番外編 一ノ瀬華恋
私はいつも一人だった。
どこに行っても、誰といようとそれは偽りの私でしかない。
じゃあ、本当の私って何?
教えてほしい。でもその答えを教えてくれる人も知ってる人もいなかった。
だからいつも自分の身体を傷つけることで、自分という存在を消そうとしてた。
もし、体が痛くなくなった時そこに私が嫌いなわたしがいないと思ったから…。
朝、戸を開けて廊下を歩いているとどこからか執事の大田が現れた。
執事として、私が産まれ時にここに来たらしい。
「おはようございます。お嬢様」
同年代ぐらいなのに敬語を使われてムズムズするけど、小さい頃から一緒だったせいか他の子よりも接するのに遠慮がいらないから気が楽だ。
「おはよう。大田」
「お嬢様、今朝は顔色が悪いようで。本日学校はどうなさいますか?」
相変わらず勘が良いようで…
「学校には行きます。それより…今日はいる?」
「母上は会食だそうです」
「そう…」
そこまで話したとこで広間に出た。
オーダーメイドの長いテーブルにテーブルクロスと燭台がいくつか置かれている。
そこにある1番端の椅子に座る。
執事の大田は私の後ろにつく。
そして、コック長が料理が運んでくる。
白いご飯、ソーセージや目玉焼き、味噌汁、サラダといったいつものメニューがテーブルに綺麗に置かれていく。飲み物は牛乳。
御父様の伝手に酪農の人がいるから家にいっぱいある。
これがいつもの朝食。
「それじゃ行ってきます」
「行ってらっしゃませ。お嬢様」
大きな玄関の扉を開けて出ていく。
今日こそ私はどこか遠くへ行こうと思ってた。
それなのに気づけば自室のベッドに横たわっている。
「はぁ…何やってるんだろ。わたし…」
ふと窓に目をやると雨が降っていた。
滴る雨のようにどこかに流されたい気分だ。
「ん?」
窓越しに誰かが見える。
でも、雨で誰がいるのか分からないがおそらく一人は大田だろう。
あれ、こっち見てる?まさか、え?
華恋がソレをかわそうと体を動かしたのと同時にパリンッという音が鳴り、側頭部に何か鋭い物が当たった。
飛び散った窓ガラスの破片も頬や手に刺さる。
い、痛い…痛い…痛い!なにこれなんで……
鏡に映る姿は血を側頭部や頬から流しながら笑っている顔があった。
いけない、とにかくここから出ないと…!
あれ力が入ら…
華恋はその場に倒れた。
病院
包帯が全身に巻かれた彼女がいた。
あの後一ノ瀬の家は何者かに放火され、全焼した。
わたしはあの日死んだ。
ようやく死んだと思った。
なのにねぇどうして、どうして!…
「お嬢様、りんごです」
口に力が入らない。
ねぇ、大田あなたどうして生きてるの?
あなたは何がしたいの?
「りんごはいらないですか…では私が食べます」
シャキっとした音を鳴らしながらりんごを食べすすめる。
「では、また来ますね」
もういいや、どうでも。寝よう。そしてもう考えるのも辞めよう。今日も明日も明後日も。わたしがわたしである以上は変わらないのだから。
でも、もし…もしまだアナタがいるのならわたしにとって大切なアナタがいるのなら…もう一度だけ頑張ろうかな。
ねえ華恋、いるんでしょ?




