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【完結】星の海、月の船  作者: BIRD
第8章:アルビレオの日常

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第74話:艦内調理場

太陽系を出た時は1つだった調理場。

今では作業に合わせて複数の区画に分けられていて、まるで大手ホテルのようだよ。

元からあった調理場はメインの肉や魚を焼いたり、パスタを茹でたりする加熱調理場に変わった。

最初に区画を分けられたのはスイーツとパンを作る調理場で、これはアイオの趣味によるもの。

スイーツとパンの調理場はオーブンがある部屋と、材料や完成品を保管する冷蔵室と、盛り付けをする部屋に分けられていて、それぞれに合わせた室温が保たれるという、アイオのこだわりが感じられる作業エリアになっているよ。

3つ目の区画はコールド調理場、サラダなどの冷製調理をする場所。

このエリアの気温は、5℃くらいの低温に保たれている。

4つ目が肉や魚の保存とカッティングをする場所。

狩りで得た獲物を現地で血抜き・解体した後は、料理に使える部位だけがここへ運び込まれる。

ここは0℃くらいに気温が保たれていて、艦内で一番寒い部屋。

区画ごとに求められる気温を保つのは、気密性が高い宇宙船には得意分野かもしれないね。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




「今日はミカルド鹿肉のハンバーグですよ」


アイオの言葉を聞いて、今夜の夕食を楽しみにしながら、肉の扱いが得意なミイが大型のミートミル機を使って肉を挽いている。

彼女の担当は、肉や魚のカッティング。

精肉・鮮魚の取り扱いでは艦内トップクラスの技術を得たミイは、調理担当メンバーから【お肉屋さん】【魚屋さん】などと呼ばれるようになった。

今挽いているのは、ミイの里親のティオとレシカがミカルド星で狩った鹿系生物の肉。

冷凍庫の中には、双子の兄ニイがフラテル星で仕留めた獲物もある。

ミイは射撃よりも解体の方が得意で、狩りでは家族が仕留めた獲物の解体を担当していた。

可愛い猫耳少女が肉切り包丁を手に、平然と血抜きや解体をする様子は、少々怖い感じではあるが……。



一方、ソースやタレ作りが得意なニアは、コールド調理場でハンバーグ用のソースを作っている。


「サラダの野菜、ここに置いていい?」

「うん、ありがとう」


農園エリアから採れたて新鮮な野菜を届けに来たニイが声をかけると、ニアは微笑んで答えて、サラダの下準備も始めた。

野菜洗いからカッティングまで全自動の調理機は、地球文明データを元にアイオがアレンジを加えたもの。

大人数のサラダ作りに欠かせない便利道具で、毎日使う人が清掃や手入れをして清潔が保たれていた。



「今日のデザートは、シトラス系のシャーベットを作りましょう」

「はぁい!」


スイーツ専用調理場、冷蔵室で楽しそうに作業をするのはアイオとナオ。

見た目は少年と少女の2人が作り出すスイーツは、プロのパティシエ並の仕上がり。

アイオの製菓技術が素晴らしい上に、ナオのセンスが加えられて、デザートが芸術になっている。


「間違いなく美味しいけど、芸術的過ぎて食べるのが勿体ない~!」


と、呟く乗組員の女性陣多数。

氷菓子は、溶ける前に食べましょう。


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