2話 変わりゆく日々
1月末、魔王との生活にも慣れ一か月が過ぎようとしていた。
「はぁ、はぁ」
俺は今、学校の体育の授業でサッカーしている。
「違う、そうじゃない!」
俺の後ろでいちいち指示してきているやつは魔王?ていうやつらしい。ファンタジーならよくいるキャラだけど、まだ今いちピンときていない。
(うるさいなー、じゃあやってみろよ)
(よし、ではやってみよう)
(え?)
突如、身体が急に軽くなったかと思うと自分の身体から自分が出てきた。
(な…なんだよこれ)
(うん?やってみろと言われたからやってみただけだ)
(まじか…そんなことできんのかよ)
体育の授業で珍しく活躍した俺はその日、いつもより人気になった。
帰りの会が終わりランドセルを背負い、教室から出ると裕夢が話しかけて来た。
ちなみにあれから裕夢と伊倉さんは付き合い始めた。
「なぁ、真」
「うん?」
「体育の授業の時さ、なんか動きおかしくなかったか?」
「そう?だな、確かになんかいつもより身体が軽くなったような気がしたんだよ」
魔王のことはまだ、誰にも言えていない。言おうと思ったが信じてくれないと思ったし、イタイやつになりそうだったので、やめておいた。実際クラスにいるし。
「そっか、良いなぁ…て、この後一緒に帰る約束してるからじゃあな」
「あぁ」
軽く手を振り、裕夢が見えなくなるまで、その場に立っていた。
さて俺達も帰るか、なぁ魔王。と魔王に話かけたがぶつぶつと何か言っていて、俺のはなしは聞いてないみたいだった。
家、真の部屋
「なぁそろそろなんか言ってくれよ。一人でいるはずなのにお前が見えるせいで、なんにもやる気が起きないんだよ」
「うるさいぞ、シン」
「は?今なんて…」
「だからうるさいと言ったのだ」
「なんだよ、それ。その態度」
「フッ!今の我は貴様をいつでも操ることが出来ると分かったからな。これからは好き勝手にさせてもらうぞ」
「いやお前、何言って…」
最後まで言いおえずに、体育の時のように身体が軽くなったかと思うと、魔王が姿を消し、代わりに視界に俺がうつりこんでいる。
「どうだ!」
「おま!何してくれてんだよ。速くどうにかしろ!」
「悔しいか!?だったら自分でとりかすんだな。では食事を取りに行く」
「おい!」
俺の体を乗っ取った魔王が階段を降りていき、リビングへと向かうと既に何人かが椅子に座っていた。
母「あら、真もうすぐ出来るから呼ぼうと思ってたとこなのよ」
真「そうか、ありがとう母さん」
(なんだよ、その口調変だぞ)
咲希「なんだか今日の兄さんはいつもよりキモいですね」
真(おおー気づいてくれたのが、さすが咲希だ。いつもツンツンしてるけど、兄をよく見てくれていたんだな)
真「おい、言い過ぎだぞ。咲希」
キモい手の動きをしながら、咲希に視線を送っている。
咲希「それです。ホントにキモいので辞めてください」
母「ほら、2人共仲良くしなさい。ご飯は美味しく頂きましょう」
真、咲希「「はーい」」
母「それじゃいただきます」
みんな「「いただきます!!」」
夕食後、まおうと雫、白空の3人でゲームをしていた。
真(ところどころ、変な部分はあったけど大丈夫だったな。って俺の体かえせよ!おい魔王聞いてんのか?)
まおう(聞こえんな、今は話しかけてくるな。と危ない)
真(くそ、どうすりゃ良いんだ…)
結局その日、俺の身体は魔王に取られたままだった。