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【完結】星の海、月の船  作者: BIRD
第8章:アルビレオの日常

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第76話:艦内プレイルーム

アルビレオの航行はAIに任せているので、乗組員は艦内をウォーキングしながら異常が無いか見回ったり、農作業や調理を手伝ったり、惑星に降りて狩りや買い物をしたりする以外は、ほとんど暇だ。

運動不足にならないように作られたプレイルームは、大人用と子供用でかなり雰囲気が違う。

大人用エリアは地球文明のフィットネスマシンだけで色彩は黒色メインなのに対し、子供用エリアは様々な文明の遊具があって色鮮やかで、見ていて楽しい。

子供たちは何でも遊びに取り入れるようで、たまに本来の目的と違う物がオモチャになったりするよ。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




「このフサフサが、おいらを野生化させるんだ……ニャッ!」


長さ30cmほどのそれを、夢中で追いかけるマヤ。

アニムスが振るそれは、巨大猫じゃらし……ではなく、本来は【はたき】代わりにつかうモフモフした道具である。

マヤたち猫耳のフェレス族の本能を刺激する形状だったらしく、掃除用具改めオモチャとして新品が提供された。


『マヤ、ミカルドキャットと同じだね』


巨大猫じゃらしもどきを絶妙な動作で振りながら、アニムスが笑って精神感応(テレパシー)を送る。

メンタル的な理由で今も声を出して喋れないアニムスだが、笑い声は出るようになった。


(あの子たち、本当なら今も生きていたのに……)


ミカルドキャットという単語を使ってしまってから、自らが死なせたペットたちを思い出してしまうアニムスは、まだ心の底に哀しみを抱えている。

サイキックの暴走で消滅させてしまった村の自宅には、彼が可愛がっていた2匹のミカルドキャットもいた。


「どうした?」


問いかける声と共に、アニムスはマヤに抱き締められた。


「なんで泣くのか分かんないけど、おいらは傍にいるぞ」


マヤはアニムスを抱き締めながら、その耳元でそっと囁く。

アニムスの過去を、マヤは知らない。

けれど、共に暮らす家族として、マヤはアニムスが泣いたら抱き締めるようにしていた。


「僕もいるよ」

「みんな傍にいるよ」


近くでカードゲームをしていたカールとチアルムも加わり、3人がかりでアニムスを抱き締める。

この2人は、アニムスが故郷を滅ぼしてしまった事は知らされていないけれど、アニムスが持つサイキックの事は知っていた。

あの日、カールとチアルムが助けに来てくれたから、アニムスは今ここにいる。

救出されたアニムスの養父母となったトオヤとアイオは、全てを知った上で手を差し伸べてくれた。


『ありがとう』


兄弟となった子供たちの抱擁を嬉しく思ったアニムスは、微笑みと共に【声】を送った。

それから、床に置いていた巨大猫じゃらしを手に取り、再び楽しそうに振り始める。


「あ~、また野生化してしまう……ニャッ!」


再び釣られてしまうマヤを、カールとチアルムが笑いながら眺めていた。

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