表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アダプるエヴォる  作者: ユニマル
17/17

会議


 広い空間に見たこともない大きさの机、そこに等間隔に置かれた椅子


「・・・」


「このようにマクカパはおなじ哺乳類とは異なる魔力回路を持っていると思われる。」

「ふむ、確かに興味深い」

「そうなればやつの回路は収束進化によってできた物と考えるのが無難かもしれませんな。」


「・・・」


「そういえば知っていますかな?デルト教授、異世界人はゴブリンやらオークやらは人と子をなせると思っているのだとか」

「ほっほ、本当ですかなバーキン博士、通常生殖能力のある子孫が産める者同士が同種というもの。異世界人の科学的な技術はかなり進んでいる半面生物的な学問は疎かになっているやも知れませんな。」


「・・・」


「ふむ、しかしそれだと異世界でのそう言った類のものは別の生物なのだろうか?」

「いやいや、話を聞く限りそう言った事でもなさそうなのじゃよ」


「・・・」


「今だにあの村に出没した魔物の姿が確認できないな・・・」

「あの個体は何だったんでしょうね」


 思い思いにそれぞれの報告が上がってゆくなかどう考えてもここにいる事が場違いに思える。

 俺なんか魔膜に入ってた紙の束を係の人に渡して終わってしまった。

 クラーケンについての報告って聞いていたが書類だけでよかっただろうに。


「あの、紅茶のお替りいただけます?」


 右には何食わぬ顔で紅茶のお替りをたのむリリィ、さっきからお茶請けと一緒に飲み続けている。お茶請けと言ってもサンドイッチとか食事レベルのものもある。

 この子の胃袋はどうなっているのだ。


「これで黒3つゲットです」

「ぐぬぬ」


 そして左にはオセロの様なもので遊ぶツーレ・クーレ


 そんな彼女らに挟まれた俺はと言うと特にやることもなく配られた資料に目を通すだけ。

 嬉々として議論しあうホワイトカラーに、眉間にしわを寄せるシルバーカラーの話にだって割いる隙もない。


 そんな中でもさらに気になるのは、ルーシュとかいう幼女。彼女もこの会議に同席しているようで報告を真剣な表情で聞いている。

 しかし、時折目線をこちらに移しちらちらと様子をうかがってくるのだ。


 恐らくその原因は、昨日の事だろう。忘れ物を取りに行こうとしたら、辺りが緊急っぽく点滅するわ応接間に戻ったら部屋が破壊されてるわ大変だった。

 何やら呼び止める声も聞こえたが、あまり関わりたくなく魔膜を貰うといそいそと出ていってしまった事もあって正直目を合わせづらい。


「さてはお主があの大量の虫を討伐した若造じゃな?」


 何とも言えぬ居心地の悪さを感じていると、声がかかった。長い白髪と長い白髭のおじいさんが話しかけてきた。大量の虫とはあの森林の色を変えていた奴の事だろうか。


「はい、ゼノといいいます。」

「お主のおかげでかなり助かっとるわい。森林の被害を食い止めるだけでなく、素材としての普及も大きいしのう。儂も多少魔道の研究をしておるからの、その恩恵を受けておるんじゃよ。」

「良かったです。」


「うむ、それでのお主さえよければうちに見学に来てほしいのじゃが?どうかね?」


 どうかねと言われて何だか断れない雰囲気。


「お願いできます?」

「ほっほっほ。名刺と紹介状を後で渡すからの!」


 そう言うとご機嫌で去っていく。新参への挨拶みたいなものだろうか。


「ふむ、盗み聞きして申し訳ないがあの虫を倒したのは本当かね?」


 今度は針みたいに髭を尖らせた中年の男性が話しかけてきた。細身の体に金の刺繍が入った濃い青のスーツを着ている。貴族様だろうか。肩は小さなマントがかけられている。よく見るけどこの名前って何て言うんだろうな。


「聞きたいのだが、どれ程の物であった?」

「見た目の衝撃は強かったですが、大きな虫と思えば。持ってる兵でも簡単に狩れたと思いますよ。」


 貴族ならあるだろ騎士団とか。


「そ、そうか伝えておくよ。」


 そう言うとそそくさと席に戻っていった。

 さっきから自由に立ち歩いている人が多いがいいのだろうか。空気から察するにいつも通りみたいだが。


 ずっと待っているせいかおなかが減ってきた。王都には目移りするほどの店があったし何か食べに行こうか。

 いや、リリィもいるし何か料理でも作ろうか新しい料理に興味があるみたいだし俺の知っている物が良いな。そうなると限られてくるが・・・


 ああ、カレーとかいいんじゃないだろうか。あれだけ店があるんだ香辛料の店くらいあるだろう。

 よしカレーにしよう、結構珍しいんじゃないだろうか。

 それにカレーを知らない人間からみたそれを食う姿はどう写るか。

 うわっ、あいつアレ食ってんのか!?

 しかも調子悪いときのじゃん!

 みたいな……絶対面白いことになる。

 かりん糖食いながら犬の散歩するくらい面白いことになる。


「ちょ、ちょっと、何笑ってるのよ……」

「え?あ、ごめん」


 顔に出ていたようだ。


「うふふ、ゼノは挑戦的ですね」

「いいね」


 双子がそれを見て笑みを浮かべる。

 もしかして、思考とか読めるのだろうか。今までの考えが読まれてたり……

 い、いや今は考えないでおこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