第11話 OperationΣ
カァーカァー。
カラスの声で朝がきたことが分かった。
「ん、あぁ〜〜〜」
よく寝た、さて顔を洗って歯を磨いて、朝ご飯食べて着替えて行ってきまーす。ん?
待て待て待て、誰だよあの人。
視界にずっと入ってたのに無視してたわ。
「ただいまー…」
ゆっくりといえに入る。
リビングに知らない男がいる。
「あら、おかえり真。何か忘れ物?」
「おー!!!」
背後からの声で驚き、尻もちをつく。
なんだ母さんか…て、男の方はこちらに気づいてしまっている。
こうなったら…。
母さんを連れて玄関に一緒に行く。
「だれ?あの人」
「誰ってお父さんの知り合い」
「父さんの?」
「そうよ。近くに来たって連絡があったから、呼んだの」
そうか、父さんの知り合いか。
真はチラッとリビングを覗くと目が合った。
まじか、気づくのか。
「とりあえず…行ってきます!」
ガチャリ。
「誰に似たのかしらねぇ」
「子は親に似るとは言うが間違ってないな」
父の知り合いなんて、今まで一度も来たことないのになんでまた…て聞きたかったけど、逃げてしまった。
あの人は何か知ってるそう思ったからだ。
「なあ魔王、お前もそう思うだろ」
(アイツはたしかに強いがおそらく何も知らんだろう)
「なんでそんなこと思うんだ?」
(まぁ理由はいろいろあるが、我の存在に気づいていながら奴は何もしてこなかった)
「え!?ほんとに?」
(あぁ間違いない。それに今のお前では華恋同様勝てん相手だ)
「そうかい、じゃあいいよ。あの人に鍛えてもらうから」
(なぜだ?)
「おれも強くなりたいから?」
(それは分かるが…なぜやつなのだ?)
「今身近にいる強くて信頼できそうなのが他にいないし、これから魔人とか相手になるかもしれないんなら強くなるにこしたことはないだろ?」
(…真、くれぐれも無茶はするなよ)
「止めなくていいのか」
(いざってときは我も力を使うし、まぁどうにかなるだろう)
よしそうと決まれば今日はさっさと帰んぞ!
学校に行く足が幾分か速くなった。
学校につくと華恋が机に座り外を見ていた。
俺は彼女を視界から外さないように注意していたがなにもしてこなかった。
久しぶりの学校てこともあっていろんなやつに話しかけられたが、結局華恋は俺と会話をせずにどこかへ行った。
「…ん、…しん…真!」
「っうおっ!いきなり話しかけんなよ八重都」
八重都は俺と同じクラスで良い奴だ。それ以外の説明はまぁいらないだろ。いちいち説明してても話はすすまんからな。
「なんだよ、じゃないよ。真お前やっぱ一ノ瀬さんのこと好きなのか?」
「なんで俺が一ノ瀬を?」
「だって今日も見てただろ?転校してきてからずっとお前見てるじゃねえか。好きなんだろ?」
はぁ…面倒くさいな。今は恋とかいいんだよ。
「それで良いよ」
「よしそうと決まれば告ろうぜ」
そうゆうと俺の腕を引っ張ってくる。
「いや!ちょっ…ちょっとまて〜!!!」
なんでこうなるんだ。
屋上で俺は嫌いなやつを待ってて告白する?そんなの…
キーと悲鳴をあげながら屋上に続く扉が開いた。
開いた扉から髪を綺麗に束ねた女性、一ノ瀬華恋が出てきた。
「それで…って紅くん、これは…なにかの冗談かな?」
めんどくさそうな顔をしてきた彼女は俺を視界に入れた途端さらにめんどくさそうな顔になった。
手には手紙を持っている。
やってくれたな八重都、やっぱお前ヤナ奴だ。
「あーええと…」
目を逸らすと、華恋から見えない角度から八重都がジェスチャーをしてきている。
「すぅーはぁー…一ノ瀬華恋さんあなたのことが好きです。付き合ってください」
「…………!」
華恋の顔が一気に赤くなり、手で顔を隠した。
「な!…え?え…?あえ?」
「返事をお願いします」
「…ええと、私は君を殺そうとしたのにどうして?」
ん?なんか雰囲気が変わったか?
