿の方も用意されていき瑛士の横に綾だったのが、誕生日席に瑛士が移り、鏡花が変わった。
その向かい側には、乃亜ともう一人が座る。
自己紹介よりも先に、乃亜の言葉により挨拶が始まる。
「それでは。私たち『shadow』に正式に司令官が着くこととなりました『広瀬瑛士』さんです!今日は、歓迎も祝して親睦を深めながら美味しくいただきましょう!では、皆さん手を揃えて~……………………いただきます!」
「「「いただきます!!!」」」
「……………………頂きます」
乃亜の合図で、食事が始まる。
瑛士が箸を持って、おかずを皿に取り分けようとすると、すかさず皿を奪われて代わりにおかずが乗せられていく。
その手の先の主人へと瑛士は目線を移すと、そこは初めて見る女性だ。
明るい褐色の長い髪。
血色のいい肌に活発そうな瞳で、紫色の瞳孔。
頬は、血色が良いせいか赤く染まっている。
体を横にリズムに乗せているのか、微小に揺れていた。
「お前は、、、誰だ?」
瑛士の言葉に、少女は目を横に瑛士を見るとおかずを取り寄せ終わった皿を瑛士に渡す。
それを受け取ると、少女は言った。
「私が最後だったね!私は『晴崎 真白』だよ!よろしくねー司令官!」
「そうか、俺は広瀬瑛士だ。よろしくな」
「うん!よろしくねー、ホラ、もっと食べないと!!ホラホラ!!!」
想像以上に活発な子だ。
盛ったばかりのおかずに、更におかずを寄せようとして来る。
止めないと、永遠に、自分が食べる食料が増え続けるだろう。
「もう大丈夫だ。俺は俺で盛る」
「そぅ?じゃぁ、私食べちゃおー!」
遠慮なく真白は、おかず達に手を伸ばして食を進めるのだった。
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コンコン……………
「入って」
ドアがノックされ、ミカエラの合図に扉が開かれる。
すると、そこには広瀬瑛士との面会でも側近で居た小柄な黒い名簿を持った女性『真崎 玲奈』が立っていた。
「ミカエラさん、ご報告です」
「何かしら?」
「ぇ、えっとぉ………」
玲奈は、黒い名簿に挟んだ書類をめくりながら探す。
その様子を、苦笑してミカエラは頬に手を付いて玲奈を見つめる。
そして、玲奈の手は止まり見つけた時の喜びの表情を浮かべる。
「ぁった!……………っと、その、北部部隊で追っていた暴力団なんですが、秘密裏に武器を外部から流しいれていた為か、逃亡を許してしまったそうです。それを…」
「その暴力団を、代わりにこっちで潰せって事でしょ?」
「はいッ、そうなりますッ」
「……………………はぁぁ」
深く溜息をついたミカエラに、玲奈はオドオドしながら言う。
「ぁ、あの、どうしましょうか?」
「どうしようにも、受けるしかないでしょぅ…………………………………良いわ。玲奈、受理して引き受ける有無伝えて頂戴。私からは、瑛士に伝えておくから」
「わ、わかりましたッ」
玲奈は、部屋を出て行く。
ミカエラは、椅子をクルリと回転させて窓へ体を向けると星空を見上げる。
「ま、瑛士の活躍も見れるから良いのかしらね……………」