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Rusty Rail  作者: 雪村悠佳
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「もしもーし」

 頭上から女の子の声がする。うーん。眠い。

「なかなか起きないね……」

 閉じた瞼の向こうで、さらに別の女の子の声が重なる。

「こんなところで寝てたら風邪ひいちゃうよ。シオリ、どうする?」

「夏だからそれは大丈夫じゃない?」

「ほら、こういう時なら水掛けてみるとか」

「ユキナ、それの方が却って風邪ひかない?」

「うーん……だったら熱湯とか」

「3分待つの? 時計あったかな……」

「乾燥してないからもっと早く行けるかも。熱いお茶とかどこかになかったかな?」

「ヤケドするわっ」

 思わず飛び起きた。

「……あ、起きた」

「起きた、じゃないって……あれ?」

 違和感を覚えて、きょろきょろ、と辺りを見回す。


 空はさっきと変わることなく、抜けるような深く青い空。

 みーんみんみんと鳴く蝉の声。

 だけど、自分が寝そべっていたホームからは、雑草はほとんど無くなっていて。

 倒れそうだった柵は、ちゃんとまっすぐ立っていて。

 目の前には二人の女の子がいた。僕の顔を覗き込んでいるのは、少し背が高くて髪の毛の長めの女の子。横に立っているのは小柄でちょっときつめの眼差しの女の子。だけど、女の子のことより、僕はその背後のことに注意が向いていた。

 ……そこには、電車が止まっていた。

 くすんだような赤色に、多分最初は白かったであろう灰色がかった帯。長く使われてきて色が褪せたんだろう。やや小さめの窓の上下には、ボルトみたいなものがむき出しになっている。いまどきあまり見たことのないような古い電車。

「それよりお兄さん、電車出ちゃうよ?」

「え、でも、幌倉鉄道って廃線になったはずじゃ」

「廃線? 何言ってるのよ、そもそも目の前に電車が来てるでしょ?」

「でも、さっきまで線路も草ぼうぼうで、駅も雑草だらけで」

「線路も駅も少し草生してるのは否定しないけど、普通にちゃんと走ってるよ。……それより、電車出ちゃうよ」

 訳が解らないまま、取り敢えず目の前の電車に乗る。

 がらがらがら、と古い引き戸みたいな音がして、扉が閉じた。

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