「それは、一目惚れしたから?」
嘘ではない、嘘ではないんだが、やっぱり告白するほど好きってわけじゃないんだよ八重都。
「ふふっ、どうして貴方が疑問形なんですか」
顔を隠している手の隙間から、可愛い笑顔が見えた。
え?かわいい。
「それは、その…」
真も照れているのか顔が赤くなった。
「返事、ですよね。」
「はい」
「よろしくお願いします」
彼女は己の心を表しているかのような、つむじが見えるほどのお辞儀を見せた。
見つめ合う2人、その後屋上を後にした…。
次の日
「と、なに書いてんだ!お前ー!!!」
真の手にはスマホがあり、画面には「初恋の君に送る讃歌」と書かれたタイトルの作品が映し出されていた。
「悪い、悪い真、途中から面白くなってきてさ…。寝る間も惜しんで作っちまった」
「作っちまった。じゃねぇ!なにネットに掲載してんだよ!すぐに消せ」
「で、でも掲載した以上、俺に消すという選択肢はない。ほら、賞が貰えたらなにか奢るからさ、なっ!良いだろ?」
「お前…。」
仕方ない許すか。なんて言いたいところだが、ここで引き下がるとまたなにかしそうだ。
「分かった。まぁ良いや、でも俺が告白したんだ。お前も告白しろ、じゃないと俺は今後一切口を聞かない」
(子供っぽいな)
おい、それ今思ったやつ!てか!、なんで魔王お前いんだよ。
(いて悪いか?)
「真、そりゃないぜぇ〜!!」
1時間後
「真、真!ノート見せてくれないか?」
「…」
さらに1時間後
「真!今日遊ばね?」
トイレから出たところを待っていた八重都に目もくれず、一緒にいた人達と会話を続け、教室に入っていった。
「………」
「待ってくれ!しーーーーん!!!!」
昼休み
「よぉ真、遊ぼーぜ」
「さてと…」
席を立ち、どこかへ行ったと思ったら、グラウンドに出ている真の姿が目に入った。
「よし…」
「しーーーん!!サッカーやろうぜ!」
「あれ、八重都?珍しいなお前が外に出るなんて。サッカー?やろ!なろ!」
「な、ちょっ…ハメたな!しん!!」
放課後
「ぜぇ〜はぁ〜。真、帰ろう…ってもういないし」
校門まで急いで向かう。
途中で先生に見つかったが、すぐに階段を降りることで誰が走っていたのかバレずに済んだ。
下駄箱につくと、ちょうど校舎から出ている真が視界にうつった。
「待ってくれ、なぁ悪かった消すから許してくれ」
真が立ち止まる。
「…はぁ…じゃあ俺がどうして怒ったか分かるか?」
「あぁ…俺が一人で盛り上がって告白させて、さらに小説まで作っちまったてことで怒ってるんだよな」
正直、もう怒っていない。八重都と話さないてだけで、こんなにキツいとは思わなかった。
「そうだなー…及第点てとこかな」
「じゃあ、!真」
「許すよ」
「!!」
「でも今日は他の友だちと帰るよ。お前が来ると思って待たせてるし」
「…そっか、じゃあ俺もまぜろ!」
「ったくしょうがないな。行くぞ」
「おうよ!」
2人が太陽のように輝く笑顔を見せながら、校門を後にした。
その後、八重都が書いた小説が賞を取ったのはまた別のお話。
「ただいま」
誰もいないのか?
普段家に帰ると、電気がついたリビングから雫が来るのだが、今日は電気がついていない。
「母さん?」
ガチャリとドアを開け、中へと入り、電気を点けたがやはり誰もいない。
部屋にいるのかと、咲希の部屋、雫と白空の部屋、最後に母さんの部屋に入ったが本当に誰もいなかった。
自分の部屋に荷物を置いてみんなを探しに行こうかと、取っ手に手をかけると背後から話しかけられた。
「真、帰ってきたか」
「!?」
後ろを向くと、暗くてよく見えないが、今朝あったばかりの父さんの知り合いがいた。
「どうして…あなたがみんなを?」
「違う、連れ去られた」
「連れ去られた?」
突如、頭痛と共に脳裏に泣いている雫と白空の姿が流れてきた。
「どうした?真!」
「だ、大丈夫です…それで…どこに行ったか分かりますか?」
「分かるが…聞かないのか?」
聞く?なにを?
