ミッドナイトランナー OPstory
私……雪谷琴葉は、お母さんとお父さんに会ったことがない。
私をここまで育ててくれたのは、私と血の繫がってないとある夫婦だ。
それを私が知ったのは、桜宮学園中学に合格したあとすぐのことである。
でも……なんとなく心のどこかでそんなことを思っていた。
私と私を育ててくれた夫婦は、元から似ても似つかない顔立ちをしている。
性格とかは一緒に暮らしているうちに、似たのかもしれない。
だからそのことを聞いたとき、私は逆にスッキリした。
もう、「違う」理由に悩まなくていいんだから。
私の家は学校から通える距離になかったので、中学入学後、すぐに寮に入った。
そしてしばらくの間、ずっと一人で悩んでた。
悩まなくて良くなったのに、悩むなんて不思議だね。
私もそれは変だと思うんだ。
だから私は、私の本当のお母さんとお父さんを探すことにしたの。
〜〜〜
――なあ、「ランプ」っていうチームって知ってる?
――ああ、ゲーム作ってるところだろ?
――へえ、そんなのあるのか。
――どんなゲーム作ってるんだ?
――なんか、すごいゲーム作ってる。
――はっ?
――いや、考えさせられたり、とにかく気持ちが動くっていうか、動かされるっていうか……。
――どこで、プレイできる?
――それな? 「ランプ」で検索かけてもでてこないし。
――「ミッドナイトランナー」で検索かければでてくるよ。
――何それ?
――グループの本当の名前。ランプのマークが特徴的なんだ。
琴葉は、オンラインミーティングアプリの通話機能をオンにした。
「ましろ、ちょっと追加したいシステムがあるんだけどいい?」
「うん、いいよ」
琴葉は完成したストーリーデータと、依頼する仕事内容のメモを『北本ましろ』と書かれたチャットに送信した。
「琴葉、UI作り終わったよ?」
「わかった。今見るからアップしてくれる?」
星宮楓は、完成したUIのデータを『ランプ』のグループチャットにあげた。
楓があげたキャラクターイラストは、ダークな世界観にマッチしているだけでなく、ひと目見て可愛いと言えるようなものだった。
「すごい! 楓のイラストめっちゃ可愛い!」
音楽担当の鈴鹿結は、楓のイラストに素直な感想を伝えた。
「結の音楽も素敵だと思うよ?」
楓は、結を褒め返した。
「いやー、それほどでもー?」
結は軽く笑い流した。
琴葉は、モニターの端に表示されている時計をチラリと見た。
「……あと一時間したら、今日の報告会をやろうか」
琴葉はそう言って、ボイスチャットをオフにした。
〜〜〜
雪谷琴葉、北本ましろ、星宮楓、鈴鹿結の四人は、インディーゲームを作っている。
彼女達は普通だけどどこか歪で、歪だけどどこか普通の存在である。
どこかで、ガラスが割れたような音がした。