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戦場のワルツ  作者: 暁天花
Ep.Ⅰ
22/54

    熱波と花火と星空と 7/7

「以上が、今回の報告になります」


 グリマルディ基地、第五四戦区兼第六三重砲兵連隊の司令官室。そこで、司令官の少女は、一人の空軍大尉から報告を受けていた。


 数枚の人事書類と、明らかに盗撮と分かる添付写真の義勇戦隊員を見やって。再び、少女は目の前の空軍大尉へと視線を向ける。


「……うん、これで大丈夫よ。下がっていいわ。……ありがとね、チャールストン大尉」

「いえ。礼には及びませんよ、シンフォード()()


 では、と一礼してから大尉が去るのを見送って、イヴは無気力に机に突っ伏す。

 はぁと、一枚の書類を見ながら深くため息をついた。


 ……エレナから聞いて、まさかとは思ったけど。


 懐にずっとしまっておいた一枚の写真を取り出して、ふ、と蒼玉(サファイア)の双眸を細めさせた。

 まだ幼い頃のイヴと、今はもう居ない父の映った、半分だけの写真だ。元々あったもう片方は紅黒種(ルペリア)の母と、イヴとは違い両方の血が顕現した二歳歳下の妹が映っていたもの。


 八年前、妹の小学校の入学式の際に撮った写真。

 二人とも、四年前の異種職付法の改正によって戦地へと動員されて、二度と逢うことはできないと思って。その時に破り捨てた。


 八年前のその日もイヴは学校で、いつものように登校していた。けれど、学校には天青種(セレリア)の友達しか居なくて。何か嫌な予感がして、イヴは学校を途中で飛び出して家に帰ったのだ。だけど、遅かった。

 既に二人は家には居なくて。残されていたのは、二人の住んでいた痕跡と、抵抗した跡だけだった。


 父を開戦時の戦闘で失っていたイヴは、この時に天涯孤独の身となってしまって。孤児院に引き取られた。


 もう、二度と逢うことはないと。その名を聞くことも、呼ぶこともないと思っていた。大切な、けれど四年前に棄てた妹の名を、イヴはぽつりと呟く。



「……シャノン。生きてたのね」

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