「なにをですか?」
「お前は何をしてた!みたいなことを言われるかと思ったんだが…」
「もしそうなら、すでに俺は襲われてます。事情は分かりませんが助けることができない状況、もしくは、あなたが犯人だった場合、複数人の犯行で、一人で残り先にみんなを連れ去ってから帰ってきた自分を協力しているとみせかけて仲間全員で襲う。それが一番手っ取り早いと思ったんではないですか?」
「…ふっ…バレていたか。と言いたいとこだが、喋りすぎだ。真、それじゃダメだ」
なんだコイツ。癪に触るな。
「では目的は何ですか?」
「それはだな…て今はとにかく向かうぞ」
「得体の知らないあなたと?」
「貴様が信用するか、ついてくるかなどどうでもいい、私は助けたい人を助ける。それだけだ」
しばらくして、俺たちは普段の生活で行くことがないであろう廃工場にいた。
道中、名前を聞いたが皆からはナナシノと呼ばれていて、名前は分からないらしい。
「ここにいるんですか?」
「ニオイがする」
ニオイって、まるで臭いみたいな。
「行かないんですか?」
「敵が何人いるかも分からないのに死ににいくようなものだが、行くか?」
「じゃあどう…」
「喋るな」
目線の先を見ると大きなコンテナから何人か覆面をつけた人達がぞろぞろと出てきた。
なにか硬い?ものが当たったので、再び視線を戻すと祭りで売ってるようなヒーローのお面を渡してきた。
「…これは」
なんとなく受け取り無意識そう言うと、渡してきた当の本人はかっこいい狐面をつけている。
「ついてこい」
そう言うと、さっと垂直に降りていった。
「え、…」
仕方なく手に持った面をつけ、降りようとしたが下を見ると体が拒絶した。
「何をしてる、置いていくぞ」
下から声がする。仕方ない。
「魔王、力貸せ」
(仕方ない)
魔王と真の肉体の主導権が入れ替わる。
「行くぞ」
勢いよく飛び出した真が垂直落下し、着地した。
お面ごしに顔が合うとそのまま顔で合図を送り、走って物陰に隠れる。
コンテナの外に4、5人ほどおり金属バットや、棒状の木などを持っている。
「少し、離れてろ」
そう言うと狐面のナナシノは小型の球を取り出しスイッチを押した。
ピッと鳴ったのを確認しバット目がけて放った。
バットの男は球に気づくとバットを一振りしたが煙がでて爆散した。
煙が発煙したのを見るとナナシノと一緒に中へと入り込む。
中には誰もいなかった。
辺りを見渡してもどこにも居ない。
「いやーやられましたわ」
「!?」
背後から声がし、振り向こうとしたのを閃光が肩を貫いた。
(これは!?)
「…」
「ふっ…ハハハ、外しちゃったよ〜。ごめんね」
「貴様、何をした!」
真の前に立ちつつ身構える。
煙の中からゆっくりとシルエットが現れてくる。
目に眼帯をつけ、体はフードから機械と化した右手が出ており、指先には先ほど出した閃光の正体か、煙が出ている。
「いつもなら即死のはずなのに、一体どんな術を?」
「こちらが質問している!」
「まぁまぁ穏便に行きましょうや、さっきからうるさいねん。きみぃ」
ナナシノが反応するよりも速く、一瞬で間合いを詰め指先から発砲した。
「くっ…!」
攻撃をかわすために無理な体勢を取ったせいか、蹴りを入れたが決定打には至らなかった。
「いやー危ないなぁ。荒っぽい戦い方、粗末な服、きみぃもしかしてナナシノやないか?」
「30年近くどこにおったんよ。兄ちゃん心配しとったで」
え、兄ちゃん?この人が?
「誰だ貴様!」
いや、知らんのかい。
「寂しいなぁ、血を分けた兄弟やのに」
眼帯の男はフード越しから無数の弾を発射した。
「神速」
突如ナナシノが消え、残像だけが残る。
(違う、見える精神だけが浮いているからか、高速でナナシノが弾を足で落としている。)
「ヤツは強いな」
怖いことにこの場にいる全員がその姿を目で追えていた。
「神速か、俺には通用しないよ」
ゆっくりと右手を構え地面に突き刺す。
そんなことを気にせずナナシノは弾を落とし終え、間髪いれずに蹴り上げようとした。
が、不発に終わった。
「百発百中弾」
もろに受けた体から血が滴り落ちている。
俺の方は魔力の込めた拳で床を殴り、地面を歪ませることで弾が出ることはなかった。
「ふっ…はっふっはっ!大丈夫か!ナナシノ!」
「Operationシグマ発動…」
「OperationΣ発動致します」の機械音声と共にどんどんメカメカしくなっていく。
最終的に全身がメタルスーツのようなものに覆われた。
「いつの間にそんなの手に入れた。それは、それを使っていいのはあのお方だけだ!」
「うるさい、喋るな」
瞬きの内に眼帯の男の前にいたはずのナナシノが後ろに立っていた。
「な…なに…」
遅れて眼帯の男の首に線が浮き彫りになったかと思うと、首が吹っ飛び血が勢いよく噴き出た。
そのナナシノの後ろ姿がひどく目に焼き付いた。
「か、かっこいい」
いつの間にか俺と魔王も戻っていた。
「どうやってやったんですか」
「3、2、1、OperationΣを解除します」機械音声と共にメタルスーツがとけていき、元の人間の姿に戻った。
「そんなことより大事なことがあるだろ。行くぞ」
「はいっ!」
奥へと進んだ先に、皆縛られており全員なんとか帰ることができた。
結局、あのかっこいいメタルスーツについては教えてもらえなかった。
だがその日から真はナナシノのことを師匠と呼ぶようになった。




