第5話 例の場所
3月に入った。
あの戦いのあと、目を開けるとなぜか自分の部屋にいた。あれが現実だったのか、夢だったのかはわからない。でも、魔王を狙ってきたやつがいた事だけは分かる。
「なぁ魔王」
(なんだ?)
「俺が交通事故を起こした場所に行かない?」
(あの場所にか?)
「あの日、俺が交通事故をおこした事で、俺と合体したんなら、もう一度あそこに行けばなにか分かるかなと思って」
(一理あるな。では来週行くぞ)
土曜日
俺と魔王は例の場所にいた。
「着いたけど、やっぱり何もないね」
(うーむ、もう少し周辺を歩こう)
「おっけー」
ふと、自分が立っている場所とは反対側の信号の真下に人影が見えた。
「なんだか変な気分だ」
(こいつはマズイぞ)
「魔王?おいどうした!?」
信号が赤から青に変わりこちらに歩いてくる。
避けようにも体が動かないことに気づく。正確には体に重りが乗っているかのように、ひどく重くんじている。
真(くそ、な、なんで…動かない)
相手は避けようとせずゆっくりと近づいてくる。普通ならなんなく避けれるほどの距離、そして速さなのに今の真には動くことすらままならない状態だった。
横断歩道の真ん中、3メートルほどの距離をあけて立ち止まると相手は口を開いた。
「久しぶりだね。覚えてる?」
「…うっ…」
「おっと、君には用は無いから口は開けないほうが良いよ。二度と開かなくなるからね」
(俺と変われ!)
(わかった!!)
自分の精神が魔王と入れ替わり、魔王が肉体の自由を得る。
「まさか入れ替わることが出来るのか?まぁ、肉体もろとも消せばいいだけの話」
どうして、俺と魔王が入れ替わったことが分かるんだ?
「聞きたいことはないし、死んでもらおうか」
男が右手を前へ出すと空間がゆがみ始め、手のひらに高密度の重力エネルギーが集積し始める。
「凝縮」
(魔王何か出来ないか?)
「焦るな」
そう言いつつも額に汗が滲んでいる。
「発射」
極限まで集められた重力エネルギーがブラックホールになり、あたりを吸収しながら真めがけて放たれた。周囲の空間が歪みながら、ゆっくりと近づいてくる。
(まずい!直撃するっ!)
「ココだな。終末の月日」
真が直撃を覚悟したと同時に巨大な重力エネルギーを持つ謎の光を放ちながら消失していった。
(な!何をしたんだ?)
「おいおいやってくれたな。一切動かなかったのは俺の攻撃を消すためか?」
なおも魔王は口を開かない。
「どうしたー?無視かー?なら直接攻撃しに行こうか、な!」
敵は足を踏み込んだと思った瞬間、一瞬にして真の顔面に蹴りを入れてきた。
かわしきれるわけも無く真は吹っ飛ぶ。
だが、顔にも体にも傷一つ付いてなかった。
(まおう?)
「はぁ…ようやく体が動く。真、帰ったら筋肉痛になっても良いな」
俺の返事を聞かずに真は突っ込んでいく。
(ぁえ?)
「来るか!」
ゴーレムを倒した際に使用した魔力玉の小型版を放つ。
「グラビティ・プリズム!!」
すると、魔力玉は軌道をそらし全くの別方向に着弾した。
その間にも魔王は距離を縮めていき、射程圏内へ突入した。
「それにしても人間を依り代にしているとはね!」
相手は重力エネルギー波を放つがそれも相殺される。
「お前はもう何も喋るな」
そう言うと真の気づかないうちに、背後に回っていた。
「な!」
「果てのない・理想郷」
魔王が言うと光の粒子となって消え始める。
「ク、クソガァァァ!!」
「…っ!」
肘打ちをみぞおちに喰らい、声が漏れるが、相手の肉体は威勢の良い声とは対照的に見る見るうちに無くなっていった。
数秒前そこにいた敵は跡形もなく姿を消し、あるのは俺と魔王だけだった。
(何をしたんだ?)
「特に何も。ただやつに終わりのない幸福を与えて毒素を抜き続けただけだ。最も肉体が耐えきれずに消えてしまったがな」
(まじかよ)
「さて、帰るぞ。ここには何も無かった。が確かな収穫はあった」
(それっ)「て?」
と、最後まで言う前に身体の自由が元に戻った。
魔王(今はまだその時じゃない。時が来れば奴の方から来る)
「新しい敵ってことか」
(…まぁな)
魔王はそれ以上喋ることはなく。俺もそれ以上問いたださなかった。
その日、俺が筋肉痛になったのは内緒。
〜用語解説〜
・今回襲って来た敵は、魔王の同期です。なぜ名前を2人とも呼ばなかったのかは、単に覚えてなかったのと仲がそこまで良くなかったからです。
ちなみに名前はアトラスです。




