アイディアは浮かぶものの文章が書けない少年の話
最近というよりこの5・6年、アイディアは浮かぶものの文章が書けません。リハビリがてら書きました。
「……ねぇ、さっきからどうしたの?」
「見てたのですか?」
「そうね、さっきからなにかスマホに打ち込んでは、頭を掻き毟ってスマホを連続で叩いている姿は見ていたわ」
「それは・・・・・・みっともない姿を見られてしまいました」
「別にこの部室に私とあなたしかいないから、別にいいけど。何か悩みがあるなら相談にのるよ?」
「うーんと、あんまり言いたくないんですけど」
「意地ははらなくてさ。本当に言いたくないなら、言わなくていいけど。喋ってしまったほうが楽なときって結構あると思うよ?」
「……じゃあ、聞いてもらっていいですか?
実はさ、最近全然書けないんです」
「書けないって・・・・・・ジャンルは? 部誌に書いてくれているのはもっぱらファンタジーだけど」
「なんでも。今までファンタジーを書いてて、流行に乗っかろうとして異世界転生モノを書こうとしてなんか筆が乗らなくて。流行に乗るのはダメかなと思って、普通の冒険活劇を書こうとしてやっぱりダメで」
「ファンタジー系だけ? 他のジャンルは試した?」
「とりあえず、一通りは。推理モノや、SF、ホラー系も書こうとしました。それでも少し書いたらなんか文章の先が続かなくて」
「ネタとか構想とかは?」
「ちゃんと文庫本1冊ぐらいのネタは作っていて、プロットも書いてはいるんですけど」
「ちょっとネタ帳を見せて」
「あ、はい」
「ふーん、結構字がきれいなのね。ふむふむ、ぎっしり書いているじゃない」
「えぇ、まぁ」
「これで書けないの?」
「そうなんですよね、2・3行までは書けるんですけど、なんか違うような気がして」
「せっかくアイディアは出ているのにね。勿体ないねぇ」
「・・・・・・先輩は、そういうスランプ的なものはないんですか?」
「あーら、女の秘密を覗いちゃうの?」
「い、いや、そういうつもりじゃ」
「いいのいいの、私はね、そういうのはないかなーって。思ったままを文章に起こして、それで終わり」
「うらやましいですね。そういうの」
「君も前はそうだったんじゃないの?」
「前はそうだったんですけど、今はちょっとそういうわけじゃなくなったというか」
「理由とか、思い当たる?」
「・・・・・・」
「あれ、そこで黙っちゃう」
「ちょっと、言いづらいですね」
「言ってみて、言ってみて」
「い、いやちょっとこれは違うかなーって」
「むむ、なんか隠している。ダメだぞーそいうの」
「ちょっと先輩には言いづらいというかなんというか。あ、ちょっと引っ張んないでください」
「ねぇ、教えてよっと。あれ、このページ」
「あ」
「・・・・・・『夕暮れの教室。そこに佇む女性の姿は美しかった。そこに特別な何かがあるわけではない。今まで見知っている姿だというのに、何かが僕の心を掴んだまま離さなかった』」
「・・・・・・」
「これ、ポエム?」
「あ、いや。・・・・・・違うんです」
「・・・・・・、ふーん、そう」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あ、あの。先輩」
「後輩君、せっかくだからさ、君のその悩みって奴、もう少し詳しく聞かせてよ。場所を変えて、さ」
こんな経験、1ミリもないです。しょっぱい