熱波と花火と星空と 7/7
「以上が、今回の報告になります」
グリマルディ基地、第五四戦区兼第六三重砲兵連隊の司令官室。そこで、司令官の少女は、一人の空軍大尉から報告を受けていた。
数枚の人事書類と、明らかに盗撮と分かる添付写真の義勇戦隊員を見やって。再び、少女は目の前の空軍大尉へと視線を向ける。
「……うん、これで大丈夫よ。下がっていいわ。……ありがとね、チャールストン大尉」
「いえ。礼には及びませんよ、シンフォード中佐」
では、と一礼してから大尉が去るのを見送って、イヴは無気力に机に突っ伏す。
はぁと、一枚の書類を見ながら深くため息をついた。
……エレナから聞いて、まさかとは思ったけど。
懐にずっとしまっておいた一枚の写真を取り出して、ふ、と蒼玉の双眸を細めさせた。
まだ幼い頃のイヴと、今はもう居ない父の映った、半分だけの写真だ。元々あったもう片方は紅黒種の母と、イヴとは違い両方の血が顕現した二歳歳下の妹が映っていたもの。
八年前、妹の小学校の入学式の際に撮った写真。
二人とも、四年前の異種職付法の改正によって戦地へと動員されて、二度と逢うことはできないと思って。その時に破り捨てた。
八年前のその日もイヴは学校で、いつものように登校していた。けれど、学校には天青種の友達しか居なくて。何か嫌な予感がして、イヴは学校を途中で飛び出して家に帰ったのだ。だけど、遅かった。
既に二人は家には居なくて。残されていたのは、二人の住んでいた痕跡と、抵抗した跡だけだった。
父を開戦時の戦闘で失っていたイヴは、この時に天涯孤独の身となってしまって。孤児院に引き取られた。
もう、二度と逢うことはないと。その名を聞くことも、呼ぶこともないと思っていた。大切な、けれど四年前に棄てた妹の名を、イヴはぽつりと呟く。
「……シャノン。生きてたのね」




