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彼女  作者: 根上真気
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一話 出会い

 10年以上前に書き上げ、己の恥部だと思いお蔵入りにしていた小品(短編小説)の数々を、思うところあって投稿しようシリーズ(自分で勝手にやっているだけ...)第一弾。

 おそらく、当時、恋愛をテーマにしたものはこれだけだったと記憶しています。

 ハッキリ言ってウェブ小説には合わないと思いますが、よろしければご覧になっていただければ幸いです。


 あと、念のため......こちらすべてフィクションです。

 いわゆる独白形式の私小説です。

 エッセイではないので、くれぐれもお間違いないように存じます。

 

 というわけで、長々と失礼しました。

 読んでいただいた方に、ほんの少しでも何かが伝われば、作者として幸甚の極みです。

 僕と彼女の出会いは五年前のバイト先だった。

 彼女の方が後から入ってきて且つ僕の方が年上だったので、本当に親しくなるまでの僕と彼女の関係性は、友達というよりバイト先の先輩後輩という感じだった。


 彼女は礼儀正しく、よく笑う、とても話しやすい良い子で、彼女と一緒のシフトに入る時の僕は普段よりも仕事がやりやすいだけでなく、いつも穏やかな楽しい気分でバイトに臨めた。

 ただ、他の人間は全く気づいていないようだったが、僕はよく笑う彼女の気遣いに溢れた謙虚な言葉とそのパッチリした大きな瞳の奥に、どこか寂しげな哀しみを感じていた。


 やがて僕と彼女は仲良くなり、二人で遊びに行くようにもなると、僕が彼女から感じ取った哀しみが本物だという事がわかった。

 表向きの彼女は、いつも明るく元気で笑顔溢れる可憐な女の子だったが、本当の彼女は、心に暗い影を落とした、内気で傷付きやすいとても弱い子だった。

 そんな悲しい道化の服に身を包んだ彼女の隠された哀しみを感じ取った僕を彼女は信用し信頼し、そして安心してくれたんだろう。いつしか彼女は僕に心を開いてくれた。それがわかった時には僕も彼女に心を開いていた。

 ほどなくして僕は彼女に告白し、二人は付き合う事になった。


 彼女は僕に対し、夏になっても半袖になれない秘密の傷に強い引け目を感じていた。

 しかし、僕にとっては彼女のその腕に刻んだ心の傷も、むしろ彼女をより愛おしい存在とする材料だった。

 僕は彼女自身が忌み嫌う彼女の陰鬱を愛した。放っておけない、そうも思った。


 付き合いたての頃の二人は、恥ずかしいぐらいにバカみたいに、とにかく会う度にイチャイチャしていたが、付き合ってからしばらく経つと、彼女はよく「何でわたしの事好きなの?」と僕に質問してきた。

 彼女は確かに僕を信用し信頼し特別な存在に思ってくれていた(だからこそ彼氏になれたのだが)。

 しかし、それでも彼女は晴れない梅雨の空の雲のような不安を常に抱えていて、度々悲しい質問を僕に投げ掛け、またそんな事を言ってしまう自分自身を嫌悪し、抜けられない悲しみと不安と自己嫌悪の輪でもがき苦しんでいた。僕はそんな彼女を何度も抱きしめた。


 とはいえ、たとえ悲しい質問でも口に出してくれるときはまだ良かった。

 彼女は自らの不安や不満や悲しみを飲み込み溜め込んだ挙げ句、勝手に自己完結してしまう悲劇的な習性を持っていた。

 僕は何度も、無理させないように慎重に、諭すように彼女の口から、彼女の中に溜め込まれた不安を取り出してあげようとした。

 それでも彼女はいつも少ない言葉でしか語れず、うなだれ、そして「あたし、重いよね?」と言って淋しくはにかんだ。僕はその度に「そんな事ないよ」と言って、そっと彼女の髪を撫でてキスした。


 彼女は自分がこうなってしまった大きな原因は過去にあると言った。過去がトラウマとなり今でも自分を縛り苦しめ続けていると。

 いつだったか彼女は、時折その大きな瞳から悲しみが溢れ出しそうになりながら、自身の過去を僕に語ってくれた。

 当作品をお読みいただきまして誠にありがとうございます。

 いいねなどいただけますと大変励みになります。

 気に入っていただけましたら、今後とも引き続きお付き合いくだされば幸いです。

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