1話前編 いつも通りの日常
その出会いは偶然か。必然か。
—その日は、雪が降る1月のことだった。
学校へ登校中家からすぐの公園に着くと、友達の裕夢が先に待っていた。こちらに気づくと近寄ってきた。
「おはよう!」
「ふぁ〜。おはよ〜」
「眠そうだな。」
「昨日は妹のトイレに付き合わされて、あんまり眠れなかったんだよ。」
「え〜と、たしか妹二人居たよな。どっちに起こされたんだ?」
「そりゃ下の方だよ。上の方が起こしてきたらキレるわ笑。」
「流石に一個下の妹が起こすわけないよな笑。」
軽く雑談を終えると裕夢が歩き出したので、同じように歩き出す。
「はぁ…だるくねー。今日からまた学校だぜ。」
「仕方ないだろ?学校てのはそういうもんだと思えば気が楽になるぞ。」
「いやー無理!休み明けのダルさはとてつもないから。」
「それもそうだな笑。しっかし、あと3カ月で俺らも卒業かー。」
「お前はいいなぁ~。3組の吉さんと同じ中学でさー。俺は四月から一人だよ。しくしく。」
「そうか。中学受験したんだっけ?大変だな。」
「そうだよー。あ~あ真がいてくれたら心強かったのに。なんで頭良いのにしなかったんだ?」
「まぁ、ここが良いってのは無かったからかな。」
「あ〜そういうのあんま興味ない感じだもんなお前。」
「そうだな。」
キーンコーンカーンコーン—。
教室にて。
ガヤガヤしていた教室は去年から入ったばかりの美人教師が入るとある程度静かになった。そして先生が入ってきたことで、しゃべっている人がどんどん減っていき自然に静寂に包まれていった。
「起立!気をつけ!礼!」
「「お願いします。」」
日直が呼びかけ、礼をするとみなが先生に注目した。
「皆様明けましておめでとうございます。」
「「おめでとうございます!」」
ここ、雪月花小学校では全校生徒約500人ほどが在籍していた。元々ここは空き地だったのが子供の増加に合わせて20年ほど前から新しく新設された。
「今日から、新学期ですね。冬休みはどのように過ごしましたか?」
「京都に行きました!」
「おばぁちゃんと過ごしました。」
「俺はみかん一つ丸呑みした!」
「何にもしてない!」
など小学生らしい返答が返ってきているのを先生は相槌を打ちながら聞いていた。先生が時計を確認し目線を戻すと
「もうすぐ式の時間ですね。では、廊下に並んでください。」
先生が促し、皆が廊下にでて並び始めた。
体育館での式が終わり、宿題も出し終え軽く話をし終えたら下校時間になった。
廊下からでると裕夢が話しかけてきた。
「真、帰ろうぜ。」
「良いよ。」
「ねぇ、髙井君このあと空いてる?」
あれは、一組の伊倉さんだ、他のクラスの人に話しけるなんて珍しいな。ちなみに話しかけられた当の本人は目が見開いたまま静止している。
「おい、裕夢呼ばれてんぞ!」
両肩を両手でたたいてあげると、正気に戻ったが動揺が隠しきれていなかった。
「え、俺?真じゃなくて?」
「うん。用事があるのは髙井君の方。」
「あ〜んじゃーオレ先帰っとくわ。じゃあな、裕夢あと伊倉さんも。」
「あ、ちょ、…」
伊倉さんは軽く会釈をして、裕夢の方は何か言っているみたいだったが聞こえなかった。
「さぁて帰りますか。」
下駄箱にはまだ何人か残っていた。その光景を眺めながら昇降口をでて、しばらく歩いていると、公園が見えてきた。公園の周りを歩くと見える階段を登って、すぐ左にあるのが自分の家だ。
表札には紅とかかれている。
「ただいまー。」
「お帰りなさい。あら真、珍しいわねあなたが速く帰って来るのは、今日の晩ごはんは何がいい?」
この家では一番速く帰って来た人が母さんの手料理を決めれる。そういったものにはあまり興味が無いがどうやら今日は、みんなより速く帰って来たためその権利は俺にあるということ、どうせなら好きなものを頼もう。
「うーん、今日の気分は竜田揚げかな。」
「分かった、竜田揚げね。そういえば裕夢君はどうしたの?」
「あーあいつはちょっと今日は忙しいらしい。」
「そうなのね、良かったらおすそ分けしようと思ったのに。」
「夜は大丈夫だと思うよ。あいつだけだから忙しいのは。」
「なら良かったわ—。」
リビングでの母さんとの会話を終えると、俺は自分の部屋へと向かった。扉を開けランドセルを置きベッドへダイブする。
「いや~あれは間違いないよな。遂に裕夢にも春が来るのか。しかも相手は一組の伊倉さんか、伊倉さんと裕夢は保育園からの付き合いらしいし、俺にはお似合いだと思うぞ!頑張れ伊倉さん、裕夢なら落とせるはすだ!」
夜
「晩ごはんできたわよ〜」
母さんの声で居眠りから目覚めた。
「あれ?昼ごはん食べてからすぐ寝たんだっけか。」
ドタドタと階段をかけ上がってくる音がだんだんとこちらに来ている気がする。
バタン!!
勢いよく開けられた扉は、ギィギィと悲鳴をあげている。
「にぃに!ごはーん!!」
妹の雫がこちらに勢いよくこちらに乗ってきた。三つしか変わらないというのにこの甘えようだ。とても可愛い。
学校ではこんなに甘えてこないのに家だとこのかわりよう、小学生ながら彼女には逆らえないと思う自分がいる。
「カハッ!!」
「どうした?兄ちゃんが好きかーそうかーよしよし。」
頭を撫でようとすると、顔をあげてきてニコニコしている。
「速くご飯行こ!」
「行こうか。」
階段を降りリビングに行くとすでに家族が揃っていた。手前の左から母さん、奥に上の妹の咲希、咲希の反対には、弟の白空が座っている。
父さんはいない。俺たちが小さい時に事故で死んだそうだ。白空の隣に俺が座り、咲希の隣に雫が座る。雫が一番端にいるのは、俺の近くだとご飯が進まなくなり、いつまでも食べ終わらないことからの配慮らしい。
母 「さぁて全員揃ったから、合掌します。せーの!」
「「いただきます。」」
母 「今日の献立はねお兄ちゃんが決めたの。」
咲希 「なるほど、道理で母さんが少し乗り気だったのですね。」
母 「そんなことないわよ。でもせっかく決めたルールだし、たまには長男にも決めて欲しかったてのは、ないことはないけど…」
白空 「恥ずかしがることないよママ、ほんと兄ちゃんのことは家族みんな好きだね。」
真 「褒めても何も出ないから、母さんのご飯食べよ。ほら見ろよ雫の食べっぷり。」
雫 「速く食べてにぃにとゲームしたいから。」
白空 「ずるいぞ、雫俺が兄ちゃんと遊ぶんだ!」
可愛いなぁー。家の弟妹は、愛想がない咲希はハーフアップにした髪がとても綺麗だ。雫は短髪でなにもセットして無いのがいい、対比するつもりは無いが姉が長髪、妹が短髪と分かれているのを見るとやっぱり、姉妹で好きなものが変わるんだなーと感じられる。弟の白空は、俺よりなんでも出来るからムカつくときもあるけど大好きな弟だ。
小6にしては、キモい発言をしている俺だがこれは俯瞰している俺で当時の俺はそんなこと思ってないからね!
晩ごはんを終え、自分の部屋にて過ごすものもいれば、リビングで雑談をするものもいるなか俺は塾へと向かっていた。その時だった。
あの出会いは—。