第8話 記憶喪失
週初め
「行ってきます」
玄関のドアを開け、外に出る。
いつも通りの道を通り、いつも通りの風景を見ながら進んでいく。
しかし熱いな。なぁ?魔王
魔王(季節か。夏は特に嫌いだ。ただ熱いだけで体力を奪われる)
そんな感じの会話をいつもしながら、学校に登校してる。
学校に着くと何人か既に教室にいて、雑談をしていた。
その中に一ノ瀬がいないことに少し残念しながらも、自分の席につく。
魔王(真、一ノ瀬華恋という転校生だが奴は能力者かもしれん)
一ノ瀬?誰だっけ?
(おい、転校生の一ノ瀬だぞ。思い出せ)
んーそう言われれば、いたような気もするけど…。んで、その一ノ瀬が能力者だと?能力者てのは何だ?
(能力者ってのは、簡単に言ったら我の力を使える真や2年近く前に戦った重力使いやらのことだ)
それが能力者と…なんかありきたりすぎじゃないか?
(我が今適当につけたからな)
まじか…で、なんで分かったんだ?
(みんなここ最近、奴が来てないことに気づいてない)
来てないって、そういえばそうだな。どれくらい来てない?
(そうだなざっと一月ほどか)
そんなに来てないのか。全然気づかなかった。それで気づいたってわけか。
(その内、我と貴様を殺そうとしてくるかもしれん、今のうちに倒しておかないか?)
その方が良いのかもしれないが、うーん…。
てか、そもそもどうやって会うんだ?
(俺の力を使う)
どうやっ…
(では行くぞ)
あちょ…
体の力が一気に抜けていき、魔王が体の支配を得る。
「よぉーし、行くぞ!」
放課後 学校の屋上にて。
野球部とサッカー部の練習風景を眺めながら、これまでのことを一旦考える。
あのあと魔王がいろんな人に一ノ瀬について聞いてまわった。が、誰も彼女のことを気にしてなかった。というか憶えてないような反応だった。俺もその一人だったし。
「かなり状況はまずいかもしれん」
(そうなのか?)
「あぁ、学校全体がやつの術中にある。今この瞬間も我自身、一ノ瀬を忘れそうになっている」
風が不穏な気を運んでくる。居心地が悪い。
でもどこか心地良いような。変な気分だ。
「そろそろか」
何がこれから起こるか分かったような口ぶりに疑問をもっていると、空が暗闇に包まれた。
そして、屋上の扉がキィーと悲鳴をあげながら開いた。
「来たか」
それはコツコツと音を立てながら向かって来るが、暗くてよく見えない。
(我の目を使え)
そう言うと、俺の視界がぱっと開け暗視できるようになった。
そこに彼女がいた。
転校初日以降一度も話さなかった一ノ瀬華恋が。




